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箱の家 PROJECT 青本往来記
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コンパクト箱の家

2018年06月21日(木)

7時起床。雨のち曇りで昨日より気温の高い一日。8時半出社。『ダーウィン・エコノミー』の読後評をまとめる。リバタリアン(自由至上主義者)ほどではないが、根っからのボトムアップ主義者である僕としては、トップダウン的視点の重要性を見直す批評的な内容だった。さらにボトムアップな個別的提案が具体的であるのに対し、トップダウンな提案は間接的でなければならないことを確認できたことも大きな収穫である。都市計画や都市デザインの場合、トップダウン的な提案の多くは具体的なデザインになるので、ボトムアップな提案にまで踏み込んでしまいがちである。抽象的でダイアグラム的な提案では理解しにくいし説得力を持たないからである。モダニズムの都市計画は総じてそうだった。その典型がル・コルビュジエの一連の都市デザインである。それが官僚的な都市計画に引き継がれ、ジェイン・ジェイコブスのようなボトムアップ主義者によって拒否されたのである。したがって具体的な提案に見えながらも、さまざまな解釈が可能な、間接的な提案に止めるにはどのような表現すればいいかというのがトップダウン提案の最大の課題だろう。10時過ぎにはりゅうウッドスタジオの芳賀沼整さんが来所。少し遅れて滑田崇志さんとフリックスタジオの山道雄太さんが到着。『縦ログ構法の世界』の編集の最終の打ち合わせ。表紙のデザインと冒頭の数枚の写真について、表紙はできるだけ単純明快に、写真は縦ログ構法のヴァリエーションを見せるようにしたい旨の私見を述べる。それらの方針が決まり次第、7月中に印刷に回し、お盆前には出版の予定というスケジュールを確認して11時半終了。引き続き木造仮設住宅を沖永良部島へ解体移築する計画について図面を見ながら意見交換。南北配置による朝夕の日射対策とダブルスキン屋根の耐風圧強度について十分に注意するように私見を述べる。正午に芳賀沼さん滑田さんと外に出て昼食を食べた後13時前に帰社。13時に『木造仮設住宅群』の出版契約手続きを依頼している吉川彰布さんが、まもなくローマ大学のLeone Spita教授とローマ大学国際交流係のAttilia De Roseさんが来所。イタリア語訳の出版スケジュールについて確認した後に、出版契約書にサイン。来年9月にローマと日本の両方で、震災復興に関するローマ大と芝浦工大との共同ワークショップを開催するので、そのための教科書にしたいそうだ。Spitaさんから中央ロシアの建築に関する本をもらい14時半に解散。打ち合わせが続き疲れが噴き出したので、その後は夕方まで休憩。「159吉村邸」の屋上緑化の積載荷重の検討を吉村さんに送信。明日申請したいというので書類を作成し直接木村が届けに行く。池辺陽トークセッションのスライド編集を少々続行。夜は読書。21時半帰宅。『フラジャイル・コンセプト』を読み続けるが短文が多くその都度テーマが変わるので頭の切り替えが大変で、読書は細切れになる。夜半就寝。


2018年06月20日(水)

7時起床。雨で昨日とは打って変わり涼しい一日。8時半出社。東京都庁から「木造住宅密集地域改善のため、都有地を活用した魅力的な移転先の整備に係るマーケット・サウンディング調査実施」について確認の電話。現地見学への申し込みを打診されるが、とりあえず説明会を聴いてからと答える。大洗の石崎さんから電話。「158石邸」の建設を依頼した工務店が倒産したとのこと。竣工してまだ半年しか経っていないので今後のメンテナンスについてアドバイスし別の工務店を手配する。最近は工務店にとって追風の時節だが家早南友である。「163保田邸」構造計画について所内の打ち合わせ。接合金物メーカーへの質問に対する回答メールが届いたので、基本計画について佐々木構造計画へ問い合わせメールを送る。引き続き戸田がまとめた構造伏図のチェックバック。「159吉村邸」が完了検査をパスしたので木村が検査済証を受け取りに行く。『フラジャイル・コンセプト』で青木が自分の設計体験について述べた第4部「日常の風景」を読んでいて思いついたことがある。『〈箱の家〉で考えたこと』を具体的に、しかし実名は明かさずに書くことである。個別的な具体例をプロトタイプ的な事例として紹介するというアイデアである。少しスタディしてみようか。夜も引き続き読書。

