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箱の家 PROJECT 青本往来記
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コンパクト箱の家

2019年09月17日(火)

久しぶりの晴れで暑い一日。8時半出社。日記を書き込んだ後9時半に事務所を出て銀座線、丸ノ内線で東京駅へ。10時24分発の北陸新幹線に乗り車内で木村と合流。車内は観光客で満員である。皆金沢に向かうようだ。12時32分に富山駅着。今日の富山は曇りで風が強く肌寒いくらいである。改札口で正栄産業の現場監督早助さんと待ち合わせ車で「162酒井邸」の現場へ13時前着。今日と明日はアクアレイヤー工事なので初日の現場監理である。まもなく工事を担当する寺山麦さんと職人2人が昼食から戻ってくる。現場は根太の間にアクアセルを載せる鋼板を落とし込む工事の最中で全体の面積の半分近くまで進んでいる。しかし端部の大引が欠けている箇所、根太の間に木材が挟まってアクアパックを通せない箇所、根太横に床下パイプの吊金物がついている箇所など障害物が何箇所かあるため早助さんに是正を頼む。14時過ぎに是正工事が終わったので工事再開。午前中の下地工事が遅れたためアクアパックの設置を今日中に始めたとしても注水工事を明日中に終えられるかどうかは不確定である。とはいえ寺山さんはエアアクア工事が今回が3度目でこの間にアクアパックの厚さと長さを設定すると必要注水量を自動的に制御する給水器具を職人が開発しているので意外に早く終わる可能性もある。アクアレイヤー工事の監理に並行して外壁下地と屋根板金工事をチェックする。外壁は防水紙の上に横胴縁を留め付けた段階であとはガルバリウム角波板を張る直前である。16時前に現場を発ち富山駅へ。16時15分富山発の新幹線に乗り19時過ぎに帰社。熊本大学工学部から来年度の顧問就任の依頼状が届く。今年初めに田中智之さんから頼まれていたので承諾書に必要事項を書き込み返送する。『建築雑誌』Slackで2月号特集の追加インタビューの日程が決まった旨の報告が掲載されているのでスケジュールを確認し参加できるインタビューを決める。今日開催された5月号特集「木質構法」に関する網野禎昭さんとの話し合いの議事録を小見山陽介さんが掲載しているので目を通す。期待通り水下と水上の関係について突っ込んだ議論が展開されており次回の打ち合わせ日程候補も挙げられているので参加可能な日程を書き込む。何とか参加して話を聞いてみたい。木村が現在使っているiMacの立ち上がりが遅く特に今日は調子が悪いようだ。僕のiMacよりも1年以上新しい機種なのだがそろそろ寿命なかもしれない。新しいiMacを購入するので機種の仕様を整理して僕に送るように指示する。合わせて図面ソフトの更新も必要になりそうだ。22時帰宅。ベッドでiPadで『建築雑誌』Slackを再読しながら夜半就寝。


2019年09月16日(月)

雨のち曇りの蒸し暑い一日。今日は祝日だが9時に出社。午前中は小雨が降り続いているため出かける気がしない。『前川國男論』の書評のスケッチや「箱の家164」の展開図を見ながらあれこれ考えを巡らせる。正午に一旦帰宅し昼食を摂った後雨が止んだ13時過ぎに事務所を出て表参道駅から半蔵門線に乗り半蔵門駅にて下車。歩いて10分余でイタリア文化会館へ。〈アンジェロ・マンジャロッティ展 構築のリアリティ〉を観る。ガランとした会場に来場者は僕1人である。マンジャロッティは工業化・部品化建築のパイオニアで1950年代からPCを組み合わせた建築を作っている。しかしなぜか有名な〈パランザーテの教会(1957)〉は展示されておらず1960年代以降の工場、オフィス、集合住宅が主である。PCの精巧な組立模型とアクソメ図が展示されている。大高正人の〈千葉県文化会館(1967)〉や〈千葉県立中央図書館(1968)〉のお手本になったのはこれらの建築ではないかと推測する。他には家具や什器が展示されている。1種類の小さなガラス部品を組み合わせたガラススクリーンやスタンド照明は標準化と多様性の模範例である。再び半蔵門線で渋谷まで戻り東横線に乗り換えて代官山駅にて下車。代官山ヒルサイドテラスで開催中の〈SDレビュー2019展〉を観る。今年の作品レベルはかなり高い印象だがほとんどが個別的な特殊例で一般性は感じられない。SDレビューがそういう作品を紹介する場のせいだろうか。あるいは現代の建築家の役割がこのような特殊例を提示する役割なのかもしれない。とはいえプログラム、構法と構造、環境制御までを総合的に考え抜いた建築が数点あり感心する。これらの建築は表現としては特殊解であっても方法面では普遍性があるような気がする。1時間余ゆっくりと見て15時半過ぎに会場を出る。その後渋谷経由で東横線から銀座線に乗り換えるが地下2階から地上2階への移動経路はとてつもなく複雑で遠い。銀座線の駅の改築後は改善されるのだろうか。銀座線で外苑前駅にて下車。歩いて5分でプリズミックギャラリーへ。〈新しい幾何学でつくられる小さな生態系としての建築―御手洗龍展〉を観る。御手洗さんは安藤忠雄研の最後の院生で伊東豊雄事務所の出身である。細かく作り込まれた若々しい展示に感心するがプロジェクトによっては急ごしらえの感があり突っ込みどころ満載である。僕一人なのでスタッフが細かく説明してくれる。16時過ぎに会場を出て16時半に帰社。メールチェックし明日の富山行の準備。京都の寺山さんから電話があり明日のアクアレイヤー工事のスケジュールの確認。13時頃に現場に着く予定を伝える。18時前帰宅。『社会学の考え方』を読みながら夜半就寝。ブルデューも紹介されているがハビトゥスに関する記述はない。


2019年09月15日(日)

