難波和彦+界工作舎
HOME 難波和彦 難波研究室
箱の家 PROJECT 青本往来記
AND OR

コンパクト箱の家

2020年11月26日(木)

晴れのち曇りのやや暖かい一日。8時半出社。10時に淡青社の長野紘平氏が来所。今期に切り替えた帳簿データをパソコンに入力する。やはり反応が遅いので新しいパソコンを購入することとし、戸田が調べたパソコンをネットで購入する。建築学会から『建築雑誌』12月編集委員会の開催形式について打診があり、COVID-19の感染状況を踏まえて今回もTV会議方式とすることを決定する。(株)藤忠と「167N邸」の電気自動車用充電コンセントについてメールのやりとり。クライアントと田中会計士に「165箱の長屋」の見積用図面一式を送る際に添付する設計要旨をまとめる。「箱の家」のコンセプトと標準仕様に基づく設計であること、賃貸募集の際に不動産屋に対して配布する建築の仕様に関する説明書を作成すること、入居者に配布する建物説明書を作成することなどを盛り込む。佐々木構造計画に「169菅野邸」の地盤改良の概要について問い合わせメールを送る。ネットニュースで熱海がバブル期なみの不動産特需であることを報じている。『建築雑誌』2021年1月号の座談会でも述べたことだが、生活拠点を東京から離れた場所に移すわけではなく、一時的な避難場所としてのテレワーク用セカンドハウス需要である。『メルロ=ポンティ』は第2章「運動―〈身体〉の現象学」を読み続ける。身体に関する議論が続く。その中で〈物としての身体〉と〈生理学的な身体〉によってわれわれの身体は捉えきれないという指摘に出会い、第1章の『行動の構造』に関する議論の中で〈物質・生命・精神〉を実在の三つの領域、異なる構造的実在性を持った〈意味〉の三つの秩序として捉えていることを思い出す。かつて僕は『ウィトルウィウス建築書』の〈用美強〉をヒントに〈建築の3層構造〉を考えていたが、その起源はメルロ=ポンティのこの〈物質・生命・精神〉にもあることに気づく。


2020年11月25日(水)

小雨後曇りの寒い一日。8時半出社。9時前に事務所を出て銀行へ行き雑用を済ませた後その足で薬局に行き、昨日診療所で貰った処方箋の薬を購入して10時前に帰社。戸田は「167N邸」の中間検査の立会いのために甲府の現場に出かけている。昼前に中間検査は無事パスした旨のメールが届く。14時前に帰社。耐力壁が付いた現場写真を添えてNさんに監理報告のメールを送る。今日は毎日デザイン賞推薦の締切日なのでネットで推薦状をまとめる。いろいろ考えた結果、竹原義二さんが設計した〈小郡幼稚園〉を推薦することにする。木造建築としては新境地を拓いているからである。昨日に引き続き「165箱の長屋」の実施設計図のうち展開図、構造図、設備図に目を通す。それほど大きな変更はなさそうだが、見積後にフィードバックがあるかもしれない。世田谷のKさんから「166K邸」の地鎮祭に関するメールが届く。小川建設とメールをやり取りした結果、地鎮祭はややヘテロだが12月4日(金)の午後に実施することに決まる。夜は久しぶりにスタッフと青山の中華料理屋で夕食。遅ればせながら「165箱の長屋」の設計契約締結のお祝い。アラカルト料理で紹興酒を呑みながら歓談。あれこれ話し合い、帳簿整理に使っているパソコンの反応が遅いので新しいパソコンに買い替えることにして機種の選定を指示する。21半時帰宅。『メルロ=ポンティ』は第2章「運動―〈身体〉の現象学」を読み続ける。『行動の構造』と並ぶ主著『知覚の現象学』(モーリス・メルロ=ポンティ:著 竹内 芳郎+小木貞孝:訳 みすず書房 1967)の紹介である。思想の継承に関するエトムント・フッサールの箴言「伝統とは起源の忘却である」が記憶に残る。


2020年11月24日(火)

曇りで肌寒い一日。8時半出社、前田工学賞の一次審査評価リストを読み直した上で事務局に送信する。9時15分に事務所を出て外苑前の診療所へ。連休明けで患者が多く診察は10時から。3ヶ月定例検診とインフルエンザのワクチン接種で特段の問題はなく10時半終了。3ヶ月間の薬の処方箋をもらい11時に帰社する。昨夕、菅野さんから「169菅野邸」第1案に関するメールが届いたので、11時から担当の戸田と第2案の方針について打ち合わせる。大きな変更はなく、質問が多いので資料の収集について指示する。1週間程度で第2案をまとめよう。細かな要求を受け入れていくと設計は徐々に複雑になっていくのはいつもの通りである。木村と「165箱の長屋」の実施設計の打ち合わせ。今風中にはまとまるので、今週末の地盤検査に合わせて設計内容の説明を行いたい旨をOさんと田中会計士にメール送信する。しかし二人とも仕事が忙しく時間が取れないという返事。やむを得ないで、プリントアウトし田図面一式を送り、質疑を受けることとする。『建築雑誌』編集部から2021年1月号特集「新型コロナ禍をめぐって」の拡大座談会のゲラ原稿が届く。編集委員全員が参加した17ページのかなり長い座談会である。僕は数カ所で発言したので、加筆訂正して返信する。(株)藤忠から「167N邸」のサッシ製作図が届いたので承認して返送する。併せてベランダの詳細図も送信する。東工大の竹内徹さんから近現代建築資料館で進めている建築構造資料アーカイブWGの開催スケジュールの調整依頼が届く。Zoom会議なのでスケジュール表を見ながら返信する。トランプ大統領がジョー・バイデンへの政権移行を容認する旨をツィッターで表明し、事態は急激に進行しているようだ。しかしトランプはまだ白旗は挙げていない。哲学者の仲正昌樹が『「トランプ大統領の敗北、バイデン氏の勝利は陰謀である」という言説は、なぜ蔓延するのか?』という論説をネットニュースで発表している。
https://www.excite.co.jp/news/article/BestTimes_00737515/
要するに一種の陰謀論だが、なぜそれがアメリカ共和党の中心人物や、直接的な関係のない日本人の一部の知識人にまで蔓延しているのかという問題である。僕としてはマックス・ホルクハイマーやテオドール.アドルノにならって〈啓蒙の弁証法〉とでも呼びたくなってしまう。つまりカントが言ったように「蒙(もう)が啓(ひら)かれて」それが突き詰められると、状況は弁証法的に逆転し〈魑魅魍魎〉が出現するという論理である。民主的な選挙によって選ばれたナチス政権の出現や、ウンベルト・エーコが『プラハの墓地』で描いた反ユダヤ主義の偽書「シオンの議定書」の世界的普及、トランプ的ポピュリズムの出現も同じ社会現象である。『メルロ=ポンティ』は第1章「構造―〈行動〉の研究」を読み終えて第2章「運動―〈身体〉の現象学」へ進む。第1章の著者の結論はこうである。「解体に耐えずさらされながら生成する構造家の過程がしばしば〈弁証法的〉と形容されるのは、先行する構造を廃棄しつつ変換(transformation=変形)するという、ヘーゲルが〈止揚する(aufheben)という言葉で表現したような運動であるからである。(中略)メルロ=ポンティのこうした《構造の弁証法》とでもいうべき発想は、〈ゲシュタルト変換〉〈捉え直し〉〈一貫した変形〉〈制度化〉などの概念のかたちでメルロ=ポンティの生涯にわたる思想的営為の全てのフェイズにおいて主導している」。