『ダーウィン・エコノミー---自由、競争、公益』(ロバート・H・フランク:著 若林茂樹:訳 日本経済新聞出版社 2018)を再読する。本書の主張の前提を簡単にいえば、集団(社会)における個別的でボトムアップな自由競争は、アダム・スミスのいう〈見えざる手〉によって安定した定常状態に収斂することは稀であり、チャールズ・ダーウィンが言ったように集団的な不利益をもたらす場合が多いということである。つまり個体の利益と集団の利益が〈見えざる手〉によって一致すことはほとんどなく、多くの場合、両者は深刻に対立する。この問題はアダム・スミス流の自由競争に基づく資本主義や新自由主義(リバタリアン)経済にも当てはまる。したがって上位の集団組織によるトップダウンの調整なしには社会は成立しない。この考え方は第一次大戦後にジョン・メイナード・ケインズが提唱した政府の公共事業による景気回復がそうだし、国家による税金の徴収と再分配にも当てはまる。本書では、以上のような主張を手をかえ品をかえて具体的に検証している。例えば「すべての決定者が十分に情報を与えられ完全に合理的であったとしても、そしてすべての労働市場と財市場が完全に競争的あったとしても、市場における見えざる手が社会にとって最善の結果をもたらすとは想定できない。事実が常に証明するように、住宅が地位財で安全が非地位財であれば、規制のない市場では、大きすぎる家や危険すぎる仕事が提供されるだろう」。〈地位財〉とは相対的に価値が決まる財、〈安全〉は絶対的に価値が決まる財である。相対的な価値比較による〈地位財〉をめぐる競争には際限がないので、〈安全〉の犠牲によって得られる価値を限りなく昂進するという悪循環が生じる。本書の結論は、完全な自由競争を奉じるリバタリアンの論理は、結果的にトップダウンの制御を要求せざるを得ないという主張である。それが集団で生活し社会を構成することの最も合理的な帰結というわけである。日本人とは異なり、アメリカでは政府による税の徴収や支配を根本的に嫌うリバタリアンという伝統的な思想が根強く存在し、歴代の〈小さな政府〉を提唱する政治家はほとんどがリバタリアンだそうだ。著者は結論を分かりやすくこうまとめている。「個人の自律性は、他を害する行動から発するすべての問題が効率的に解決されない限り、常に譲歩させられる」。本書の意義は、このテーゼを原理の対決でなく、具体的な話し合いによる〈譲歩〉によって解決しよとする点にある。ジョン・スチュアート・ミルの主張のような、他を害する行動に対する政府による規制や禁止ではなく、そのコスト(例えば公害に対する課税)を高くする方が良い結果を生むということである。つまり有害な行動を個別的に削減することではなく、有害な行動の全体量を削減することが社会に利益になるのである。こうして著者はトップダウンな税制の有効性についてこう結論づける。「良い政府が必要なのは、個人の目標と社会の目標が、しばしば対立するからだ。対立のあるとき、見えざる手がその解決をしてくれると期待するのはナイーブにすぎる。賢明な税制は負担のない形でより良い状況を生み出すことができる。有害な行動に課税すること(累進的消費税)で、消費を犠牲にすることなく道路や橋を維持する財源ができるのだ」。この結論では、政治がすべて経済に還元されているように見える。というよりも、政治が最も有効に働くのは経済=税制を投じた間接的な規制によってであるという主張と解すべきかもしれない。


2018年06月19日(火)

