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サステイナブル・デザインの諸相 最終回 日刊建設通信新聞2005年7月21日号

「箱の家」からエコハウスへ:工業部品化によるサステイナブルな住宅の試み

「箱の家」シリーズは僕が1994年から続けている住宅の連作である。シリーズには番号が付けられ、2004年末までに100番が完成し現在も継続している。「箱の家」の第1号は、ある家族のためのローコスト住宅として設計された。その住宅を雑誌に発表したところ、その考え方に賛同し同じような住宅を求める多数のクライアントが現れた。そこで僕は箱の家のヴィジョンを以下に上げる8つのコンセプトにまとめ、「箱の家」シリーズをスタートしたのである。

1) 立体最小限住居。できるだけ空間を小さくし、吹抜けを持つ立体的な住まいをつくる。つまり住空間をコンパクトに立体化・最小限化する。
2) 内と外に開かれた住まい。住まいを外部つまり街に対して開くことである。住まいを開くことは、家族が地域社会に結びつくことである。
3) 一室空間住居。内部にも開かれた住居であることである。内部の間仕切壁を取り払うことは、家族同士の壁を取り払うということでもある。壁を取り払えば心の壁も取り払えるという意味ではない。逆である。家族同士に心の壁がなければ、壁がなくても話し合って住めるという意味である。
4) 都市の自然。都市の自然を最大限に取り入れることである。太陽熱や光や風をできるだけ建物の中に取り込み、それを生かそうという提案である。
5) 構法の標準化。これは建築の作り方を単純化しコストを安くすることである。「箱の家」では材料、構造、構法、設備といった建築要素をできるだけ標準化し、工業生産化することによって必要最小限の性能を確保している。これはコストコントロールに必須の条件である。
6) 持続する材料。サステイナブルな材料を選ぶことである。できるだけ長持ちし、メンテナンスも最小限で済むような仕上げにする。「箱の家」では余計な仕上は行わず、生地のままで仕上るような材料を使うようにしている。
7) コストパフォーマンスの追求。同じ費用であれば、できるだけ性能のよい材料、構法、設備を選ぶことである。この基準によって「箱の家」で使う材料や構法は2、3種類に限定されている。
8) 都市住居のプロトタイプ。以上のコンセプトを統合して、サステイナブルな都市住居のプロトタイプをめざすということである。

連作だからといって「箱の家」は標準的な設計をくり返してきたわけではない。シリーズは番号が進むにつれて、技術やコストパフォーマンスは少しずつ改良されてきた。新しく開発された材料や構法を導入することによって性能は少しずつ向上し、外観や内観も変わっている。住まいに対するクライアントの要求や敷地条件はすべて異なるから、そこからのフィードバックによって当初の「箱の家」の考え方は少しずつ変化している。「箱の家」の基本的な考え方は変わっていないが、性能や表現が初期に比べると大きく変化していることも確かである。こうして「箱の家」はサステイナブルな住宅「エコハウス」へと進化してきた。
「箱の家」のコンセプトは社会的にも認められ、『ブルータス』誌による建築家への住宅の設計を媒介する「約束建築」の企画に選ばれた。さらに「無印良品」の住宅版「MUJI+INFILL木の家」として商品化されることにもなった。
「箱の家」シリーズのこれからの方向は、住まいを構成する要素を、設備を含めて可能な限り工業部品化し、戸建て住宅だけでなく、集合住宅にも適用可能な、サステイナブルなシステムへと進化させることをめざしている。

写真説明:「箱の家100」 設計:(株)難波和彦・界工作舎  写真:坂口裕康
無印住宅「MUJI+INFILL木の家」のプロトタイプとして設計された。

 

 

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