2020年11月23日(月)

晴れ後曇りの清々しい一日。9時半出社。昨日の「167N邸」の上棟式の写真をFacebookにアップする。思い立って前田工学賞の一次審査を開始する。17点の応募書類を読みながら、前田工学賞と山田一宇小の評価とコメントを書き込んでいる。間に休みを挟みながら審査を続けて、夕方までかかってようやく審査を終える。どれも興味深い論文だが、中には建築学には馴染まない社会学のような研究がある。審査員が建築学の関係者であるというだけでは、問題ではないかとコメントする。明朝、コメントを読み直して前田工学財団事務局へ送信しよう。20時帰宅。『メルロ=ポンティ』を読み続ける。第1章「構造―〈行動〉の研究」は『行動の構造』(モーリス・メルロ=ポンティ:著 滝浦静雄+木田元:訳 みすず書房 1964)の紹介である。本書は1970年代初期に修士論文の参考書としてジャン・ピアジェやアンリ・ワロンの著作と一緒に読んだ。僕の修士論文は『構成論的計画学序説』というタイトルで、建築計画学における図式=構造が生成されるプロセスについてカントのカテゴリー概念やゲシュタルト理論に関係づけて論じた内容である。改めてメルロ=ポンティの構造生成論を学び直して、懐かしく感じるとともに僕の建築思想の深層にメルロ=ポンティの思想が根付いていることを再確認した。当時のことをあれこれと思い出しながら夜半に就寝。


2020年11月22日(日)

晴れのち曇りの肌寒い一日。8時起床。8時半からBS朝日の『渡辺篤史の建もの探訪』を見ようとしたら、今日も「箱の家159」ではなく肩透かしである。1週間遅れだと聞いていたのだが、家早何友。9時に出社。木村がまとめた「165箱の長屋」の見積用図面をDropbox から引き出して、一通り目を通す。11時前に事務所を出て、角を曲がった所で偶然にも「箱の家159」のクライアントである吉村夫妻に会う。現在は賃貸に出している〈旧吉村邸〉の借手が換わるのでチェックに来たそうだ。『渡辺篤史の建もの探訪』のBS朝日の放映はTV朝日よりも3週遅れなので「箱の家159」は来週日曜日の放映らしい。竹下通りはかなりの賑わいである。原宿駅から山手線で新宿駅へ向かう。11時30分発のあずさ号に乗車。車内で戸田と合流。約4割の乗客。甲府駅に13時前に到着。いつものように南口信玄像前で(株)藤忠の遠山社長夫妻と待ち合わせ「167N邸」の現場へ13時半前に着く。建方が終了し建物全体が養生用ブルーシートに覆われている。机をセッティングし上棟札と神酒2本を並べる。13時半過ぎにN一家が到着。直ちに略式の上棟式。二礼二拍一礼の後、建物四隅を塩、米、神酒で浄め、再び二礼二拍一礼して終了。上棟札は小屋裏の北隅に置くように依頼する。その後、車で県立文学館に移動し、館内のカフェでN夫妻と打ち合わせ。コンセントやLANの端末位置の変更について聴く。家具についても相談を受ける。15時に終了。藤忠の車で甲府駅まで送ってもらい16時前発のあずさに乗車。車内は約半分の乗客。新宿駅17時半着。18時に帰宅。夕食を済ませた後19時に出社。メールチェックした後21時に帰宅。『メルロ=ポンティ』を読みながら早めに就寝。


2020年11月21日(土)

秋晴れで風がやや強く肌寒い一日。8時半出社。10時半に事務所を出て、散歩がてら原宿駅へ向かう。竹下通りはそこそこの人出。券売機で予約しておいた明日の甲府行きの特急乗車券を受け取る。春風社の編集部から『都市科学辞典』の最終ゲラが届いたので、プリントアウトを試みるが依然としてうまくいかない。やむなくスタッフにプリントしてもらい加筆校正して返送。12時から定例の週末所内打ち合わせ。木村とは「166 K邸」の変更図と「165 箱の長屋」の実施図の打ち合わせ。前者は図面をまとめてKさんに確認メールを返送。後者は残すところ天井伏図だけなので、今月末までにまとめてクライアントのOさんに図面一式を送り、確認の上フィードバックすることにする。戸田とは「167 N邸」のベランダ詳細図の打ち合わせ。何点か課題があるので再検討を指示する。13時に解散。16時半に大塚商会のエンジニアが来所し、ファックスコピー機とiMacのネットワークをチェックする。新しいプリントソフトをダウンロードした結果、無事にプリントアウトできるようになる。17時半帰宅。TVニュースでは新型コロナ感染者の増加が止まらず全国で2,500人を超えたので、政府は遂にGOTOトラベル・キャンペーンを感染拡大地域に限って一時中止すると宣言する。僕たち夫婦の関西旅行は滑り込みセーフだったが、確かに人の移動が激しくなれば感染が拡散するのはやむを得ないだろう。『メルロ=ポンティ』を読み続ける。メルロ=ポンティはレヴィ=ストロースやボーヴォワールと同じ1908年生まれで、1950年生まれのサルトルやレイモン・アロンより3歳年下である。だが、早世したのでずっと年長かと思っていた。彼らはフランスがナチスに占領されていた1940年代初期に若年を過ごした世代である。戦後のマルクス主義をめぐってさまざまな確執があったらしい。サルトルとメルロ=ポンティは共同で1945年に『レ・タン・モデルヌ』誌を創刊する。


2020年11月20日(金)