7時起床。晴れのち曇りで27度を超える夏のような一日。8時半出社。9時過ぎに事務所を出て千代田線で湯島の国立近現代建築資料館へ。10時から今年度最初の運営委員会。松隈洋、渡部葉子、山崎幹泰、僕の4委員が出席。資料館からは、杉浦久弘館長、武藤貴之副館長、桐原武志武、川向正人、遠藤信行、穎原澄子の4人の主任調査官ほか事務局全員が出席。僕が座長となり、頴原さんからの情報小委員会の報告から始まり、企画小委員会からは遠藤さんによる昨年の展覧会、現在開催中の展覧会、来年以降の展覧会の予定に関する報告。来年予定していた前川國男展は諸般の事情で延期となり、代わって吉田鉄郎展を開催することになる。収集小委員会からは桐原さんによる現在の資料収集状況について報告に続き、川向さんから生存中の建築家からの資料の段階的収集に関する提案がある。それに対して収集委員の松隈さんからは、それ以外にも収集の申し入れがある資料もあるので受け入れ体制が整わないと難しいという回答。この問題に関して僕が杉浦館長の考えを質すと、資料館の人員配置の問題であるという回答。それに対して渡部さんから何らかの予算措置によって資料館の窓口となる常駐の調査官を置くべきだという主張が出る。現在の資料館は最長3年、通常は1年契約の非常勤職員による不安定な組織であり、つまるところこれは資料館の組織編成の問題である。引き続き副館長から資料公開における法的問題の検討についての報告があり正午過ぎに終了。資料館は開館して5年になるが、組織のあり方についてはたえず問題にされてきた。建築資料館でありながら文化庁から派遣される職員が建築的知識をほとんど持っていない点が一因であることも問題なのである。開催中の『建築からまちへ1945-1970』をざっと見学した後、川向、遠藤、藤井愛さんと近くのレストランで昼食。13時半に資料館に戻り東理大の建築史家、石榑督和さんが加わり、今月末に開催する池辺陽の〈渋谷復興計画案〉に関するトークセッションの進め方について打ち合せ。概要を決めて14時半に解散。15時過ぎに帰社。戸田と「163保田邸」の構造に関する打ち合わせ。接続金物のメーカーに送った質問メールについてはまだ検討中だという。夕方「159吉村邸」の現場監理から帰社した木村から工事の進行状況について報告を受け現場監理報告をまとめて吉村さんに送信。資料館から池辺の〈渋谷復興計画案〉の写真データが届いたのでトークセッションのスライド編集を再開。夕方、吉村さんが来所し「159吉村邸」のプレゼンテーション模型を持参し返却してくれる。夜はインターネットでワールドカップの「日本―コロンビア戦」をフォロー。21時半帰宅。テレビで日本の勝利を確認。これまで色々な問題があったが勝負は蓋を開けるまでわからないものである。今回のW杯では同じような番狂わせが何度も生起している。『フラジャイル・コンセプト』を読みながら夜半就寝。


2018年06月18日(月)

7時起床。今日も曇りで涼しい一日。8時半出社。9時に事務所を出て東京駅へ。今日は日士連作品賞の現地審査第5日目である。構内に入場しようとしたら乗車券がついていない新幹線切符であることに気づく。やむなくiPhoneスイカで入場。これが裏目で新幹線改札口では乗車券をカード購入できない。日士連事務局がまた誰か(おそらく竹原さん)の切符と取り違えたらしい。家早南友である。時間がないので新幹線改札口で駅員に事情を話し、降車駅で精算するように指示されて予定の9時45分発の長野行き新幹線に乗車。10時過ぎに本庄早稲田駅にて下車。松川淳子、石山修武、岸和郎、櫻井潔と合流。今朝大阪で大きな地震があったため新幹線がストップし竹原義二さんは不参加。タクシーに分乗して約10分で本庄市内の〈時間の倉庫・旧本庄商業銀行煉瓦倉庫〉へ。入口で設計者の福島加津也さん以下数人が迎えてくれる。2階ホールで既存建物の調査報告とリノベーションの経緯について30分程度のスライド・レクチャーを受けた後に建物内外を見学。明治時代に建てられたかつての銀行所有の煉瓦造倉庫リノベーションである。既存建物の調査は早稲田大学の中谷礼仁研究室が行い、その調査結果の元に展示場とイベントスペースにコンバートした設計である。煉瓦壁造とキングポスト・トラスの木造屋根の既存建物を、現代の法規に合わせて鉄骨造で耐震改修した上で、2階を二重床として空調設備を付加している。構造デザインは新谷眞人さんである。既存の煉瓦壁と開口部、木造のキングポスト・トラスを残し、鋼管柱と鋼製耐力壁を対比させたデザインについて、石山さんは伝統的建物保存のデザインとしては建築家の主張が表に出過ぎていると批判する。ジョン・ラスキン的な正論だが、私見としては重要文化財とはいえ格別に優れた煉瓦倉庫とは思えないので、新旧の対比的デザインは十分にありうるのではないかと思う。しかしこの問題について福島さんが熟慮したかどうかという点においては、やや疑問が残るデザインといわざるをえない。というのも1階では鋼製耐力壁と空調設備機器が空間を分断しているからである。僕ならば空調設備を奥の妻側に寄せて一体的な空間を残しながら、鋼製耐力壁を薄い壁に分散させて展示パネルに使っただろう。要するにインターヴェンションの表現が強すぎることに石山さんは苛立ったのだろう。その点は僕も同感である。11時半にタクシーでJR本庄駅へ戻り、駅構内で弁当とお茶を購入してベンチで昼食。12時半の電車で大宮まで戻り、宇都宮線に乗り換えて久喜駅に14時前着。タクシーに分乗して約15分で北葛飾郡杉戸町の住宅〈Eagle Woods House〉へ。低い丘の上の鬱蒼とした雑木林の中に建てられた住宅である。設計は早稲田大学出身の若い建築家グループEureka。RC造、鉄骨造、木(LVL)造の混構造で、地形に合わせて複数のレベルの床をつくり立体的な一室空間住居としている。開放的でフレキシブルな空間構成で、若いクライアント4人家族は楽しく生活しているようだ。しかし僕の見るところ、総じて構法がややチグハグで詰めが甘いところが散見される。外壁は屋根仕様なのに軒や庇の露出した木構造の耐候性や、シングルとペアのガラスの使い分け方が気になる。15時前にお暇しタクシーで久喜駅へ、15時過ぎ発の湘南新宿ラインに乗り新宿で皆さんと別れて17時前に帰社。夜は進行中の仕事について簡単な打ち合わせの後、今日の現地審査について再考。今回も書類審査と現地審査の印象が大きく異なることを痛感する。21時半帰宅。夜半過ぎに就寝。