晴れのち曇りのやや暑い一日。8時半起床。10時出社。昨日U夫妻に送った「箱の家164」の展開図と平面詳細図に目を通す。階段の踏板の割付、鉄骨間柱の位置、FRPスクリーンの取付方法など気になるディテールが幾つかあることに気づく。今後さらに施工図を詰める段階で再検討が必要だがそれ以上にコストアップの要因がかなり増えてきた点が気になる。最終段階では大幅なフィードバックが必要になるかもしれない。正栄産業と「162酒井邸」の電気料金の契約メニューについてメールのやり取り。高井戸の「141小澤邸」の小澤さんから空調機や屋根防水のメンテナンスの依頼メールが届いたので来週中に訪問することにする。「141小澤邸」は下諏訪にある小澤さんの別荘で高井戸の住宅は界工作舎の設計ではないがここ数年の間に何度か自邸のメンテナンスも頼まれてその都度対応している。15時半に事務所を出て渋谷へ。今日は表参道、青山、渋谷一帯は秋祭り一色であちこちで道路が封鎖され雑踏でごった返している。16時10分から文化村シネマで『帰れない二人 Ash is purest white』(ジャー・ジャンクー:監督 2018)を観る。観客は6割の入り。現代中国の変転を2人の男女の20年間の関係の変遷に集約させて描いた2時間半の長編映画である。物語は大同、ウルムチ、武漢という3つの大都市で展開する。『長江哀歌』『罪の手ざわり』『山河ノスタルジア』といったこれまでのジャンクー作品の集大成のような映画で、ビルがロケットのように打ち上げられたり走る自転車のそばに小型飛行機が墜落したり会話しているカップルが急に踊り始めたりなど荒唐無稽なシナリオはジャンクー監督の常套手段だが、この映画でもやくざ映画が突然ロードムービーに変わったかと思うといきなりUFOが出てきたりして度肝を抜かれる。映画は監視カメラの粗い映像で突然終わり観客は宙ぶらりんのまま放り出される。それにしてもいつもながら精巧な映像と音楽には感心する。19時終了。夜は『社会学の考え方』を読みながら夜半過ぎ就寝。


2019年09月14日(土)

小雨後曇りの涼しい一日。8寺半出社。『建築の前夜 前川國男論』のレジメを再読しながら書評のスケッチを続けるがなかなか焦点が定まらない。11時から戸田と「箱の家164」の展開図打ち合わせ。細かな点の間違いの修正を指摘し午後までにまとめて修正した平面詳細図と一緒にたたき台メールを送るように指示する。木村とは「162酒井邸」の詳細の打ち合わせ。9月17日(火)の富山行きのスケジュールを確認する。事務所内外を掃除して12時に解散。13時前に事務所を出て東京駅へ。13時40分発の上越新幹線に乗車。車内で佐々木睦朗さんと合流し高崎駅にて下車。駅近くで待機しているバスに乗り込み渋川の〈ハラミュージアム・アーク〉へ向かう。連休初日の交通渋滞に巻き込まれて1時間半近くかかる。車内では〈建築倉庫ミュージアム〉の佐々木レクチャーの再編集したスライドを見ながら意見交換。佐々木さんは最近のレクチャーはほぼ時間内に収まっていると主張するが一通り通しで見た印象からポイントを絞リさらに枚数を減らすべきだと進言する。ハラミュージアムに到着後は直ちに新館の〈觀海庵〉に向かい磯崎新の版画、模型、シルクスクリーンのコレクションを観る。アニッシュカプーアの抽象彫刻や加藤泉の奇妙なオブジェに混じって円山応挙の本墨画や狩野永徳の屏風が展示されている不思議な空間を体験する。その後急ぎ足で旧館の3つのギャラリーで加藤泉のアフリカ彫刻のような奇妙なコレクションと草間彌生の部屋を巡る。16時から美術館前のテラスで集合記念写真を撮りその後は芝生テラスで祝賀会開始。発起人の渡辺真理さんの挨拶に続き美術館オーナーの原俊夫、藤森照信、浅田彰、ポーランド大使、妹島和世、青木淳が挨拶し、蛇皮線の演奏と沖縄の唄、ラッパーによる〈孵化過程〉の朗読が続く。200人近くが集まったが建築関係は1/4位だろうか。パーティの最中に戸田から「箱の家164」の展開図と平面詳細図が届いたのでコメントを加えてUさんに送信する。最後に磯崎新さんが短い挨拶をして18時半過ぎに祝賀会終了。バスに乗り込み高崎駅へ向かう。パーティの合間や帰りのバスの中で藤森さんと丹下健三論の経緯について訊き中谷礼仁の『未来のコミューン』について意見交換する。藤森さんによれば僕や藤森さんの世代までは正当な近代建築史を踏まえて歴史を捉えているが中谷さんの世代以降はそのようなバックグラウンドがなくなっていると指摘する。最近は映画館の歴史に関する本を書いているそうだ。高崎駅構内の売店でビールとつまみを買い込み新幹線車内で佐々木睦朗さんと二次会。10時半に帰宅。ウィスキーを呑み直し23時過ぎ就寝。


2019年09月13日(金)