曇り後雨の涼しい一日。『建築雑誌』2012年1月号の連載原稿のゲラが届いたので加筆校正して返送する。先日僕のiMacでmacOSをアップデートしたところ、pdfファイルが印刷できなくなった。しかしスタッフにファイルを転送すると印刷できる。しかも印刷した原稿を校正しスキャンしたpdfファイルは僕のiMacでも印刷できるという不思議な現象である。なぜなのか理由はわからない。Appleサービスセンターに尋ねるしかないだろう。「169菅野邸」第1案を先週金曜日に菅野夫妻にプレゼンテーションしてから1週間が経過したが、その後連絡がないので確認メールを送る。まもなく返信メールが届き、連休明けに連絡するとのこと。世田谷のKさんから「166K邸」アプローチ通路の幅について変更希望メールが届く。高井戸の小澤医師から、先日依頼しておいた「小澤医院」のメンテナンス工事に関する要望書が届いたので、検討する旨の確認メールを返送する。「167N邸」の上棟式は明後日の11月22日(日)だが、審査機関による中間検査は25日(水)に決まる。「164U邸」を掲載した『新建築社住宅特集』2020年12月号が届いたので、界工作舎HPとfacebookにアップする。
https://www.amazon.co.jp/新建築住宅特集2020年12月号-風と光のデザイン/dp/B08LNX5ZFM/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=新建築住宅特集12月号&qid=1605855091&sr=8-1
『和室学』は、第4章「茶の湯と和室」(桐浴邦夫:著)を読み終わり、第5章「唯一無比の畳」(平井ゆか:著)に進む。日本建築史としては興味深いのだが、事実の紹介が中心で、思考を喚起するような問題提起はなく、勉強として読んでいるような感じなので、読み続けることが難しい。『メルロ=ポンティ 可逆性』(鷲田清一:著 講談社 2020)と並行して読むことにしよう。


2020年11月19日(木)

今日もピーカンで暖かい。7時半起床。8時に朝食。部屋でしばらく休み、妻と今日の予定について相談する。10時にチェックアウトしタクシーでJR奈良駅へ。快速急行で京都駅に11時半過ぎに到着。ウィークデーなのに京都駅は雑踏のような人出である。新幹線改札口近くのロッカーに荷物を預けて、タクシーで東寺へ。久しぶりに講堂の仏像群を堪能する。基壇の両端に鎮座する梵天像と帝釈天像の端正な表情は、東大寺法華堂の日光・月光菩薩を連想させる。金堂の建築も迫力がある。五重塔は江戸時代初期の建立だが、日本で最高の高さだそうだ。35年前にクリストファー・アレグザンダーと一緒に訪れたことを思い出す。彼は建物や仏像だけでなく、瓢箪池をゆったりと泳ぐ錦鯉に感心していた.13時半に京都駅に戻り、構内のカフェで抹茶をいただく。15時発ののぞみに乗車し17時15分に東京駅着。八重洲口の百貨店内のレストランで夕食を済ませ、タクシーで19時に帰宅。荷物を片付けた後に20時に出社し、メールチェックと郵便物の整理。21時に帰宅。ウィスキーを呑み直しながらTVニュースを見る。新型コロナの感染者数がさらに増加し全国で2,386人である。政府はGOTOキャンペーンの続行を主張しているが、今週末3連休はどうなるだろうか。僕はじっとしているつもりだが。


2020年11月18日(水)

今日もピーカンで暑いくらいの一日。7時半起床。8時に朝食。9時過ぎにホテルを出てGOTO トラベルのクーポン券を使い、タクシーで法隆寺前に10時前着。10年前に参道で安藤忠雄さんと待ち合わせ、境内を見学したことを思い出す。鈴木博之さんが退職する前の関西研修旅行は最後なので、正統的なコースで開催することを提案し、法隆寺からスタートして薬師寺、唐招提寺、東大寺を辿るコースを提案した。朝が早いせいで、あまり人がいない静かな境内に入り、回廊から五重塔と近藤を静かに眺める。しかし宝物殿に入る11時頃になると修学旅行の子供たちが大挙して到着する。急いで夢殿に回るが追いつかれて一緒に見学することになってしまう。裏道を回って参道に出る。南へ降る途中でタクシーを拾い唐招提寺へ。12時前に着いたので近くのレストランで軽い昼食を済ませた後に境内へ。ここは見学者は少ない。何度見ても絶妙なプロポーションに溜息が漏れる。柱列の下に入ると静けさが染み渡る。しばし本堂内の仏像群に眺め入る。講堂や開山堂など境内を1時間弱散策した後に境内を出て右に向かい、歩いて10分弱で薬師寺へ着く。10年前にも来た時は西塔が工事中だったが、再建が終わったので再来した。しかしながら伽藍配置が散漫な上に、堂内の展示もイマイチなのでガッカリする。再建された西塔の内部彫刻には仰反る。釈迦の誕生、解脱、涅槃、分舎利を描いた4面像が置かれている。食堂の現代壁画は悲惨である。早々に退出し三蔵法師伽藍にも足を伸ばすがこちらもイマイチ。近鉄橿原線の西ノ京駅から近鉄奈良駅へ。16時にホテルに戻る。熱い風呂に浸かり疲れをほぐす。メールチェックしてから暫く休憩。18時半に夕食。冷酒を呑みながら今日一日の感想を妻と歓談。20時半に部屋に戻る。TVのニュースでは、新型コロナウイルスの感染者が、東京では過去最多の 493人、全国では一日の感染発表としてはこれまでで最も多い2,058人に上ると放送している。家早何友。


2020年11月17日(火)

快晴で穏やかな一日。7時起床。8時に一旦出社し日記の書き込みとメールチェックを済ませてから、9時に一旦帰宅して旅行の準備。10時前に妻と家を出て表参道駅から銀座線、丸の内線を乗り継ぎ東京駅に10時半着。11時発ののぞみで京都駅に13時15分着。JR奈良線の急行に乗り換え14時20分に奈良駅に着く。タクシーで登大路に面したホテルにチェックイン。手荷物を預けて、登大路の緩やかな坂を1km東へ歩き東大寺へ向かう。左へ折れて南大門へ。参道は鹿煎餅を持った修学旅行の学生たちと鹿の群れでごった返している。南大門の袂にしばらく佇んで巨大な円柱と貫の空間を見上げる。鈴木博之さんが東大を退職する前年の2009年3月に関西建築旅行で訪れて以来である。同行した石山修武さんが重源について熱っぽく語っていたのを思い出す。北上して鏡池の手前を右に折れて、真紅に紅葉した楓を眺めながら緩やかな坂を登り法華堂へ向かう。左の奥に二月堂が見える。礼堂の修復が終わり、かつての外観を取り戻している。本堂に礼堂が増築された軒の接合部と足元を確認した後に右に折れて礼堂正面に回り込む。礼堂から入館して本堂へ。礼堂側の床几に座り不空羂索観音像に礼拝。かつては観音像の左右に立っていた日光・月光菩薩は見当たらない。聞けば奈良国立美術館へ移されているのだという。二月堂の手前を通り抜けて正面の巨大な鐘楼を見上げてから、左の坂を下りて正面参道に戻る。柵越しに本堂を眺めてから、参道を下り、登大路を夕陽を浴びながら西に下り、16時半過ぎにホテルに戻る。部屋で暫く休んだ後に1階の大浴場に入る。18時半に食堂で会席料理をいただきながら妻と歓談。冷酒をたっぷり呑んで20時半に部屋に戻り、そのままベッドに倒れ込む。夜中2時に目が覚めたので今日一日の出来事を日記にまとめる。


2020年11月16日(月)