2018年06月17日(日)

8時起床。ゆっくりと朝食を摂った後、妻と相談して『万引き家族』を観に行くことを決めネットで切符を購入。妻は初めてだが僕は2回目である。10時半に家を出て明治神宮前駅から副都心線で新宿三丁目駅にて下車、歩いて5分で11時前に新宿バルト9へ。館内はほぼ満員で中年の夫婦が多い。11時20分から上映開始。2回目なので細かなセリフ、家のセット、音楽などに注目しながら観たが、改めて主演の安藤サクラの演技に舌を巻く。14時帰宅。しばらく休んだ後15時に出社。16時に難波研OBの坂井禎介さんとご両親が来所。今年度の博士論文審査に合格したことの報告である。改めて考えてみると坂井さんは難波研究室の最後の卒論生でありながらも、博士(工学)になった最初の学生である。彼の卒業年に僕は退職したので、彼は修士課程では日本建築史研究室に進学し、修了後は財団法人・文化財建造物保存技術協会に就職して現在に至っている。論文のタイトルは『近世民家における意匠操作』で、主に日本海側一帯に残る民家の意匠、特に柱割における構造の論理では説明できない視覚的操作について詳細に実地研究を展開している。一般に民家については素朴で素直なデザインというイメージを持たれているが、そのイメージを覆すような複雑な意匠操作が行われていることを明らかにした興味深い研究である。そのような意匠操作が、なぜ行われ、どのような経路で伝播して行ったかについては、まだはっきりとは分かっていないようだが、港町の民家に多いところから日本海の海運が背景にあるのではないかという。論文の概要について説明を受けた後、今年末の難波研同窓会にはぜひ出席して論文を紹介するようにアドバイスし17時半に終了。18時帰宅。昼食を抜いたので早めの夕食。夜は読書。ネットニュースで4年前に図書室が焼けたチャールズ・レニー・マッキントッシュのグラスゴー美術学校が再び火事に見舞われたことを知る。動画を見ると今回は建物全体が燃えている。家早南友である。『フラジャイル・コンセプト』を読みながら夜半就寝。


2018年06月16日(土)

7時起床。曇りで肌寒い一日。8時半出社。昨日の現地審査の感想を日記にまとめる。対照的な3作品だったが記憶に残ったのは西荻窪の〈KITAYON〉である。昨晩には設計者の寶神さんからお礼メールが届いた。事務所のスタッフに聞くと今年度の東京建築士会「住宅建築賞」の金賞を受賞しているとのこと。確かに『建築東京』6月号に掲載されており、応募書類の書式も中味もまったく同じというのはちょっと引っかかる。東京建築士会と日本建築士会連合会とは建築士会という同じ組織なので重賞に問題はないのかどうか確認する必要があるかもしれない。日経アーキテクチャーの宮沢編集長から池辺陽研究室が設計した鹿児島の「内之浦宇宙空間観測所」の取材依頼メールが届いたので今月末に決める。事務所のどこかにしまっている資料を探し出さねばならない。昼過ぎに木村が「159吉村邸」の現場監理から帰社。吉村さんが入居後に屋上デッキの上を緑化したいのだが、目黒区役所の助成金を申請するには荷重条件について構造的な説明書が必要だというので、佐々木構造計に画その旨の質問メールを送る。東浦和の「161齋藤邸」がコスト問題で暗礁に乗り上げ、ここ2週間滞っているので、斎藤さんに計画に関する手紙を書く。さてどうなることやら。昼過ぎに戸田がまとめた「163保田邸」の伏図を見ながら木村を交えて構造システムの打ち合わせ。基本方針を決めて軸組図にも取り組むように指示。合わせて来週初めに金物メーカーに送った質問に関する検討の進行状況を打診するように指示する。14時に事務所内外を掃除して解散、15時半帰宅。夜はいつものイタ飯屋でいつものミニコースの夕食。21時帰宅。『フラジャイル・コンセプト』を読み続けるが、文章が細切れなので集中力が持続しない。夜半就寝。