曇り時々晴れの涼しい一日。8時半出社。10時半から戸田と「箱の家164」の展開図の打ち合わせ。前回打ち合わせた結果のチェックバックを確認してから新しい後半図面をチェックする。空調空気の流れを考えながら夫婦寝室と子供室の間仕切りについて検討する。換気用の高窓も空気の流れだけでなく自然採光を確保することも考えて間仕切りの上部欄間をFRP グレーチングとする。スイッチやコンセントの位置を動線と使い方を考えながら位置を確認する。展開図は今日中にまとめて明日土曜日に再確認し週末にはUさんに送る予定。酒井さんから「162酒井邸」の現場養生に関するクレームのメールが届く。正栄産業は雨養生を初めとして養生が全体的に手抜き気味なので直ちに転送し早急な対応を指示する。アクアレイヤー工事は9月17日(火)の予定だが「163保田邸」のアクアレイヤー工事の最終段階でアクアパック内の水泡を抜くために表面を撫でる際に端部がを破断した事件が2度あった。新しいタイプのアクアパックに剛性があるためで工事担当者に十分注意するようにイゼナに連絡する。〈縦ログ構法講習会〉スライド編集を再開する。スライドの数を思い切り削減して30枚程度に縮める。これで15分以内に収まるだろう。『建築雑誌』編集長の高口さんが法政大の網野さんの訪問日が確定した旨をSlackに書き込んでいる。残念ながら富山の「162酒井邸」のアクアレイヤー工事の日とバッティングしているので陳謝と網野さんへの伝言を書き込む。『建築の前夜 前川國男論』の再読を終えてレジメをまとめる。しばらくこのレジメを読みながら書評について頭の中でスケッチする。18時に事務所を出て日比谷TOHOシネマに18時半過ぎ着。18時50分からIMAXで『ブレードランナー』(リドリー・スコット:監督1982)を観る。大音響の巨大画面で見るとビデオとはまったく異なる迫力がある。ストーリーは知り尽くしているので専ら画面のディテールに注目し音響効果に耳を攲てる。すべてのシーンが夜で照明やサーチライトが効果的に使われている。唯一タイレル社の社長室のシーンだけに地平線に沈みかけた太陽が現れるがここも黄昏時である。とりわけ印象的なのは顔のアップ画面の繊細なデザインである。短いカット毎にアップの度合いが変化し照明と音響の効果が連動する。それだけでなくカット毎に俳優の眼の周りの化粧や瞳の色を変えて感情の変化を見せる演出にはほとほと感心する。背中から銃撃され倒れた殺人レプリカント、ゾラの心音が消えると同時に眼から一滴の涙が垂れるシーンには胸が熱くなる。散乱したガラス片にカラフルなネオンが映り込むこの美しいシーンは『ブレードランナー2049』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ:監督 2018)の殺人レプリカント、ラヴに引き継がれている。その他にも数えきれない細かな発見があり2時間を心いくまで堪能した。21時終了。21時半過ぎに帰社。メールチェックして10時帰宅。ウィスキーを呑みながら映画を反芻しながら沈思黙考。


2019年09月12日(木)

晴れでやや涼しい一日。朝早く中川純さんからメールで届いた推薦文のたたき台を加筆校正し署名捺印した書類をスキャンデータに変換して返送する。うまくいくことを期待しよう。はりゅうウッドスタジオの滑田崇志さんから『建築雑誌』2月号特集「震災後の新しい生活」のための〈二地域居住〉インタビュー相手、場所、時刻などの要領が一通り確定したので『建築雑誌』事務局にメール報告し記録担当者の手配を依頼する。インタビューの担当は長澤夏子さん、中川純さん僕の3人である。3月号特集「歴史の効用」の進行がはかばかしくないようなので編集担当の加藤耕一さんへ特集のための個別編集会議を召集してはどうかという提案メールを送る。合わせて編集メンバーについても数名の編集委員を推薦する。2月号特集でも能作さんが個別編集会議を2回開いて企画を一気に収斂させた経緯があるからである。まもなく加藤さんから9月下旬に編集会議開催提案のメールが届いたので推薦した編集委員ともメールをやり取りして開催スケジュールを決める。これで企画が軌道に乗ることを期待しよう。佐々木構造計画の瀧本さんから「箱の家164」の鉄骨階段システムのスケッチが届く。ブレースの掛け方は界工作舎の提案よりも単純になったが柱・間柱への階段ささら桁の留め方について疑問があるので界工作舎としての方針を整理して返信メールを送る。これで階段を含めて基本的な詳細は決まりそうである。9月21日(土)に郡山で開催される縦ログ構法講習会が近づいてきたので、はりゅうウッドスタジオに集合場所と時刻の問い合わせメールを送る。スライド編集もそろそろ本格的に再開しなければならない。建築倉庫ミュージアムの近藤以久恵さんから佐々木睦朗さんのpdf版レクチャースライドが届く。一通り目を通して見ると3年前の佐々木さんの最終講義のスライドとほぼ同じ内容なのでいつもの佐々木さんのペースならば最終講義と同じ2時間を超えることは間違いないことが予想される。しかしプログラムで与えられている時間は45分間である。延びたとしても1時間以内に納めるにはトピックを半分以下に削減しスライド枚数を40枚以下に抑えないと収まらないだろう。その旨を近藤さんにアドバイスし佐々木さんに再考を促すように進言するメールを返信する。今週土曜日に磯崎新さんの米寿祝賀会に佐々木さんと同行するので僕からも相談してみよう。昨日読み始めた『日本林業を立て直す 速水林業の挑戦』は林業の上流の話なので材木の下流への流通に注目して読んで見るつもりだが、これに並行してアマゾンから届いた『社会学の考え方』(ジグムント・バウマン+ディム・メイ:著 奥井智之:訳)を読み始める。出版は1990年代なので少し古いけれど教科書的な著作である。こちらは社会学的な思考にどこまで空間的な思考が絡んでいるかに注目して読むことにしよう。明日夜の〈アンジェロ・マンジャロッテイ展〉のオープニングの補欠参加に登録したが音沙汰がないので計画を変更してIMAXでリバイバル上映中の『ブレードランナー』(リドリー・スコット:監督1982)へ行ってみようかと考える。CD盤は5versionsすべてを持っているが映画館でIMAXで観ると一味違うだろうからである。


2019年09月11日(水)