快晴でやや暖かい一日。8時半出社。10時に会計事務所 淡青社の長野紘平さんが来所。界工作舎の前期の決算報告を受ける。相変わらず低空飛行だが、今期は何とか回復するだろう。その後は建築設計という仕事について四方山話。拙著の『進化する箱』(TOTO出版 2015)を贈呈する。昨日まとめた『建築雑誌』2012年1月号の連載原稿を読み直して若干の加筆校正を行い、図版を添えて編集部に送信する。10時半に戸田から「167N邸」の現場に到着した旨の報告メールが届く。建方の経過写真が届く。鈴木工務店から「165箱の長屋」の地盤調査の日時に関する報告メールが届く。木村と相談して立ち合いの日時を返信し、Oさんと田中会計士に報告メールを送る。前田工学賞の論文審査を開始する。研究助成に比べると応募書類をじっくりと読み込まねばならないのが大変である。20時半に戸田が甲府の「167N邸」現場から帰社したので監理報告を受ける。建方は大禍なく進み、屋根のLVL梁取付まで完了したとのこと。電気工事業者とも打ち合わせをしたようだ。建方の写真を添えてN夫妻に現場監理の報告メールを送る。スタッフに明日から3日間事務所を留守にする旨を伝えて21時半帰宅。IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が来日し、来年に延期されたオリンピックを観客入りで実施するというメッセージを発表したそうだ。果たして開催が可能かどうか、大勢は疑問に感じている。『和室学』は、第3章「近世和室の豊饒な世界」(小沢朝江:著)を読み終わり、第4章「茶の湯と和室」(桐浴邦夫:著)に進む。近世になると書院造りが普及し、畳が敷き詰められるようになる。社会が安定し、和室の形式化と規格化が進行する。


2020年11月15日(日)

快晴で穏やかな一日。8時起床。BS朝日の「渡辺篤史の建物探訪」で放映される「箱の家159」は来週になったようだ。10時半に出社。『建築雑誌』2012年1月号の連載原稿「なぜ職住近接住宅は普及しないのか。」に集中し、14時までに一気にまとめる。結論は、仕事場として使われている都市住宅の現状に合わせて、専用住宅だけを対象にした住宅ローン制度の改定と都市計画法の用途地域制の見直しに落ち着く。図版は僕が育った山口県柳井市の町屋とする。巻頭の座談会には、現在のアトリエと自邸を収めた「箱の家112」のアクソメ図を掲載しよう。明日、読み直して編集部に送る予定。アメリカ大統領選挙の開票がほぼ終わり、バイデンの勝利が確定したにもかかわらず、トランプは不正選挙だと主張して依然として結果を認めようとしない。YouTubeでは、トランプが逆転勝利するわずかな可能性について、あれこれと解説をしている。TVやネットのニュースは、新型コロナ禍の第3波に関するニュースで溢れている。『和室学』は、第3章「近世和室の豊饒な世界」(小沢朝江:著)を読み続ける。


2020年11月14日(土)

秋晴れの清々しい一日。8時半出社。9時半前に事務所を出て、表参道から渋谷で井の頭線ヘ、明大前で京王線に乗り換え10時15分に分倍河原駅に着く。改札口で木村と合流し歩いてO邸に約束の10時半前に到着。すでに田中会計士が着いているので、直ちにOさん父子に「165 箱の長屋」一期工事の図面を示しながら設計の概要を説明。さらに見積依頼する予定の鈴木工務店の会社案内を渡し界工作舎との関係を紹介する。Oさんが鈴木社長と同じ旧武蔵工業大学の卒業生であることを聞いて奇遇にびっくり。現場説明に際にはぜひ鈴木社長を紹介することを約束する。引き続き設計監理業務委託契約書と重要事項説明書に捺印して設計契約締結は完了。11時半にお暇し、隣地の敷地を調査する。北側の武蔵野線法面との敷地境界にはしっかりしたRCの柵が設置されているので、改めて柵をつくる必要はないことを確認する。12時半に帰社。昼食後13時半から週末定例の所内打ち合わせ。木村とは「165 箱の長屋」の今後の実施設計作業のスケジュールについて意見交換。11月中に実施図面をO父子に送りフィードバックを受けた上で、12月12日(土)に現場説明を行うスケジュールとする。戸田とは来週11月16日(月)の「167 N邸」建方の現場監理と11月22日(日)の上棟式のスケジュールを確認。「169菅野邸」は菅野夫妻のフィードバック待ちとする。14時に解散。鈴木工務店に「165 箱の長屋」設計契約締結の完了を報告し、地盤調査の手配と現場説明スケジュールの確認メールを送信する。田中会計士には「165 箱の長屋」の設計契約書のスキャンデータと「169菅野邸」のプレゼンテーション図面と模型写真をメール送信する。さらに、佐々木構造計画には「169菅野邸」のプレゼンテーション図面と模型写真を送信する。『建築雑誌』連載原稿を少々。明日にはまとまるだろう。Facebookに「169菅野邸」の模型写真をアップすると反応が多く、友人の建築家があれこれ書き込んできたので短い返答コメントを書き込む。16時帰宅。熱い風呂に入り汗を流した後しばらくの間休憩。18時過ぎに妻と家を出て、久しぶりに渋谷で夕食。週末の渋谷はかなりの雑踏である。タクシーで20時に帰宅。ウィスキーを呑み直しながら、今週の仕事を反芻する。ベッドで『和室学』を読みながら早めに就寝。


2020年11月13日(金)

快晴で肌寒い一日。8時半出社。『建築雑誌』2012年1月号の連載原稿を少しずつ書き続ける。先は見えたので、あとはどう結論づけるかだが、頭にある仮説的結論にはイマイチ自信が持てない。ともかく週末には何とか書き終えることができるだろう。戸田と「167N邸」のサッシ取付詳細図について打ち合わせ。徐々に複雑な納まりになっているので、フィードバックが必要な気がする。今週中にまとめて藤忠に送る予定。14時前に松江から菅野夫妻が来所。挨拶ののち直ちに「169菅野邸」第1案のプレゼンテーションを開始する。模型と図面を見ながら第1案について説明し、何点か質問を受ける。水平に近い屋根防水をステンレスシームレス構法とすること、室内の床仕上をフレキシブルボード張かコストが許せば石張仕上とすること、1階ガレージに展示パネルを設置すること、西面開口の全面に西陽制御の外付プラインドを設置すること、南面ベランダのスクリーンを日射制御と通風を兼ねてFRPグレーチングとすること、ベランダの床は耐候性を顧慮して人工木材のフローリングとすること、防犯カメラ・照明・空調を外部からの遠隔制御とすることなどについて回答する。デザインの基本方針はほぼ受け入れてもらえたようで胸を撫で下ろす。とはいえ工事金額はもう少し抑えて欲しい印象である。模型、図面、カタログを松江に持ち帰り、精査した上で質問メールを受けることを約して16時に終了。プレゼンテーションが終わり一気に緊張感が取れたせいか、急に眠気に襲われ夕方までボーッと過ごす。ここ数日間は毎夜「169菅野邸」の夢を見て、夜中に何度も目が覚めていたが、今夜はぐっすり眠れそうだ。YouTubeではアメリカ大統領選挙について様々なコメント情報が飛び交っている。民主党による開票の不正に関する投稿が大部分で、アメリカだけでなく、日本人のトランプ・ファンによるコメントが多いのが意外である。僕にはまったく理解できないが、彼らはアメリカと日本のマスコミが、民主党やバイデンとグルになって不正選挙に関与しているという主張で共通している。一方で、共和党やトランプによる不正に関する投稿がほとんどないのが不思議である。まさか判官贔屓ではあるまい。木村と打ち合わせ、明日の「165箱の長屋」の設計管理契約書類一式と、分倍河原駅での待ち合わせ時刻を確認して21時半に帰宅。新型コロナウイルスの今日の新たな感染者は、全国1,704人で1,660人だった昨日に続き2日連続で過去最多を更新した。


