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箱の家 PROJECT 青本往来記
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コンパクト箱の家

2020年06月05日(金)

晴れで暑い一日。8時半出社。九州大学の岩元真明さんから博士論文『カンボジアの建築家ヴァン・モリヴァン(1926-2017)に関する建築史的研究:国家揺籃期における建築家の課題』が届く。昨年、東大建築学科で審査をパスした博士論文である。直ちにfacebookでお礼のメッセージを送るとまもなく返事が届き、論文の構成は〈建築の4層構造〉にもとづいているという。目次を確認してみると確かに章立てはそうなっているが第3層に当たる章が抜けているように見える。岩元さんに確認するとモリヴァンの建築をビルディングタイプによって分析するは難しいので彼の人脈の分析に替えたという回答が届く。14時前に戸田が「164 U邸」の現場監理から帰社したので報告を受ける。外装工事は依然として停滞中だが内装工事のシナ合板張がかなり進行している。直ちにU夫妻に現場監理報告のメールを送る。木村が「166 K邸」の減額変更案と概算見積をまとめたのでコメントを加えてKさんに送る。何とか予算に近い工事金額に届きそうなところまで行きそうだがUさんがどう判断するかである。『人類学とは何か』(ティム・インゴルド:著 奥野克巳+宮崎幸子:訳 亜紀書房 2020)を読み終わる。インゴルドは僕と同世代で1960年代末から今日までの人類学史を自分の経験に引き寄せてまとめた内容である。自然と文化、類似と差異、普遍と個別、遺伝と学習といった二元論を拒否し両者を一体化して人間を〈生物社会学的存在bio-social-being〉として関係論的に捉えるべきだという主張であり『建築雑誌』8月号の連載テーマ「個別解と一般解」に大いに参考になりそうである。引き続きAmazon古書から届いた『伝記ジェームズ・ギブソン---知覚理論の革命』(エドワード・リード:著 佐々木正人:監訳 勁草書房 2006)を読み始める。リードの著作は『アフォーダンスの心理学---生態心理学への道』(エドワード・S・リード:著 細田直哉:訳 佐々木正人:監修 新曜社 2000)、『経験のための戦い―-情報の生態学から社会哲学へ』(エドワード・S・リード:著 菅野盾樹:訳 新曜社 2010)、『アフォーダンスの構想---知覚研究の生態心理学的デザイン』(佐々木正人*三島博之:編訳 東京大学出版会 2001)所収の「ダーウィン進化論の哲学」(エドワード・S・リード:著 細田直哉:訳)に続く4冊目である。リードの論文は細部へのこだわりにおいてギンズブルグと同じように僕の趣味に合うようである。


2020年06月04日(木)