曇り時々雨の蒸し暑い一日。8時半出社。10時半にU一家が来所。「箱の家164」の設備システムの打ち合わせだが、その前に見積要領の内容について意見を訊く。特に大きな問題はないが一部内容を修正するように指示を受ける。引き続き設備システムについて電気、空調、給湯給排水の順に説明する。システム図なのでなかなか理解しにくいようだが疑問点については詳しく説明する。TVやLANについても確認する。床下空調システムについては空調機が2台あるので制御盤の位置を2箇所に分けること、2階の間仕切りについては空調空気の流れを考慮して検討し展開図の段階で確認してもらうこととする。台所については夫人からいろいろ要求があるようだが一応条件を訊き、これも時間の展開図の打ち合わせで確認することとする。今週中に展開図がまとまるので週末に送信しその後に約2週間かけて検討してもらう予定。その間には外壁展開図、天井伏図、建て具表までまとまるだろう。次回の打ち合わせ日を10月1日(火)と約束して12時過ぎに終了。14時に事務所を出て歩いて原宿駅に行き予約しておいた富山行の2人分の新幹線乗車券を購入してから山手線に乗り田町駅にて下車。建築会館3階の『建築雑誌』編集会議へ。15時から高口編集長の司会で1月号特集「レジリエントな建築・都市」の進行状況を担当の増田幸宏さんが報告、引き続き連載記事の手配状況を各担当者から報告。連載担当者が意外に状況を把握していないことに驚く。2月号特集「震災以降の新たな生活」については能作文憲さんが論考とインタビューの手配はほぼ終了していることを報告。3月号の特集「歴史の効用」については加藤耕一さんがようやく企画内容のたたき台を提出しているが、あまり煮詰まっていないので少々ガッカリする。学会や大学院試験で忙しかったとはいえ少しは考える時間くらいあっただろう。編集委員も確定していないので一度個別委員会を開いてはどうか加藤さんに提案してみよう。5月号特集「木質構法のサステナビリティ」については高口編集長から企画について報告があるがタイトルの変更を含めてやはり山崎真理子さんや小見山陽介さんの参加を募り正式な編集委員会を立ち上げるべきだと提案する。その際にはぜひとも網野禎昭さんにも加わってもらいたいので一度高口さんと法政大学を訪ねることになる。6月号の特集「計画学と社会学」については僕なりの趣旨について説明し担当編集委員の長澤夏子さんに『都市美』の読評会から始めることと宮原真美子さんや國廣純子に編集委員に加わってもらうことを提案する。会議の最中にはりゅうウッドスタジオの滑田崇志さんから「二地域居住」のインタビューに関するメールが届くいたので正式な取材先について質問メールを返信する。17時半過ぎに会議終了。建築会館を出ると物凄い雷雨の中を通勤客が駅に向かって走っている。18時半に帰社。中谷礼仁さんから日士連会長の三井所さんから届いた書類と電話に関する報告メールが届く。添付された書類にざっと目を通すがこれをなぜ審査委員全員に送らないのか理解に苦しむ。非民主的で古臭い政治的な腹芸である。審査員の任命を会長に集中させるという規約案がまとめられているが、まったく現在の安倍政権のやり方と同じである。21時半帰宅。ムカムカするのでウィスキーを煽り『日本林業を立て直す 速水林業の挑戦』(速水亨:著 日本経済新聞出版社 2012) を読みながら夜半就寝。


2019年09月10日(火)

快晴で今日も残暑が厳しい一日。8時半出社。10月半ばの現場説明のために「箱の家164」見積要領を作成し内容チェックの依頼メールとともにUさんに送付する。明日の打ち合わせで再確認しよう。縦ログ構法講習会が近づいてきたのでスライドの編集を再開する。シナリオをスケッチした上でスライドの枚数をもう少し減らすように試行錯誤する。現在の40枚を何とか30枚程度に縮めたい。横山天心さんから「162酒井邸」の定例打合せ報告が届く。木部のシミ抜き、防蟻処理工事、屋根の板金工事などの写真が添付されているのでチェックする。木部のシミはかなり除去されている。この上に白色オスモカラーの染色塗装を施せば色ムラはほぼ消去されるだろう。酒井さんが気にしていた節のある合板も送られてきた塗装見本を見るとほとんど気にならなくなっている。内装工事までに湿気を帯びた下地の木部を十分に乾燥させるように正栄産業に指示する。新しい工程表が届きアクアレイヤー工事の日程が確定したので富山行の新幹線の切符を予約購入する。明日の午後は『建築雑誌』編集委員会なので各Slackを確認し新しい書き込みについて気になる展をコメントする。3月号の特集「歴史の効用」への加藤耕一さんの書き込みがないのが気になるが、明日の編集会議では編集方針と対談、インタビュー、論考を依頼する人たちのおおよその目星をつけよう。このテーマは1回の特集で終わらせたくないので次回の展開テーマについてもアイデアを募りたい。高口編集長が新たに木質構法特集のSlackを立ち上げているので基本方針について追記し網野禎昭さんを編集委員に招聘したい旨を書き込む。建築倉庫ミュージアムの副館長の近藤以久恵さんから10月5日(土)に開催する佐々木睦朗さんの講演会と対談の案内用WEBバナーが届いたので直ちに界工作舎HPとfacebookにアップする。
https://archi-depot.com/event/specialsession_msandkn
『建築前夜 前川國男論』の再読を続行する。前川國男の単なる評伝としてだけでなく、戦時における建築家や建築アカデミズムの対応の仕方や、そこから僕が学んだこと、さらには若い建築家がどう受け止めるかといったことにまで引き寄せて考えてみたい。とはいえ問題を単に現代化するのではなく、歴史的に捉えることが重要であるということは池辺陽から叩き込まれた教訓である。


2019年09月09日(月)