2020年11月12日(木)

曇り後晴れの肌寒い一日。世田谷のKさんから「166K邸」の残存物処理の見積について小川建設とのやり取りの報告メールが届く。既存建物の解体工事は今月下旬に始めることになる。前田工学財団事務局から前田工学賞の一次審査が12月8日に確定した旨のメールが届く。研究助成のコメントと評価はすでに終えているが前田工学賞の論文評価はまだである。今月末までにまとめる必要がある。13時に木村と一緒に事務所を出て、銀座線、井の頭線を乗り継ぎ高井戸駅近くの小澤整医院へ。14時から「141小澤邸」のクライアントである小澤さんが開業している〈小澤整形外科医院〉のメンテナンス工事の相談を受ける。山菱工務店の深草さんにも同席してもらう。RC造3階建の建物で17年前に購入した事務所ビルを医院にコンバージョンしたそうだ。それ以来、設備システムは何度かメンテナンスしたらしいが、内装や家具は当初のままなので全面的に改装したいとのこと。小澤さんの案内でメンテナンス工事の条件について説明を受けながら1階から3階までを見て回る。診療を継続しながら休日に工事を行いたいという条件なので、作業工程がかなり難しそうだ。既存図面があるので、小澤さんに改装の条件を詳細に書き込んでもらうことを依頼して15時過ぎに終了。16時に帰社。『建築雑誌』2012年1月号の連載原稿を続行するが、なかなか論が展開しない。甲府の藤忠から「167N邸」のチェック後の修正プレカット図一式が届いたので承認して返送する。来週月曜日から建方が始まるので、開始時に戸田に立ち会うように指示する。松江の菅野紘夫妻に、明日のプレゼンテーションについてリマインドメールを送る。「KENCHUKU25号」がネットに発表されたので界工作舎HPとfacebookに掲載する。
https://kenchiku.co.jp/online/kenchiku_shibun/number_no25.html?fbclid=IwAR2H2qI6XIy8w3qVXIUyZBy-zDenrxlaAzdrpIGvSzBGjCha4whf1W1j9NE
今日の新型コロナウイルス感染者は、東京393人、神奈川147人、大阪231人、北海道236人、全国で1611人となり、これまで最多だった今年8月7日の1,607人を超える。家早何友。


2020年11月11日(水)

快晴で昨日よりもさらに寒い一日。8時半出社。『建築雑誌』2012年1月号の連載原稿を書き始める。3枚まで書いたが、その先の論理展開に迷ったので一旦休止。〈柳井の町屋〉の図版を探して戸田にスキャンを頼む。「169菅野邸」の設計要旨、図面、プレゼンテーション模型の最終チェック。午後、鈴木工務店から会社案内が届く。木村が「165箱の長屋」の電気と水道のインフラの調査に東京電力と府中市水道局へ事前打ち合わせに出かける、夕方に帰社したので、打ち合わせ結果の報告を受け、各住戸への配線配管システムについて検討する。前田工学財団事務局から、理事会のスケジュール調整メールが届いたので、スケジュール表を確認した上で返信する。17時から『建築雑誌』編集委員会のzoom会議。2021年4月号の著作権特集の議論で1時間余を費やす。わずかに私見を述べて、議論がなかなか盛り上がらないことを確認して18時半に退席。今日のCOVID-19感染者は、昨日よりもさらに増えて、東京317人、大阪256人、北海道197人、全国で1,500人を越えた。先は見えないが、ニュースには欧米のような危機感や悲壮感はない。『和室学』は、第2章「和室の起源と性格」(藤田盟児:著)を読み終わり、第3章「近世和室の豊饒な世界」(小沢朝江:著)に進む。第2章は室町時代の書院造の成立についての説明で、久しぶりに日本建築史の勉強である。貴族社会から武士社会への転換に並行した、豪奢な〈バサラ〉の書院から安土桃山時代の茶室の〈ワビサビ〉への転換の経緯が興味深い。


2020年11月10日(火)

快晴で肌寒い一日。秋も深まってきた。昨日で自宅のメンテナンス工事が完了した。塗料の臭いが微かに残っているのが少し気になるが、孫が来るので猫のケージを居間に移動する。8時半出社。事務所内は2階の床暖房の天井輻射で暖かいが、土間スラブの蓄冷のために机の下の足元は寒い。やむなく足元暖房用に電気ヒーターにスイッチを入れる。戸田が作成している「169菅野邸」の模型を最終チェックする。外構の植栽に少し手を加えれば今日中には完成するだろう。平立断面図を見ながら設計要旨に手を加える。スケジュールは少し安全を見て計画する。予算の概算はリアルな金額とする。『建築雑誌』の連載原稿スケッチを少々。内容はほぼ固まっているのだが、なかなか書き始める気にならない。15時過ぎのネットニュースで、今日のCOVID-19感染者は、東京が293人、大阪が226人、北海道が166人で、全国で1,200人を越えたことを報じている。寒くなっていよいよ第三波の襲来だろうか。さらに10月の自殺者は全国で2,153人、昨年比で4カ月連続して増加している。これもCOVID-19の副作用だろう。家早何友、来週の奈良旅行が思いやられる。アメリカ大統領選でトランプがジタバタして往生際が悪いことも気分が悪い。あまりいいニュースがないので気分が滅入り、原稿に向かう気が失せてしまう。明日には気を取り直して何とか取り組もう。『和室学』は、第1章「和室とは何か」(服部岑生:著)を読み終わり、第2章「和室の起源と性格」(藤田盟児:著)に進む。第1章の和室論は、ほとんど専用住居の検討だけで、町屋や職住近接住居についてはまったく論じられていない。ここにも和室学のイデオロギー性が垣間見える。


2020年11月09日(月)