曇り後晴れの暑い一日。8時半出社。『建築雑誌』8月号の連載について考え続けるがなかなかテーマを展開できない。YouTubeで「建築家・安藤忠雄「100歳まで頑張る決意【Stay Home】」を観る。3分ほどの短い番組だが安藤はかつて黒川紀章が提唱していた〈共生〉について語っている。しかし同じ〈共生〉という言葉を使っていても二人から受けるニュアンスがまったく異なるので考え込んでしまう。
https://www.youtube.com/watch?v=uun9jwLFuA4&fbclid=IwAR0F7PCHYS6Ocp1koa1kpLWTfd5g7_eYJZTSvF3TDGLOWMzqlIlzk98GnkQ
隈研吾もYouTubeで「新型コロナ禍」が建築・都市に対して与える影響について述べている。ここでも安藤と隈の発想の違いに驚かされる。決定的な相違は、安藤が「コロナ禍」をあくまで自分の問題に引き寄せて発言し共感を求めようとしているのに対し、隈は建築と都市の転換について一般論の形で自分の見解を述べていることである。建築家として対照的なスタンスだといってよい。もちろん隈の方が建築家らしい社会的発言だし発言の内容も批評的といってよいが、少々上から目線である点に引っかかる。
https://www.youtube.com/watch?v=qcM1IEcWS_o
先日の『建築雑誌』の「新型コロナ禍」に関するzoom会議でも、僕を含めてほとんどの編集委員はどちらかといえば一般論的に捉えようとしていた。大学教員が多いので個人的見解を一般化することに慣れているというか無意識的にそうすべきだと考えているのである。しかし安藤のような発想の方が明らかに地についているし社会的にも説得力がある。午後に『建築雑誌』6月号が届いたのでfacebookで紹介する。
http://jabs.aij.or.jp/
18時から『建築雑誌』の編集幹事会のzoom会議。高口洋人編集長、長澤夏子、加藤耕一、増田幸宏、能作文徳と僕の6人全員が参加。今年末から来年末にかけての特集テーマについて議論する。おおよその見通しがついたので、僕から8月号の特集「2050年 気候変動を超えて」での原子力発電の位置づけについて編集長に質問する。案の定、歯切れの悪い回答が返ってくる。僕は決して原発推進派ではなくどちらかといえば反対派なのだが、CO2問題について議論する場合に最初から原発を議論の対象から外してしまうのではなく、否定的な結論を出すにしても、少なくとも議論の俎上には載せるべきだと考える旨を伝える。『人類学とは何か』の第3章「ある分断された学」と第4章「社会的なるものを再考する」を読み終えて第5章「未来に向けた人類学」に進む。


2020年06月03日(水)

晴れ時々曇りの蒸し暑い一日。8時半出社。昨夜遅く戸田がdropboxに入れた「167 K邸」の展開図と電気図をプリントアウトしてチェックする。何点か修正と追加を加えて戸田に手渡し修正を指示する。午後に展開図が一通りまとまったので、詳細図、展開図、設備図の一式にコメントを加えてN夫妻に送信する。引き続き建具表と外壁詳細図に着手し来週半までにまとめてN夫妻に送りフィードバックして今月下旬には工務店に見積を依頼する予定である。Kさんから「166 K邸」に関するコメントメールが届く。小川建設からの査定回答にもとづいてコストダウンのための大幅な設計変更を提案したが、当初の基本設計から変わり過ぎであるという不満のメールである。基本設計の夢が失われてしまうように感じたらしい。工事予算が厳しい場合に時折受けるクレームだが、僕たちとしては「箱の家」のコンセプトだけは死守したギリギリの提案のつもりなので何とか受け入れてもらえることを期待するしかない。木村には現在の方針にもとづいてコストダウンの概算をまとめるように指示する。17時から『建築雑誌』2021年1月号予定の「新型コロナ禍」特集に関するzoom会議。加藤耕一さんの司会で5−6人の編集委員が参加。僕は1月号の特集〈レジリエント建築社会の到来〉の連載に書いた〈非日常性を日常化する〉に注意を喚起した上で、透明な建材の普及とコーリン・ロウの〈透明性〉概念の関係、近代建築運動とミシェル・フーコーの〈生政治〉論との関係などについてかいつまんで話す。他の人は建築教育の変化やオフィス空間の変貌について議論している。娘一家が久しぶりに来宅しているので、僕は前半1時間だけ参加し会議の途中で退席する。夜は『人類学とは何か』の第1章「他者を真剣に受け取ること」と第2章「類似と差異」を読み終えて第3章「ある分断された学」に進む。第2章のテーマは『建築雑誌』8月号の連載テーマ〈個別解と一般解〉と重なっているので興味深く読む。新しい人類学に関する議論だが、考え方に関する議論が主なので一気に読んでから連載原稿につなげてみよう。


2020年06月02日(火)