台風一過の灼熱の一日。8時半出社。10時半から戸田と「箱の家164」の展開図の打ち合わせ、台所周りの家具の詳細確認、空調空気の流れを考慮した2階スクリーンの変更や床吹出口の配置変更、階段や吹抜の手すりなどについてチェックバックする。台風の影響で電車が遅れたため木村は12時過ぎに出社したので午前中に電話連絡をもらった酒井さんからの家具の変更について再確認するように指示する。山代悟さんがfacebookで昨日僕が指摘したブルネレスキのサント・スピリト教会における論理と現実のズレつまり外壁入隅の縦窓の潰れや内部ドーム部の柱の分割と側廊天井ドームの割れを確認し写真をアップしている。僕のコメントを丁寧に検証してくれたようでありがたい。僕もこの秋にフィレンツェに行く予定なので再確認しよう。奇妙な形のファサードをヴェンチューリ的と見る建築家に対しては表層に囚われないで目を細めて内部空間の4:2:1のプロポーションを読み取るように注意を喚起する。基本的な構成はブルネレスキのサンロレンツォ教会と同じでありヴェンチューリの〈多様性と対立性〉とは異なる。アルベルティやパッラーディオならばサンタマリア・ノヴェッラ教会やイル・レデントーレ教会@ヴェネツィアのようなルネサンス・ファサードに変換しただろうとコメントする。夕方に中谷礼仁さんからメールが届く。日士連の三井所会長から先日送った審査委員会の意見書に対する回答電話が入ったそうだ。まだ最終結論は出ていないようだが岸和郎さんや竹原義二さんに対するのと同じく中谷さんにも個別的な突き崩しを仕掛けてきたそうだ。どこまでコンプライアンスを踏みにじるような非民主的なやり方を採るのかまったく理解に苦しむ。ここまでくれば審査委員会として公開質問状を送るべきかもしれない。夜は『テーマパーク化する地球』を拾い読みする。いくつか思考を喚起するヒントをもらったが興味深いのは最終章の「批評とは何か供廚任△襦J孤家としては珍しく東浩紀自身が立ち上げた〈ゲンロン〉という会社における運営と制作の関係についての経過報告と結果分析である。運営に携わるスタッフが制作者である東に「おんぶに抱っこ」状態になり東自身がパンクしそうになったので責任者を降りたという。東は〈ゲンロン〉が組織として成立しているのは資本主義的な等価交換の失敗つまり〈誤配〉によってでありスタッフもそれを担わないと〈ゲンロン〉のような組織は成立しないと結論づけている。〈制作〉を生み出すのは〈誤配〉であるという主張は興味深い。要するに創造とは一種の過剰性ということである。これは僕たち建築家にとってはごく当たり前の日常的な課題である。事務所のスタッフが何らかの形で〈制作〉に関わらなければ設計事務所は運営できない。形は異なるとはいえこの問題は『建築雑誌』編集委員会というプラットフォームと特集テーマというコンテンツの関係についても当てはまるような気がする。


2019年09月08日(日)

午前中は晴れていたが午後は台風の接近で曇りの後雨の蒸し暑い一日。10時出社。午前中は戸田がまとめた「箱の家164」の展開図に目を通す。2階の間仕切が追加されたので家全体の空調空気の流れをどのように確保するかについて再検討しなければならない。あれこれスタディし「163保田邸」のような建具のスリットで対応することを検討するが、風量が少し足りないだろう。FRPグレーチングのスクリーンを提案してみよう。午後は8月分の帳簿整理。界工作舎の会計年度は9月末までなので早めにまとめておきたい。山代悟さんがinstagram にフィレンツェのサント・スピリト教会の写真をアップしている。外見からだけではブルネレスキの意図を推し測ることはできないため戸惑いのコメントが書かれている。フィリップ・ジョンソンがもっとも気に入っていた教会でありオスペダーレ・デリ・イノチェンティ(捨て子養育院)のファサードと同様に僕も大好きな建築である。というのもプランを見ると明らかなように内部の空間構成がルネサンスにおけるプラトン思想の原理を適用してデザインされているのだが、建築には物理的サイズがあるため自然数の比例による空間原理をそのまま適用すると出隅や入隅に矛盾が生じ、その矛盾をそのまま建築的に表現している点がきわめてユニークだからである。つまり理念と現実との矛盾がストレートに見て取れる訳である。この建築的テーマはミースがIITキャンパスで行なった試みとまったく同じであり、その意味でブルネレスキは最初の近代建築家だと目されているのである。何人かの建築家がヴェンチューリの『建築の多様性と対立性』との関係をコメントしているが、私見ではまったく的外れというべきである。というのもヴェンチューリのいう〈多様性と対立性〉とは、この教会に見られるような論理の追求と破綻のことではなく、ミケランジェロやジュリオ・ロマーノのような論理抜きの意図的な過剰性のことだからである。したがってヴェンチューリはブルネレスキについては何も言及していないはずである。その後は読みかけの『テーマパーク化する地球』(東浩紀:著 ゲンロン 2019)の再読しながらキーワードを抜き出す。東の発想には常識や通説を微かにズラすヒントがあり触発される。夜はBSTVで『ブレードランナー2049』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ:監督 2017)を観る。ロードショーで5回観たので発見はない。改めて『ブレードランナー』(リドリー・スコット:監督 1982)の〈多様性と対立性〉を確認する。台風15号が関東に上陸するという予報なのに9時半を過ぎても静かな天気だが夜中過ぎから物凄い風雨になり家全体が共鳴して叫んでいるような感覚である。


2019年09月07日(土)

晴れのち曇りの蒸し暑い一日。酒井さんから「162酒井邸」の木部シミ抜きの報告メールが届く。午前中は天気がいいので見た目ではシミが薄くなったという印象のようである。午後は横山天心さんが現場監理に行くので最終的な結果については月曜日の報告を待とう。兵庫県三田市の「100井浦邸」の浴室回りの柱脚の腐食について今年二月に寺山麦さんから写真報告があった。その後何度か点検した結果腐食がかなり広範囲に進行していることが明らかになり、浴室まわり一帯の本格的な改修工事が必要になったとの報告が届いた。「箱の家100」の竣工は大阪市大から東大に転勤した直後の2004年なので15年を経過し瑕疵担保保証期間を過ぎている。工事を担当したのは大阪市大の宮本佳明さんが紹介してくれた工務店なので、連絡しメンテナンスのための大工を紹介してもらう。建主のIさんからメールが届き腐食の要因について訊かれたので竣工図を見ながら考えられる可能性についてまとめた説明メールを返信する。竣工以降一度も連絡をもらったことがないので突然のメールに少々戸惑う。「連絡がないのは無事の知らせ」の典型だが、問題が生じてからあれこれ連絡をもらってもその間の経緯がわからないので憶測しかできない。寺山さんと工務店にしっかり対応してもらうしかない旨のメールを送る。11時半に週末の所内打ち合わせ。木村とは環境デザインコンペの書類送付と「162酒井邸」の家具変更工事の概算見積のまとめを酒井さんに送るように指示する。戸田とは「箱の家164」の展開図の途中図面をdropboxに入れておくように指示。12時過ぎに事務所内外を掃除し解散。午後は『建築前夜 前川國男論』の再読開始。気になる論点を列挙していく。大学卒業直後にパリのル・コルビュジエのもとに向かったこともさることながら、最大の問題はやはり戦時中の前川の思考の突き詰めというか建築観の進展と収斂である。年齢的に最も活動的な時期と戦時とが重なり合った建築家にとって、戦争に対する対処の仕方が戦後の設計活動を決定づけたということだろう。著者の松隈は指摘していないが、僕の考えでは日本の敗戦の根本的な要因が物量と技術力におけるアメリカとの決定的な落差にあったことが、戦後の日本の近代建築に対する前川の考え方に通底する暗黙の前提になったとはいえないだろうか。