晴れでやや風が強い寒い一日。「141小澤邸」のクライアントである小澤さんからメールが届き、高井戸で開業している小澤医院のメンテナンス工事を依頼される。小川建設にメールを転送し、現場調査への同行を依頼するが、住宅以外のメンテナンス工事は経験がないので難しいだそうだ。やむなく「箱の家」の工事経験が多い三鷹市の山菱工務店に打診したところ、快く引き受けてくれるとのこと。近いうちに現場調査を行うことを約し、小澤さんにも連絡する。jt編集部から12月号の座談会のゲラ原稿が届いたので一部チェックバック。『建築雑誌』2021年1月号の連載原稿のスケッチ続行。「なぜ職住近接住宅は普及しないのか」について、ストーリーの概略が見えてくる。佐々木構造計画から「169菅野邸」の構造システムに関するチェックバックが届く。基本的なシステムに変更はないので、現案のままで進めることとし、詳細は実施設計段階で検討することとする。「167 N邸」の基礎RC打が完了したので、再来週の建方工事までしっかり養生するように依頼する。土台の仕様についても指示する。16時半に鈴木工務店の志村芳彦さんと田中博さんが来所。見積を依頼する予定の「165箱の長屋」について初めての打ち合わせ。基本図を見ながら概要を説明し、何点か質問を受ける。電気と水道の幹線引込に課題がありそうなので、界工作舎で調査することを確認する。来週の設計契約後に地盤調査を実施することを依頼して18時終了。『和室学』の第1章「和室とは何か」(服部岑生:著)を読み続ける。綿密な調査に基づく記述に学ぶところは多いが、焦点がややボケている印象である。というよりも和室という概念が、そもそも曖昧なのである。


2020年11月08日(日)

曇り後晴れのやや暖かい一日。朝早くネットニュースで、アメリカ大統領選挙でバイデンがペンシルバニア州を制し最終的に選挙人の半数以上を獲得したことを知る。しかしながらトランプはこの集票結果を認めないため、一件落着とはなりそうにない。10時過ぎに出社し『実況 | 比較西洋建築史講義』をざっと読み直して読後評をまとめる。「建築史は比較によって事後的に構築されるものである」という中谷さんの主張は共有できる。とはいえ文献調査だけによる〈事後的構築〉であれば、構築の幅はかなり自由になる。実際、フィクション紛いの荒唐無稽な〈事後的構築〉は巷の至る所に散乱している。文献調査だけの建築史も例外ではない。建築史の場合は実物の建築が残っており、実物との照合が可能な場合は〈事後的構築〉は実証によって限定され、結果として設計者の意図をかなりリアルに読み取ることが可能になる。本書はその主張を実際に西洋建築史に適用して見せたものである。中谷さんが自称する〈歴史工学〉の真骨頂だろう。13時に帰宅し暑い風呂に入る。その後は仮眠とiPadのネットサーフィン。ジョー・バイデンのニュースが続々と入りYouTubeでタマラ・ハリス副大統領とバイデンの勝利演説を見る。しかしトランプは敗者宣言を出さない。家早何友。16時に再出社し『建築雑誌』連載原稿のスケッチを再開するが集中できない。夜は読書。松村秀一さんに『和室学』のお礼のメールを送った後「はじめに」(松村秀一:著)から読み始める。


2020年11月07日(土)

曇りで肌寒い一日。9時から2階自邸の床の清掃と塗装の仕上工程が始まり、昼過ぎまで立ち入れなくなる。玄関たたきの塗装も今日行うので終了は16時半過ぎになるとのこと。11時半から週末の定例打ち合わせ。木村とは「165箱の長屋」の実施設計打ち合わせ。建築図は建具表まで進んだので、次の作業は外構図と設備図である、賃貸住宅なので安全性を考慮して台所にガスは用いず、給湯と空調もすべて電化する予定である。住戸の電気と水道メーターの位置を道路近くに集中させ、各住戸への配線・配管経路を東京電力、水道局等打ち合わせるように指示する。空調には「箱の家」の標準仕様であるエアアクア・システムを採用し、空調機1台で一室空間住居の1、2階全体を空調するので、空調機の設置位置と還流ダクトの立ち上げ位置について打ち合わせる。戸田とは「169管野邸」の模型製作の進行状況を観察し、来週初めまでに完成させることを確認する。午後もしばらく仕事を続け14時過ぎに解散。アメリカ大統領選挙はバイデンの勝利は明らかになったが、開票作業が続き確定したニュースは出ない。しかしトランプはインタビューには一切応えず、一方的に郵便投票はすべてインチキだと主張している。別の番組で国際政治学者の大統領選挙に関するコメント番組を見たが、この混乱した政治状況は、グローバル経済、国家政治、民主主義の3条件が相互に対立する政治的トリレンマの表れに他ならないと指摘しており、あながちトランプ一人の人格に帰すことはできない政治的な捩れ現象のようだ。例えば中国は民主主義を捨てて前2条件を選び、日本は明確な国家性を表面に出さないで曖昧にやり過ごしている訳である。17時にようやくメンテナンス工事が終わり自宅にもどる。夜は読書。『実況 | 比較西洋建築史講義』は、第11回「もどれない世界 ルネサンスのなかのゴシック 自然誌×操作史」、第12回「モダン建築史ゲーム 浮遊する建築様式の後で 普遍性×固有性」、「あとがき」を読み終えて読了。「歴史は比較である」という中谷さんの主張が頭に残る。ルネサンス(古代の再生)の運動が〈様式〉の概念を生み出し、様式によって多様な世界の選択的表現が可能になるとともに、様式の操作性によって建築家が表現から疎外されるようになったことが近代を生み出したというのが中谷さんの結論である。しかし一方で中谷さんは第12回の末尾の文献紹介で、ジョージ・クブラーの『時のかたち』によって、われわれは様式概念の呪縛から解放され、比較の視点を持てるようになったともいっている。ということは近代は依然として様式概念に囚われていたということだろうか。実感としては解せない主張に思える。本書の続編で、すでに3年前の2017年に出ている『実況|近代建築史講義』(中谷礼仁:著 LIXIL出版 2017)は、出版直後の2017年10月に一気に読み通したが、そんな重大なことが主張されていたことは記憶にない。まさかクブラーの翻訳本が、その後の2018年に出たからでもあるまい。中谷さんご本人が翻訳者なのだから。


2020年11月06日(金)