2018年06月15日(金)

7時起床。冷たい雨が降り続く涼しい一日。8時半出社。今日は日本建築士会連合会作品賞の現地審査の4日目である。9時半に事務所を出て半蔵門線、都営新宿線を乗り継いで岩本町にて下車。地上に出ると土砂降りの雨である。歩いて約5分で秋葉原駅近くの〈YKK80ビル〉に着く。まもなく松川淳子さんと竹原義二さんが到着。日建設計の亀井忠男さん以下2名、YKK不動産から2名が迎えてくれる。まず2階の小会議室で建物の説明を受けた後に建物内外を見学。西向ファサード全面をアルミ押出材ルーバーで覆っている点がデザインのポイントである。その他、ルーバー内側のサービス用バルコニーを兼ねた庇、メンテナンスが容易な開閉式の天井輻射冷暖房パネル、デシカント空調や換気システム、窓際に打ち合わせコーナーを並べた開放的な執務空間、免震構造や水害時の対策などについて説明を受ける。いたるところに50種類以上のアルミ押出材が使われているのはアルミメーカーでなければできない芸当である。まったく文句のつけようのない優等生的なデザインだが、ガツンと来るテーマがないのが今年の建築学会賞を逃した一因かもしれない。12時前にお暇し建物周囲を見学した後、秋葉原から総武線、中央線を乗り継ぎ西荻窪にて下車。南口に出て松川さん行きつけのレストランで昼食。13時過ぎに店を出て北口に回り西に向かってバス道を歩き始めると再び土砂降りになる。定刻通り13時15分に〈KITAYON〉に着く。建物前で設計者の寶神尚史さんと太田温子さんが迎えてくれる。間口が狭く奥行きの深い変形敷地に建つペンシル型の鉄骨造3階建テナントビルである。設計者の寶神さんが建物のオーナーであり、土地の購入からテナントの募集まで自身がやったという建築家の職能を再定義するような試みである。建物内の路地に沿った1階の店を見学した後、外階段で2階の手作りパン屋と宝石店、3階の住居を見学。小規模だが拘りのあるデザインについて説明を聴く。14時過ぎにお暇して土砂降りの中を西荻窪駅に戻りガード下のタクシー乗り場からタクシーに乗り南へ下って用賀の住宅〈Earth and Horizon〉へ15時過ぎに到着。設計者の岸本和彦さんと建主の奥様が迎えてくれる。西向きの傾斜地に建つ住宅で、半地下階の駐車場がRC造、1階が鉄骨造、2階が木造の混構造で西側に段差のついたデッキが広がっている。南の道路面から見ると二つの建物が並んでいるように見えるのは建物中央にトップライトを通しているからである。室内は段差によって複数の床に分けられている。台所と床を同じ左官仕上げにしている点に注目する。16時過ぎにお暇し奥様の車で二子玉川駅まで送ってもらう。駅前のビアホールで一服し岸本さんを交えて歓談した後17時過ぎに田園都市線に乗車。渋谷で松川さんと表参道で竹原さんと別れ18時前に帰社。スタッフに今日の資料を見せてコメント。雨の中を動き回ったので一休み。夜は資料を見ながら今日の審査を反芻。21時半帰宅。疲れが噴き出したので『フラジャイル・コンセプト』を読みながら11時過ぎに早目に就寝。


2018年06月14日(木)

7時起床。晴れのち曇りの蒸し暑い一日。8時半出社。9時に事務所を出て武蔵小山の「159吉村邸」現場へ10時前着。現場は追い込み工事が続いているが、まだまだ残工事が多い。木村に細かな修正点を指摘するように指示。まもなく新建築住宅特集編集長の西牧厚子さん、少し遅れて編集部の内藤麻美さんが到着。工事の詰めでドタバタしているがとりあえず内部を案内する。一通り案内した後、屋上から林試の森を臨みながら取材時期の相談。入居して写真スタジオを使い始めた状態で撮影することはできないかと提案されたので、吉村さんに相談してみることを約し10時半過ぎに解散。その後は外に出て立ち話をしながらjt編集での様々な苦労話を聞く。最近の環境住宅特集では、各方面から多くの意見と感想が寄せられたようだ。編集部としては大変だろうが、それだけ反応があることは、建築家がこのテーマに興味を持っていることの証なので、むしろ喜ばしいことだと思う。現場で何点か気になる箇所を発見したので、オープンハウス前に再度現場監理に来ることにして11時に現場を発ち11時半過ぎに帰社。新建築住宅特集の取材条件について吉村さんに相談メールを送信。何とか対応してもらえそうな返事が届いてホッとする。昨夜のメールで田中智之さんに紹介された熊本の若い建築家、矢橋徹さんに挨拶のメールを送信。直ちに返信メールが届いたので、基本設計図と今後のスケジュールに関する報告メールを送信。直ちに返信メールが届き来週末の〈箱の家159〉のオープンハウスに来てくれるとのこと。トントン拍子にことが進んだお礼に、田中智之さんに『メタル建築史』と『進化する箱』を宅急便で送る。夜は読書。『フラジャイル・コンセプト』は東日本震災に関する短文に差し掛かり〈日常性〉という言葉が頻出するのが気になる。21時半帰宅。風呂に入って汗を流し夜半前に就寝。