2019年09月06日(金)

晴れで暑さがぶり返した一日。8時半出社。横山天心さんと「162酒井邸」の木部シミ抜きや床フローリングの張り方に関して意見メールのやりとり。コストパフォ―マンスを優先してアクアレイヤーを南北方向ではなく建物長手の東西方向に敷き込むことにしたので根太方向とフローリング張りの方向が一致するため根太に釘留めするのが難しい。止むを得ず短い20舒焚爾療と接着剤を併用して下地合板に留める構法を提案する。Uさんから「箱の家164」の詳細についての変更希望2点が届く。大きな問題はないので実施する旨のメールを返送する。引き続き戸田と進行中の展開図について打ち合わせ。まだ半分程度までの進行だが階段周りの納まりについてスケッチを渡しいくつかの留意点に注意を喚起する。来週半ばまでには展開図を終えて外壁展開図と天井伏図に進みたい。建築倉庫ミュージアムの近藤以久恵さんから10月5日(土)の佐々木睦朗さんとの対談依頼のメールが届く。略歴と顔写真を添付し時間配分にくれぐれも注意する旨のメールを送る。佐々木睦朗さんとは何度も一緒に講義や対談を経験してきたが佐々木さんのレクチャーは一度として所定時間内に収まったことがない。佐々木さんはレクチャーを始めると熱中して時間感覚を失ってしまうからである。2018年にDOCOMOMO Japanに選ばれた大高正人設計の〈千葉文化の森〉で10月19日(土)に開催されるシンポジウムに佐々木睦朗さんと一緒に参加する旨の申込メールを送る。木村俊彦さんによるRCプレグリッド構造について佐々木さんの説明をじっくり聴いてみたい。『建築雑誌』1909月号の特集「建築の公共性」を読む。今年3月28日(木)に建築学会で開催されたシンポジウムのメンバー山本理顕、木村草太、赤松佳珠子に藤村龍至をはじめとする編集委員が加わった対談である。行政が発注する公共建築や民間ディベロッパーが発注する商業建築の〈公共性〉を確保するにはプログラム段階から建築家が加わる必要があるという山本理顕のいつもの主張が繰り返したのに対し、木村草太は建築基準法のような実体的な基準よりも、それを決める「建築手続法」を法制化する方が可能性が高いのではないかという提案を行っている。要するにコンテンツを共有するのは難しいので手続きを共有するという提案である。まどろっこしいような気もするが、民主的な社会においては具体的な内容を決めるよりもその方が有効かもしれない。塚本由晴による公共性をコモンとしてあるいはクラブとして組み直すというアイデアは興味深い。は興味深い。夜は『反脆弱性』下巻の再読を続行し読了。下巻は医原病に関する議論が主なのでレジリエントに関するヒントは少ない。引き続き『建築前夜 前川國男論』(松隈洋:著 みすず書房 2017)の再読開始。そろそろ書評のスケッチに集中しなければならない。


2019年09月05日(木)

曇りでやや涼しい一日。『建築雑誌』2001月号「レジリエンス特集」のSlackで高口洋人編集長が参考文献として「自然災害に対する都市システムのレジリエンスに関する概念整理」なる論文を紹介している。社会基盤(土木)の研究者が〈レジリエンス〉について書かれた世界中の文献を調べて概念整理を行ったという論文である。かなり長い論文で読み通すには一苦労するが、読みながらこのような論文を書く目的は一体何だろうかと考える。著者はレジリエンスという概念が広大で複雑な内容を内包しているためにその意味を明確にすることが第一の目的だと謳っている。しかし実際に読んでみるとますますレジリエンスの複雑で錯綜した意味に圧倒され、結果的に当初の目的は決して達成されないことに思い至る。アカデミックな世界ではこうした論文が高い評価を受けるのかもしれない。だから無意味とまでは言わないが、一般の人たちにレジリエンス概念について説明するにはまったくもって不適当であり、ピエール・ブルデューが批判する〈スコラ的論文〉の典型すなわち問題をこねくり回しただけの論文である。少なくとも『建築雑誌』ではこのような〈論文のための論文〉だけは絶対に避けなければならないと考えて手厳しい批判的コメントを書き込む。僕の考えでは、こういう論文を書く人はそれによってレジリエントというテーマに何らかの貢献をしていると思い込んでいるのだろうが、実際のところは俯瞰的な視線によって自らを実践=現場から遠ざけ官僚的な立場に立っているに過ぎないのである。家早何友と言うしかない。「箱の家164」の鉄骨階段の詳細スケッチを続行する。厚板鋼板による片持ち踏板のシステムが最も単純明快なのだがL字型に曲がる部分のささら桁の接合のディテールが意外に難しいことが分かる。工学院大学の大内田史郎さんから『東京建築遺産さんぽ』(大内田史郎:著 傍島利浩:撮影 エクスナレッジ 2019)が届く。明治時代以降の近代建築で現存するものを取材した写真集である。直ちにお礼のメールを送る。「162酒井邸」の屋根や外壁の雨ジミに対する対策について酒井さん、横山天心さん、正栄産業の現場監督と何度かメールのやり取り。今週末にシミ抜き工事に着手するそうだ。屋根の板金工事はまだ終わっていないので今週末にも予想される雨への養生をしっかりと行うように指示する。夜は『反脆弱性』の再読を続行する。上巻をほぼ読み終わり下巻に進む。マルクスやシュンペーターのイノベーション論や武谷三男の技術論に対する批判が興味深い。理論が技術に応用されるという技術論の通説は大きな間違いであり、実際には実践が理論を生み出すのだが、理論が後付けによって理論から技術が生まれるという物語を捏造するのである。これは今朝読んだレジリエンス論文についても言えることのように思える。