曇り一時晴れの肌寒い一日。昨夜に引き続きjtの対談原稿の校正を続行。jtの元原稿が僕の発言をかなり曲解しているので、大幅に書き直すことにする。地震や水害とは異なり、COVID-19と住宅デザインの関係は、社会的アクティビティと建築空間との関係であり、つまるところは広い意味で機能的な関係である。この問題については、すでに近代建築批判のなかで機能主義が一種のイデオロギーであることが明らかにされているし『建築雑誌』今年5月号の特集「社会のマテリアライゼーションー建築の社会的構築力」において突っ込んで議論した。要するにCOVID-19によって引き起こされた社会的なアクティビティから建築空間を導き出すことはできないということである。そうではなく逆に、建築や都市のデザインを通してCOVID-19の克服を提案すべきなのである。あれこれ考えを巡らせて夕方までに校正を終えてjt編集部に返送する。引き続きjt12月号の「箱の家164」の掲載誌面のゲラ原稿が届いたので、一部校正して返送する。「167N邸」の建方、上棟式、中間検査のスケジュールについて戸田と打ち合わせ、建方開始と中間検査の立ち会いは戸田に任せ、僕は上棟式にだけ参加することにする。会計事務所と前年度の決算について電話で打ち合わせ。再来週に電子申告を行うとのこと。東大の松村秀一さんから『和室学』(松村秀一+服部岑生:著 平凡社 2020)が届く。6年前に始まった和室を無形文化財に申請するための研究会のまとめである。最初のうちは僕も参加していたが、1年間だけ参加して退会した。その後も松村さんは活動を広げて本書にまとめたようだ。目次を見ると興味深いトピックも散見されるので読んでみよう。アメリカ大統領選挙はバイデンの勝利がほぼ確定したが、トランプは法廷闘争に切り替えて徹底抗戦の構えなので、決着はまだ先になりそうだ。日本の株価は1991年のバブル崩壊後の最高値を更新したようだが、その要因は、民主党のバイデン大統領に対し、上院選挙では共和党が過半数を制したので、議会の捻れ状態が、バイデン大統領が約束した経済規制の歯止めになることが明らかになったからだという。『実況 | 比較西洋建築史講義』は、第9回「建築の奇跡 ロマネスク×ゴシック」、第10回「ゴシック建築を支えたもの 僻地×都市」を読み終えて、第11回「もどれない世界 ルネサンスのなかのゴシック 自然誌×操作史」に進む。ロマネスクからゴシックへの展開は、ヨーロッパにおける都市化と連動しているという指摘には眼から鱗が落ちる。


2020年11月05日(木)

晴れで清々しい一日。甲府のNさんから「167N邸」」の上棟式の仕様と日程に関するメールが届く。地鎮祭と同じくN一家、藤忠2人、界工作舎2人のメンバーによる略式の上棟式になる。準備する塩、米、神酒と容器についてNさんに依頼メールを返信した後に、ネットで当日の中央線特急の乗車券を予約購入する。思い立って前田記念財団の研究助成の一次審査を再開する。応募書類を読み込み、これまでの応募経緯と採択の有無を確認しながら評価していく。毎年応募しながら、研究テーマがコロコロ変わる研究者については、当然ながら評価は低くなる。しかし同じようなテーマで何度も応募している場合は、研究の進展があるかどうかを見極める必要がある。テーマは工学系、計画形、歴史系と多種多様なので、必然的に相対評価にならざるを得ない。夕方までかけて33点の評価を終える。夕方にjt編集部から先日の川島範久さんとの対談のゲラ原稿が届いたので校正を始める。11月11日(水)に開催予定の『建築雑誌』編集委員会が、ようやく学会会議室での対面会議に戻るらしい。久しぶりに編集委員と会って話したい気持ちもあるが、僕としては編集作業への本格的な参画は今年の上半期までと決めているので、とりあえずネット参加にとどめることにする。アメリカ大統領選挙はジョー・バイデン優勢で進んでいるが、ドナルド・トランプはあの手この手で開票に対する妨害工作を講じている。なりふりかまわないその姿を見ていると、心底、嫌気が差してくる。『実況 | 比較西洋建築史講義』は、第8回「修道院の誕生 古代末期×ロマネスク」を読み終えて、第9回「建築の奇跡 ロマネスク×ゴシック」に進む。南フランスの〈ル・トロネ修道院〉の成り立ちや、修道会をつなぐ〈サンティアゴ・デ・コンポステーラ〉への巡礼路が紹介されている。


2020年11月04日(水)

晴れで清々しい一日。8時半出社。先週から始まった2階自邸のメンテナンス工事が、今日から本格的に再開している。床の清掃と再塗装が中心なので、猫のケージを個室に移動し、リビングの荷物を片付ける。工事は夕方まで続く。帰宅すると塗料の臭いが充満しているので、窓をすべて開放し換気扇をかけ続けたところ気温が一気に下がる。しかし床暖房があるので寒さはそれほど感じないで過ごすことができる。分倍河原の「165箱の長屋」の設計契約を締結することになったので、久しぶりに鈴木工務店の鈴木亨社長に電話連絡する。設計の概要を説明し、地盤調査のスケジュールについて相談するため、来週初めに界工作舎で打ち合わせを持つことになる。小川建設から「166 K邸」の解体工事の条件について話し合うため、現地調査に立ち会うよう再度の依頼メールが届いたので、木村に出席するように指示する。アメリカ大統領選挙の開票が始まり、刻々と変化する情勢をネットニュースでフォローし続ける。ドナルド・トランプが予想以上に健闘しているようだが、個人的には、品位のない大統領には早々に退陣してもらいたいので、どうしてもジョー・バイデンの肩を持ちたくなる。開票の趨勢は予断を許さない状況だが、アメリカ国民の常識的判断を期待したい。『実況 | 比較西洋建築史講義』は、第6回「ローマ帝国の誕生 柱梁×アーチ」、第7回「ローマ都市と世界 集中式×バシリカ式」を読み終えて、第8回「修道院の誕生 古代末期×ロマネスク」に進む。『グラディエーター』(リドリー・スコット:監督 2000)を使ってローマ時代の建築について論じ、『薔薇の名前』(ウンベルト・エーコ:原作 ジャン・ジャック・アノー:監督 1986)を使って中世の建築について論じるユニークな講義に感心する。


2020年11月03日(火)

早朝は小雨で曇り後晴れの肌寒い一日。今日は祝日なので9時半に出社。昨夜遅く『渡辺篤史の建もの探訪』のディレクター湯沢信夫さんからメールが届く。「箱の家159」の放送日、11/14(土)、15日(日)が近づいてきたので、番組のウェブサイトに掲載する<建築家のひとこと>の原稿を依頼される。400字程度の短文なので急いでまとめて返信する。東京での放送日は、TV朝日が 11月14日(土)の4:30amから、BS朝日 が11月15日(日)の8:30amからである。
https://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/?fbclid=IwAR1mVdr9TS9sJdFbTqYeEk5WNY4hNO5GuXb53jTN21e7xXVpL_cAx7YXFBw
田中会計士から「165箱の長屋」の設計監理契約を11月半ばに締結したい旨のメールが届く。ようやく銀行融資や経営計画の目処が立ったとのこと。設計業務委託契約書を読み直し、スケジュールを若干修正した叩き台を返信する。設計契約を締結した後、できるだけ早く地盤調査を行いたい旨を伝える。小川建設の社長から「166K邸」の解体工事の条件について、建主のKさん、小川建設。解体業者、植木屋による現場ミーティングのメールが届く。来週月曜日だが、当然ながら界工作舎も立ち会う必要があるだろう。『実況 | 比較西洋建築史講義』は第6回「ローマ帝国の誕生 柱梁×アーチ」を読み続ける。建築の形を決定するオーダーや黄金比、ル・コルビュジエのモデュロールなどを復習する。


2020年11月02日(月)