2018年06月13日(水)

7時起床。晴れのち曇りの暑い一日。8時半出社。戸田が「163保田邸」の平面と断面の暫定的な詳細図をまとめたのでざっと目を通す。構造システムが十分に検討されていないため問題点が多いので、まずは構造システムの検討から始めるべきだと考え、基礎を含めた構造システムについて保田さんが提示した条件を整理するように指示する。整理された希望条件を改めて見直してみると、かなりハイレベルな条件なので特殊な構造計算が必要になるかもしれない。佐々木構造計画に相談する前に対応が可能かどうか構造金物メーカーに打診するメールを送る。構造システムについてチェックバックした詳細図を元に打ち合わせて、構造伏図をスタディすることから始めるように戸田に指示する。東京建築士会から東京都庁の「木造住宅密集地域改善のため、都有地を活用した魅力的な移転先の整備に係るマーケット・サウンディング(対話)調査実施について」というお知らせメールが転送されてくる。都内の木造密集地域の移転計画に関する事業計画への参加要請である。きわめて興味深いテーマなので、とりあえずは都の説明会に出席するための申込書を送信する。熊本の保田さんに「163保田邸」の敷地付近のボーリング調査のデータを送って欲しい旨のメールを送る。敷地内の簡易地盤調査のデータはすでにもらっているので、地盤改良の概略仕様は決めることができるが、念のためさらに深い地盤の状況を確認しておこうと考えたからである。夜、何回かに分けて保田さんからデータが届き、敷地内の地盤データと大きな違いがないことを確認する。夜遅く田中智之さんから熊本の若い建築家の紹介メールが届いたので、迅速な対応に感謝するメールを返送する。実施設計に着手したばかりだが、体制はスピーディに整いつつある。『フラジャイル・コンセプト』を読みながら夜半就寝。


2018年06月12日(火)

7時起床。晴れのち曇りの蒸し暑い一日。8時出社。直ちに事務所を出て表参道を経由して青山歯科医院へ。8時半から1ヶ月半ぶりの歯のメンテナンス。前歯の噛み合わせがズレて偶に下唇を噛んでしまうことを報告すると慣れるしかないでしょうという回答。歯垢を除去した後に奥歯の歯茎に歯周病予防の抗生物質を注入。1ヶ月半後の診療を予約して9時半に終了。10時前に帰社。昨日の日士連作品賞の現地審査の感想を日記に書き込んだら、まもなく日建の山梨さんからfacebookでリアクションが届いたので、ちょっと厳しく書き過ぎたかなと反省。これまで見てきたどの建築よりもテクニカルには格段レベルの高い建築であることは間違いないのだが、山梨さんだからこそ無い物ねだりをしてしまうのだろうか。あるいは、逆に審査委員の方が審査される踏み絵のような建築として受けとめてしまうのかもしれない。家早南友。思い立って熊本大学の田中智之さんに〈箱の家163〉の現場監理を協力してくれそうな建築家について相談するメールを送る。地方で〈箱の家〉をつくるときは、現場監理料と交通費を支払うとともに〈箱の家〉のノウハウを伝えるという条件で現地の建築家に現場監理を依頼している。もちろん月に1回程度は僕たちも現場監理に赴くが、クライアントに対する交通費の負担をできるだけ抑えるための方策である。これまで博多、大阪、神戸、香川、名古屋、富山、新潟、秋田の「箱の家」でその体制をとって何とかやりくりしてきた。地域の建築家との交流にもなるので一石二鳥である。まもなく田中さんから建築家を探してみるという返事メールが届きホッとする。田中さんは最近立て続けに著作を出版しているので熊本の建築に関する本をアマゾンに注文する。富山の酒井さんから第7案が届いた旨のメールが届く。ご主人がしばらくダム工事現場に単身出張なので検討結果まではしばらく時間がかかりそうだとのこと。夜は読書。9時半帰宅。カントに関する本は先延ばしにして青木淳の『フラジャイル・コンセプト』を読み始める。当初は〈フラジャイル(脆弱)〉に見えるコンセプトが、実際には〈アンチ・フラジャイル〉であるという逆説的なタイトルで、ナシーム・ニコラス・タレブの『反脆弱性』と考え方は同じようだ。TVはドナルド・トランプと金正恩の米朝会談のニュース一色である。共同声明文は抽象的な美辞麗句で、具体的な方策についてはほとんど書かれていない。「大山鳴動してネズミ一匹」にならなければいいのだが。