2019年09月04日(水)

曇り時々雨の涼しい一日。8時半出社。スタッフが出社するまでしばらくの間原稿のスケッチ。10時にオキナヤの山口毅さんが来所。植野さんから紹介された熊谷の建設会社の建設担当者で「箱の家164」の見積参加について受けてもらえるかどうか相談する。前向きの返事をもらったのでその後直ちに「箱の家」の工事を担当したことのある埼玉県の工務店3社に見積依頼の打診メールを送る。まもなく3社とも見積を受けてくれる旨の返事が届く。これで見積依頼先は4社になった。10月に入ったら現場説明の日時と敷地案内図を送ることにしよう。佐々木構造計画から「箱の家164」の鉄骨階段の検討結果が届く。構造システムについて3通りの代替案が提案されているので詳細を検討して報告する旨の返信メールを送る。早速スケッチを開始し鉄骨間柱とプレートささら桁と間柱のジョイントを現場溶接ではなくボルト接合にできないかについて質問メールを送る。現場溶接だと骨組建方時に階段を一緒に工事することになるが階段工事は独立させた方が好都合だからである。横山天心さんから「162酒井邸」の定例打ち合わせ記録が届く。雨続きで木部のシミが増えているようだ、酒井さんからもシミの写真が送られてくる、シミ抜きだけではなく耐久性についても問題はないか正栄産業に検討を依頼するとともに保証期間の延長を依頼する必要があるかもしれない。工程表によればアクアレイヤーの設置工事は9月半ばの予定である。その際には界工作舎も工事に立会う予定である。〈NICHIHA SIDING AWARD 2019〉の総評を書き始める。短い原稿なので飯島直樹さんとの共同審査が今年で3回目であること、突出した応募作品は見られないが総体として徐々にレベルアップしていること、ニチハ社内の人気投票と審査員の選択が徐々に近づいていることなどについてコンパクトにまとめ事務局に返送する。木村がまとめたコンペの提出シートについて打ち合わせ。何点か加筆訂正して事務局に送ることにする。夜は『反脆弱性』の再読を続行する。赤線を引いた部分に目を通し気になるキーワードを抽出する。レジリエンスと脆弱性とが対比概念であることが明らかになるだけでなく頑強性(robustness)や耐久性(durability)とも異なるダイナミックな概念であることが分かってくる。


2019年09月03日(火)

それほど暑くないが晴れ後曇り後雨という不安定な天候の一日。8時半出社。「162酒井邸」の詳細に関して酒井さんと正栄産業から何点か質疑メールが届く。界工作舎としては断熱パネルを介した木下地材の留め付けに外張断熱用の構造釘(パネリード)を使用していることを確かめたいので工事写真の送信を依頼する。10時半に事務所を出て散歩がてら青山の銀行へ。表参道の人通りがいつもより少ないのはアップルストア表参道の内装改装工事が今も続いていて地下の営業だけだからだろうか。銀行で雑用を済ませ11時過ぎに帰社。30分程度の散歩だが湿度が高いせいで汗が噴き出す。あるメディアから賞への応募を誘われたので木村が「159吉村邸」のA2パネルを作成している。サスティナブル・デザイン関係の賞だが日射の制御、熱の分布、空気の流れなど環境的な考案をすべて表現するのは難しい。戸田がまとめた「箱の家164」設備システム図を何度かチェックバックをくり返す。依然として随所にコピペの悪弊が見られるのは困りものである。夕方ようやく収斂したのでカタログのデータと設計の方針についてのコメントを添えてU夫妻に送信し次回の打ち合わせを来週水曜日に行いたい旨を伝える。夜に返信が届き打ち合わせの日時が確定する。引き続きエアアクア・システムの床下配置をまとめ建築図を添えてイゼナに送信する。『建築雑誌』2010年1月号特集〈レジリエントな建築・都市〉の連載原稿のために『反脆弱性 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』(ナシーム・ニコラス・タレブ:著 千葉敏生:訳 ダイアモンド社 2017)の再読を開始する。株式投資におけるリスクマネジメントを目的とするシステムの〈反脆弱性〉について多面的に論じた内容で出版直後の2年前に読み通し沢山のことを学んだが、システム論的なアプローチなので建築や都市のレジリエント性にも適用できると考えた(神宮前日記2017年9月18日)。以前には同じ著者の『ブラックスワン 不確実性のリスクと本質』(ナシーム・ニコラス・タレブ:著 望月衛:訳 ダイアモンド社 2009)を読み人間の思考に潜む不確実性への非適応性について学んだが、本書はその内容をさらに発展させた内容である。本書の冒頭で著者のタレブは〈反脆弱性Anti-Fragile〉をこう定義している「衝撃を利益に変えるものがある。そういうものは、変動性、ランダム性、無秩序、ストレスにさらされると成長・反映する。そして冒険、リスク、不確実性を愛する。こういう現象は巷にあふれているというのに『脆い』のちょうど逆に当たる単語はない。本書ではそれを〈反脆い〉または〈反脆弱性〉と形容しよう」。この定義からも分かるように〈反脆弱性〉とは対象自体の特性というよりも不確定に変動する対象を受けとめる側が備えるべき特性である。したがって〈レジリエンス〉は最終的には人間社会の特性になるように思われるが、私見では少なくとも〈モノー人間〉の関係システムの特性として捉えてみたい。夜は『都市美』を読み続け最後の対談「LOCAL REPUBLIC(地域社会圏)と自治」を読み終わる。ここれで一通り読み通したので『建築雑誌』2020年5月号の特集「計画学と社会学」でとり挙げる場合の視点について考えてみよう。