曇り後雨の肌寒い一日。8時半出社。先週、建築学会から査読依頼があった論文について、いろいろ考えあぐねた結果、査読を辞退する旨を返信する。査読者に指名されたたことは光栄に思うが、テーマがやや専門外に思えるので、的外れの評価の可能性があり、そうなると失礼だと考えたからである。甲府の藤忠から「167 N邸」の基礎の配筋写真と土台の木材仕様データが届く。土台の集成材の防腐・防蟻処理をしっかりするように依頼する旨を返信する。世田谷のKさんから「166 K邸」の解体工事に関する相談メールが届く。既存住宅の片付けは今週中に終わりそうだが、家電や家具の大きなゴミが残っており、片付け切れないようである。解体業者に依頼せざるを得ないが、追加費用が心配なので、小川建設に相談メールを送ったようだ。17時にインテリアデザイナーの飯島直樹さんが、赤と白の2本のイタリア・ワインを持参して来所される。妻が用意したつまみで赤ワインを呑みながら歓談する。ワインの話題から始まり、共同で審査員を担当しているサイディング・コンペについて意見交換する。二人とも3年前に亡くなった杉本貴志さんに誘われて引き受けた仕事である。今後どうするかについて訊かれたが、僕の考えでは、どんなコンペでも評価基準が確立され、応募者が審査基準を分かった上で応募するようになることが重要であることを指摘する。昨年、強権的に解散させられた日本建築家士会作品賞の審査委員会は、同じ審査員メンバーで20年近く続き、一種の伝統になっていた。応募者もそれを理解して応募していたので、暗黙の評価基準が共用された充実した実作コンペだった。しかし士会会長の三井所清典氏は、それを一種のマンネリ化とみなし、審査体制を再編して2020年から新しい体制で仕切り直しを強行した。審査委員会に対しては、その間の経緯についての説明はまったくない、非民主的で強権的な行為には驚かされた。新しくつくり直された応募要項は、細かな部門に分けられ複雑過ぎるので、応募は難しいように思われた。例年、審査結果が発表される11月になっても結果が発表されないのは、おそらく応募者が集まらなかったのではないかと推測する。COVID-19のせいもあるかもしれないが、それ以上に、伝統になっていたコンペ体制を改悪したことが大きな要因であることは間違いないと思う。その経験について飯島さんに話し、サイディング・コンペも伝統化するまで続けることが重要であることを強調する。飯島さんは、以前、界工作舎の近所に事務所を置いていたので、行きつけのイタ飯屋が同じであることを知ってびっくり。その他、10年前につくった作品集のことや、1990年代に若い建築家が一斉にインテリアデザインを始めたこと。素材としての石のことについて話を聴く。飯島さんは来年、倉俣史郎の展覧会の開催を予定しているという話題になり、青山や外苑にあった倉俣デザインのバーや店舗の話になる。僕が印象深く記憶しているのは、1991年の何回目かの「建築デザイン国際会議」の際に、ドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースを招聘し、東京芸大の伊藤俊治さんと二人で、品川の寿司屋で行ったインタビューのことである(「建築・映像/ランドスケープを探して:ヴェンダースと共に」『at』誌1991年12月号 所収)。インタビューの場所は、品川のビル内にある寿司屋で、倉俣史郎がデザインした最後の仕事だと聞いた。ベルリンの壁の崩壊(1989)直後だったので、インタビューの内容は『ベルリン天使の詩』(1987)や、公開されたばかりの『夢の涯までも』(1991)、さらにヴェンダースが取り組んでいるベルリンの都市計画についてだった。ヴェンダースは『ベルリン天使の詩』の主演女優ソルヴェイグ・ドマルタンを同伴していたが、それ以上に強く記憶に残っているのは、天井に2本の電線ワイヤーを張り、可動式の照明器具を載せていたが、器具と電線の接触面が絶えずショートしてジリジリという音を発していたことである。そのエピソードを聞いて飯島さんは痛く興味を持ったようだ。話は尽きなかったが、赤ワインが回ってきたので、次回は杉本さんの店〈春秋〉で呑みましょうと約し7時半に解散。『実況 | 比較西洋建築史講義』は第3回「動く大地の建築素材 石×土×木」、第4回「ギリシア建築と建築教育 ウィトルウィウス×現代建築学」、第5回「黄金のモデュール ギリシア比例論×ル・コルビュジエ」を読み終え、COLUMN-2「オーディオコメンタリーを活用すべし 映画で見る建築史」を経て、第6回「ローマ帝国の誕生 柱梁×アーチ」に進む。


2020年11月01日(日)

晴れのち曇りの肌寒い一日。昨日は思い立って午後に熱い風呂に入った後に『実況 | 比較西洋建築史講義』を集中的に読み始めたため、15時から始まる住宅遺産「上原通りの家」オンライントークがあることをすっかり忘れて見逃してしまった。気づいたのは今朝になってからである。残念至極。スケジュール表に書き込んだにもかかわらず忘れてしまうとは、我ながら耄碌したものである。家早何友。昨夜遅く熊本の保田さんから「163保田邸」の10月の温湿度データが届く。秋になって朝夕と昼間の外気温の上下が激しいようだが、空調機を稼働しなくても基礎RCとアクアレイヤーの蓄熱で室内気候は安定している。それでもアクアレイヤー水温は徐々に下がり22度になっているので、そろそろ暖房モードを開始してはどうかというアドバイスメールを送る。界工作舎では10月半ばにアクアレイヤーを暖房モードに転換しアクアレイヤー水温を30度に設定している。10時に出社し前田記念財団の研究助成の審査を少々。『建築雑誌』の連載原稿のスケッチも少々。dropboxから「165箱の長屋」の建具表を引き出して目を通し特に問題はないことを確認する。甲府のNさんと「167N邸」の上棟式を実施するかどうかについてメールのやり取り。山梨県では上棟式の慣習があまりないと聞いたそうだ。「箱の家」では、儀式としての上棟式というよりは、職人への労いとして直会をすることを伝えて判断を仰ぐ。『実況 | 比較西洋建築史講義』は第1回「世界建築史ゲーム 2つ以上の事物のあいだで」からCOLUMN-1「世界建築史ゲームの結果発表」を経て、第2回「伊東忠太の世界旅行 パルテノン×法隆寺」を読み終え、第3回「動く大地の建築素材 石×土×木」へ進む。第1回では。歴史とは既に存在するものではなく、人間によって構築されるものであるという主張から説き起こし、第2回では、伊東忠太が世界旅行を通じて日本建築史をつくり上げた経緯が紹介されている。ゆえに建築史は明らかに近代の産物である。中谷さんは、歴史を当たり前の存在だと考えている学生たちの既成概念に揺さぶりをかけ、脱構築しようとしている。


▲TOP

Copyright (C) 2003 KAZUHIKO NAMBA+KAI WORKSHOP. All Rights Reserved.
No portion of this web site may be reproduced or duplicated without the express written permission.
This web site is written in Japanese only.