2018年06月11日(月)

7時起床。台風の影響で朝から風雨が続く一日。8時半出社。熊本の保田さんから「163保田邸」の構造設計の体制に関する質問が届く。今回は佐々木構造計画だけでなく接続金物のメーカーにも相談する予定だが、その手順はまだ確定していない旨の返事メールを送る。雨の中9時過ぎに事務所を出て地下鉄で東京駅へ。豪雨の天気予報だが通勤ラッシュはいつもと変わらないようだ。10時東京駅発仙台行の新幹線に乗車。今日も日士連作品賞現地審査である。車内で村松映一、石山修武、櫻井潔、中谷礼仁と待ち合わせ。11時前に宇都宮駅着。東口のバス駐車場で待機しているマイクロバスに乗車。まもなく岸和郎、竹原義二が合流。雨の中を北西に向かい、いろは坂を登って約1時間半で12時過ぎに中禅寺湖畔の蕎麦屋に着く。雨で中禅寺湖の視界はほとんど無い。昼食後1時に店を出て隣の〈On the water〉へ。山梨知彦さんと日建設計のメンバー3人に迎えられて敷地内に入る。前面道路から緩やかに回り込む斜路を下って玄関へ。湖に沿って南北に長いホールで山梨さんの説明を聴く。この建築は夏の別荘だが、当初は会社の保養所として計画が始まり、実現までにはかなり紆余曲折があったらしい。利用頻度が少ないためか生活感はほとんど感じられないが、空間にはホテルのような解放感と緊張感がある。山梨グループがかなり力を入れてデザインしたからだろう。南北に長い玄関ホール兼食堂が湖畔の上に浮遊し、そこから1階リビングへ降りてから、水際の南北の2寝室へ入るという中庭型のプランだが、通路のスケールの変化と窓の取り方による明暗の強弱によって建物全体は迷路のように感じられる。1階のリビングからは、中庭から宙に浮いた玄関ホール下の低いトンネル状の外部空間を通して湖の水面が見通せる。両端に置かれた2つの寝室の空間も階段状に水際に連続している。それほど大きな別荘ではないが、中庭を囲む空間のシークエンスが巧妙に仕掛けられているので、実際以上に大きく感じられる。居住空間にしては冒険的な仕上げ、アクロバティックな構造システム、手の込んだ設備システムに圧倒される。空間と形態の構成の密度がやや過剰に感じられるのと、所々に不思議な納まりが見受けられるのは、BIMなどの設計ツールを活用しているからかもしれない。Howを徹底して追求することによって、結果的に緊張感に溢れた建築が生み出されているのだが、最終的にWhatが見えなくなっているような印象さえしてしまうのは、意地悪な見方だろうか。審査員全員の反応が今一なのはそのせいかもしれない。14時過ぎにお暇し雨の中をマイクロバスで宇都宮へ戻る。バスの中ではポツリポツリと感想が出るが、あまり盛り上がらない。皆どう評価するかに戸惑っているようだ。宇都宮駅で缶ハイボールを購入し16時前の新幹線に乗車、17時前に東京駅着。改札口で参加委員と別れ18時前に帰社。いくつかメールのやり取り。21時半帰宅。ウィスキーを呑みながら今日の現地審査について考えを巡らせる。アマゾンから届いた『新・カント読本』(牧野英二:編 2018)の序論を読みながら夜半就寝。


2018年06月10日(日)