曇り後晴れの蒸し暑い一日。9時過ぎに家を出て表参道経由で青山歯科医院へ。今日の表参道は結構人出が多いがApple表参道は緊急事態宣言が解除されても開店していない。9時半から虫歯の治療。先週に型を取った奥歯に銀のカバーを被せて30分余で終了。月末の診療予約を済ませて10時半に帰社。早朝に小川建設から「166 K邸」の界工作舎査定に対する回答が届いたので木村が分かりやすくまとめ直す。さらなるコストダウンが必要なのでその方針をまとめて一緒にKさんに送信する。甲府のNさんから「167 N邸」のLANに関する要求が届く。有線と無線の2通りのLANを使いたいとのこと。通常の家庭では必要ないシステムだがNさんはエンジニアなので家庭でも仕事をするらしい。そういえば界工作舎も同じシステムである。戸田と「167 N邸」の展開図について打ち合わせ。電気図の修正も含めて今日中にはまとまりそうだ。建築学会の「建築討論」に『建築雑誌』5月号特集「社会のマテリアライゼーション---建築の社会的構築力」に関するレヴュー記事「建築と社会の二項対立を超えて」(中島伸:著)が掲載されている。かなり読み込んだ感想で、問題提起にはなったようなので編集担当者としては感慨深い。
https://medium.com/kenchikutouron/建築と社会の二項対立をこえて-d8d1592f457d
『週刊読書人』で『人類学とは何か』(ティム・インゴルド:著 奥野克巳+宮崎幸子:訳 亜紀書房 2020)が取り上げられていたのでAmazonで購入する。これまでインゴルドの本は2冊読んだが、昨年1月に「六角鬼丈さんを偲ぶ会」の会場〈芸大美術館〉で『ライフ・オブ・ラインズ---線の生態人類学』(ティム・インゴルド:著 筧菜奈子+島村行忠+宇佐美達朗:訳 フィルムアート社 2108)を紛失したのでもういいかと思っていた。だから本書は一種のリベンジ読書である。


2020年06月01日(月)

小雨のち曇りの肌寒い一日。8時半出社。テレワークは昨日までとし今日から日常勤務に戻るため久しぶりに木村と戸田が出社する。甲府のNさんから「167 N邸」設備図のチェックバックが届いたので回答をまとめて返信し戸田に修正を指示する。先週末からのメールのやり取りで『建築雑誌』の編集幹事会、6月の編集会議、来年1月号「新型コロナ」特集と2月号特集「ローコストの現在」の打ち合わせの日時が決まりすべてzoom会議となる。まだ一堂に会するのは時期尚早という建築学会の判断である。8月号の連載原稿「個別解と一般解」のスケッチを再開する。思いついたキーワードを追加していく。書き出しは何とかなりそうなので今週末までには書き出したい。熊本の保田和豊さんから「163保田邸」の5月末までの温湿度データが届く。4,5月中は天気には関係なく空調機、還流ファンをほとんど稼働せず、天井扇だけで過ごしているようだ。この間アクアレイヤー水温は21度から24度に徐々に上がり始め、室温も25度から28度の間を変動している。しかし床下空間の気温は23−24度でほとんど変動していないので、このままの状況をしばらく続けて、6月に床下気温が変動し始めてから空調機を稼働するようにアドバイスする。「164 U邸の」引き渡しは7月末の予定で昨年に竣工した「163保田邸」とほぼ同じ季節なので「163保田邸」のデータを参考にして、引き渡し前の1週間は空調機を21度設定で稼働することによって基礎コンクリートとアクアレイヤーに蓄冷し室内気温が27―28度に安定したところで空調機を27度設定にする手順で対応してみよう。『エネルギー産業の2050年―-Utility 3.0へのゲームチャレンジ』(竹内純子:編著 日本経済新聞出版社 2017)を読み終わる。第3章「ゲームチェンジ」では脱酸素の有力な手段として電気自動車の普及、CO2フリー水素、微細藻類バイオマスと人工光合成などの技術が紹介されている。3節「原子力に未来はあるか?」で原子力発電の歴史と今後の展望が検討されている。現在、原子力発電が再評価されているアメリカでは小型モデュラー原子炉(SMR Small Modular Reactor)の開発が進んでおり、技術的な可能性は期待できそうである。しかし日本では世論、政治、保安システムなど各種のハードルが高いため見通しは暗い。脱炭素化は当面は太陽光発電のコストダウンと高性能化に期待するしかなさそうである。


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