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箱の家 PROJECT 青本往来記
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コンパクト箱の家

2023年10月02日(月)

晴れ時々曇りの過ごしやすい一日。8時過ぎ出社。直ちに事務所を出て、表参道経由で青山の歯科医院へ。今年2月から7ヶ月ぶりの検診である。それまでは1ヶ月ごとに歯垢除去を繰り返していたが、効果がまったく感じられないので、一旦休止していた。しかし2月検診の時に歯科医に指摘された通り、9月頃から右の下奥歯の調子が悪くなったので、意を決して診察を受けることにした。事情を話すと、直ちに麻酔をしてあっという間に抜歯されたので、手際の良さに感心する。年末前に一度様子を見ましょうと言われ、9時半に終了10時前に帰社。奈良女子大教授の建築家 Nさんからメールが届き、ル・コルビュジエ・アーカイブ全32巻と作品リストを引き受けてくれることになる。早速、段ボールに詰め始めるが、2箱には入り切らないので、amazonに追加の段ボール箱を注文する。ともかく気がかりな課題が一つ解決しそうなので胸を撫で下ろす。盈進学園の理事長代理である山尾聖子さんからfacebookでメッセージが届く。プリズミックギャラリーで開催中の〈川島範久展〉を見に来たという報告に加えて、〈盈進学園東野高校 1985〉の30分のビデオ『Eishin Higashino 1985』のURLを教えてくれる。山尾さんの監修で昨年に制作したそうだ。早速、通しで鑑賞する。入間の茶畑の敷地に旗竿を打ち込む作業から始まり、キャンパスが完成し開校するまでの経過がコンパクトにまとめられている。現場監督は〈環境構造センター〉のハイヨ・ナイスさんと東野高校の教員たちである。設計監理に携わった若き日(40歳後半)のクリストファー・アレグザンダーの姿も見ることができる貴重な映像である。「パタンランゲージは言葉による設計である」というアレグザンダーの説明も興味深い。ぜひ若い建築家たちに見てもらいたいので、facebookにアップする。
https://www.youtube.com/watch?v=m11ov0cwMrY
『日本の歪み 』(養老 孟司+茂木 健一郎+東 浩紀:著講談社 2023)を読み続ける。明治維新以降の日本近代史に関する議論が続く。三世代の論者の意見の相違が興味深い。僕は茂木の世代だろうか。


2023年10月01日(日)

曇り時々晴れの涼しい一日。10時半出社。昨日の中谷+中井両氏の結婚式を思い出しながら日記をまとめる。どのような結婚式で、どんな人が出席するのか、前もってまったく知らなかったので、出席者の多くが建築史界の大御所だったので驚きも大きかった。このような会に呼ばれるかどうか、出席するかどうかは、建築界における人間関係に微妙な影響を与えることだろう。僕の印象では、こういうメンバーであれば呼ばれて当然と思えるのに出席していない2、3人の人が思い浮かぶ。やや大袈裟かもしれないけれど、これも歴史的な出来事というべきだろう。披露宴のスピーチは、大御所たちの話が冗長で少々辟易としたので、僕のスピーチでは、考えていたことを1/3程度に縮めて話した。帰りは片山さん陣内さんと一緒で、電車の中でゆっくり話せたことが収穫だった。他のメンバーは二次会に行ったようだが、二次会があることも知らなかったのが幸いだった。いずれ集合写真が送られてくるだろうから、その時に出席者をじっくり確認してみよう。16時半過ぎに事務所を出て、歩いて南青山のプリズミック・ギャラリーへ。17時から川島範久展のトークセッションに参加する。今日のスピーカーは九州大の末光弘和さん、京都工繊大の菅健太郎さん、工学院大の富樫英介さんの3人。末光さんのレクチャーは東大卒らしく、地球環境問題と建築デザインの俯瞰的な解説から始めて、自分の設計コンセプトを4つの原理から説明し、サステイナブル・ミニマリズムという美学にまとめるというごく正当な主張。話の内容はクリストファー・アレグザンダーの建築論を連想させるが、建築作品はまったく異なるという不思議な印象である。続く管さんのレクチャーでは、自然環境を建築デザインにいかに採り入れるかというスタンスで協力した建築作品を紹介する環境エンジニアらしい内容である。冨樫さんは、自著の『建築設備今昔』(2023)を紹介しながら、工部大学校に始まる東大建築学科の中で、計画原論から発した環境講座が、いかに疎外されてきたかを、計画原論の創始者・渡辺要(1902-1971)の経歴を通して紹介し、その上で、科学と芸術をscienceとfictionと読み替え、建築デザインはSciFi の一種だが、その良し悪しを判断するのは〈人〉であると主張するユニークな議論を展開する。コメントを求められたので、僕は冨樫さんのSciFi論を、武谷三男の『弁証法の諸問題』における技術の定義を紹介することで間接的に批判する。そして川島さんを含めて、3人のスピーカーに共通するスタンスが、設備機器をできるだけ使わない建築デザインを指向していることに注意を喚起し、サンフランシスコやシドニーのように機構の良い地域の建築は緊張感に欠けるという点を指摘する。3人の議論は、塚本+能作の立場からは〈社会性〉を捨象したテクノロジー偏重と批判されるだろう。おそらく、そのようなスタンスが、1970年(大阪万博)以降に、建築家が設備デザインから疎外されて行った歴史の背景にあったのではないかと僕は考える。議論はまだ続いていたが、19時を過ぎたので、僕は早々に退席する。遅めの夕食を食べながら、21時からNHKスペシャル『老いる日本の“住まい” 〜第1回 空き家 1000万戸の衝撃〜』を観る。観ながら、松村秀一さんと中谷礼仁さんが早稲田大で立ち上げた〈解築学〉を思い出す。次回特集はマンションの空き家の問題である。


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