2019年09月02日(月)

久しぶりに晴れで残暑の一日。富山の正栄産業から「152酒井邸」の木部のオスモカラー拭き取り仕上げの塗装見本写真と透明ガラスに貼るフロストシートの見本が届く。オスモカラー染色はいつも通りの色相に近く節も目立たなくなっているので酒井さんに見てもらうように依頼メールを返送する。戸田と「箱の家164」設備システムの打ち合わせ。2階天井の配線にレースウェイを使用し照明器具はレースウェイに取り付けることとする。レースウェイは天井と同色に塗装することになるだろう。9月21日(土)に郡山で開催する〈縦ログ構法講習会〉のスライド編集を開始する。これまでのスライドファイルのアーカイブを探索してあちこちからスライドを集めて60枚のスライドに編集する。しかし15分という短いレクチャーなので〈縦ログ構法〉の基本的な考え方についてコンパクトに説明することを旨とし40枚に縮小してタイトルは『縦ログ構法の原理』とする。〈建築の4層構造〉に従って結論は〈縦ログ構法の4層構造〉とする。開催日近くなったら再度見直し縮小する必要があるかもしれない。〈ニチハ・サイディングアワード2019〉の総評スケッチを開始する。事務局から送られてきた入賞作品をデータ見直すと昨年よりも少しレベルアップしているようだ。池辺陽研究室の先輩である奥田宗幸さんから〈アンジェロ・マンジャロッティ展〉の案内が届く。工業的な精緻なデザインを展開する僕好みの建築家である。僕は20年ほど前に〈パランザーテの教会〉を見たが外壁の二重の大理石に挟まれた断熱材が経年劣化で黒く変色して無残な状態だった。その後メンテナンス工事によって回復したという噂を聞いたのでもう一度訪ねてみたい。LIXILの広報から〈10+1 website〉が今年度一杯(2020年3月)で終了するというメールが届く。2000年にリリースを開始してちょうど20年目である。僕は何度か連載し本にまとめた。『建築の4層構造 サステイナブル・デザインを巡る思考』(難波和彦:著 LIXIL出版 2009)と『建築家の読書塾』(難波和彦:編 みすず書房 2015)はその成果である。ウェブが更新されるたびに連載記事を読むのが楽しみだった。SNSなどインターネットの拡大によって多種多様な発信メディアが生まれているために〈10+1website〉のようなパブリックなメディアの役割は終わったのかもしれない。しかし僕のようなやや古い世代の人間にとっては貴重なメディアである。そろそろもう一度連載を頼もうかと思っていたが、たまたま『建築雑誌』の編集顧問を依頼されたので思い留まっただけである。おそらくあまり事情を知らないトップの経営判断ではないだろうか。なんとなく日士連作品賞の見直しに似た雰囲気を感じる。夜は『都市美』の「LOCAL REPUBLICの思想」(田井幹夫:著)を読み始める。


2019年09月01日(日)

8時起床。曇り時々晴れの蒸し暑い一日。9時半出社。戸田がまとめた「箱の家164」の設備システム図に目を通す。吹抜け空間の照明法を今までとは少し趣向を変えたいのだがなかなかいいアイデアを思いつかない。2階を含めてレースウェによるシステマティックなシステムはどうだろうか。空調システムは床下空調機と床下チャンバー、エアアクアに還流ダクトを加えたシステムをより効率化したい。U夫妻の希望で一室空間の2階間仕切りが増えたため空調空気の流れをスムースにする経路を検討しなければならない。給湯給排水システムについては2階の配管経路が難しいが吊り戸棚を配管経路に使って解決しよう。12時過ぎに事務所を出て表参道駅から銀座線で渋谷駅にて井の頭線に乗り換えさらに明大前駅で京王線に乗り換えて調布駅に13時前着。地上出口で佐々木睦朗さんと待ち合わせ北方向へ約10分歩き布多天神社の参道手前を左に折れて〈桐朋学園大学音楽学部調布キャンパス〉へ。手前に墓場が広がる向こうにラフなRC打ち放し仕上げの低層建物が見える。見学会は13時からだが既に多くの人が集まっている。新設の音楽大学キャンパスで一体の建物に集中させ1階をオープンな空間とし地下と2階を練習室と教室のユニットを並べたプラニングである。大小の練習室ユニットは分節的に表現されグリッド状の2階床梁システムの上に載せられ鉛直荷重は1階の角鋼管PC柱によって支え、横力は随所に配したRC壁によって支えている。練習室ユニットの配列はBIMを使ってスタディしたそうだ。一見すると複雑に見えるがトポロジカルには回廊式の分かり易いプラニングである。所々に光庭が配され広大な空間に自然光をもたらしているのも興味深い。2階のユニット空間の複雑な配列と1階のオープンな空間とを、鋼管PC柱とRC耐力壁のシステムによって統合した建築といってよいだろう。多くの見学者で溢れているが混雑した感じがしないのは1階の広大だがコーナーが分散配置された一室空間のおかげである。設計者の日建設計の山梨知彦さんにお礼を述べて14時半過ぎにお暇する。下北沢で佐々木さんと別れ16時前に帰社。17時に帰宅しシャワーを浴びた後にメールチェック。夜に中谷礼仁さんから審査委員による連合会理事会宛の要望書が届く。審査委員メーリングリストによって叩き台の書類を送ったらしいが僕には届いていない。確定版を見ると特に大きな問題はないので中谷さんに承認メールを返送する。三井所会長と理事会がこれをどのように受けとめるかが問題である。


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