8時過ぎ起床。昨日から雨が降り続く涼しい一日。いよいよ本格的な梅雨入りである。昨夜は様々なことを考えてなかなか寝付かれず、やや寝不足気味である。朝食後にシャワーを浴びて目を覚まし11時前に出社。昨夜観た『万引き家族』について建築に引き寄せながら感想をまとめる。栃内秋彦+佐藤季代のTAKiBIからオープンハウスの案内が届く。〈箱の家159〉の翌日である。当日は二日酔いの可能性があるが彼らの処女作だから何とか行くことにしよう。午後は帰宅しベッドの中で読書に集中。『ダーウィン・エコノミー---自由、競争、公益』(ロバート・H・フランク:著 若林茂樹:訳 日本経済新聞出版社 2018)を一気に読み通す。アメリカにおいては個人の自立と自由を最優先し政府のような上部組織に本質的な忌避感を抱く〈リバタリアン〉が大きな影響力を持っているようだ。本書は〈リバタリアン〉の思想が必然的に政府という上部組織を必要とせざるを得なくなる論理について、アダム・スミスの〈見えざる手〉ではなくダーウィンの〈自然選択〉をモデルにしながら具体的かつ説得的に論じている。つまりボトムアップな活動だけでは社会はうまく運営できず何らかの形でトップダウンな活動が必要となるということである。近いうちに再読し問題点を整理してみよう。


2018年06月09日(土)

7時起床。晴れで蒸し暑い一日、8時半出社。9時過ぎに事務所を出て武蔵小山の「159吉村邸」現場へ。7時起床。晴れで蒸し暑い一日、8時半出社。9時過ぎに事務所を出て武蔵小山の「159吉村邸」現場へ。来週月曜日に竣工検査なので、工事は最後の追い込みである。3階の白ペイント仕上げは、いつもながら細かな詰めの甘さが目につく。かつて亡くなった杉本貴志さんにMUJIHOUSEの開発時に室内を白一色で仕上げてはどうかとアドバイスされたが、僕は木造の軸組を表しにすべきだと反論した。白ペイントは「百難隠す」ことへの抵抗である。細かなことかもしれないが、インテリアデザインと建築デザインの相違は、その辺りにあると直感したのである。「箱の家」でも鉄骨はペイント仕上げにせざるを得ないが、壁は大抵は別の材料で仕上げている。しかし今回は写真スタジオなのでペイント一色のシームレスな仕上げである。細部に気を配らねばならない。10時半に現場を発ち11時半に帰社。13時半に富山の酒井さんが来所。「162酒井邸」第6案について図面を見ながら説明した後、太陽熱給湯やガス発電設備などについても説明。何点かの追加条件をもらったので早急に第7案に反映することを約して15時過ぎに終了。直ちに図面の修正と資料の収集を戸田に指示。夕方までに図面を修正したので、まとめて酒井さんに送信する。〈箱の家159〉のオープンハウス日時が確定したので案内状を界工作舎HPとfacebookに掲載する。
http://www.kai-workshop.com/index.html
平田晃久さんから『Discovering New』(平田晃久:著 TOTO出版 2018)が届く。現在TOTOギャラリー間で開催中の平田晃久展の分厚いカタログである。僕なりの平田建築に関するコメントを加えてお礼のメールを送ったら直ちに平田さんから返事が届く。生物の進化をモデルにしているという僕のコメントは間違っていなかったようである。16時に事務所内外を掃除し解散。17時半に事務所を出て、千代田線、日比谷線を乗り継ぎ六本木駅にて下車。六本木ヒルズシネマへ。18時半から『万引き家族』(是枝裕和:監督 2018)を観る。公開直後の週末で館内は満員。カップルが多いが、意外に1人の女性客が多いのはなぜだろうか。映画の舞台は高層マンション群の谷間に残された平屋住宅である。そこに前科を持つ中年の男と女、別れた夫の家出した孫娘と彼女を引き取っている老女、パチンコ屋の駐車場で拾った男の子と近くのアパートのベランダで拾った幼女の6人が同居している。老女は年金で食いつなぎ、大人たちはそれぞれパートタイムで働いているが、時に男は子供2人に万引きを手伝わせることで家計を支えている。これまで是枝監督は一貫して血縁家族が解体した現代社会における共同体のあり方をテーマにした映画を作り続けてきた。本作も〈万引き〉という犯罪を介したきわめて特殊な人間関係を通して、血縁で繋がっている〈家族〉とは異なる共同体のあり方について問いかけた映画だといってよい。是枝はどこかのインタビューで、現代の日本社会における共同体の劣化と、その反動としての最近のナショナリズムの勃興について「最も安易な共同体幻想」だと警告している。それは山本理顕が提唱する「地域社会圏」に関する、まったく異なる視点からの問題提起といってもよいだろう。そのような擬似家族=共同体の容器としての住宅が、平家の古い家つまり「生きられた家」(多木浩二)であることは象徴的である。逆にみれば、擬似家族と「生きられた家」はどちらも、いずれは解体することを象徴しているようにも思える。これに対して、建築家の提案する住宅が、家族とは異なる共同体の容器となりうるかという問いかけに対して答えようとしたのが『脱住宅---「小さな経済圏」を設計する』(山本理顕+仲俊治:著 平凡社 2018)ではないかと思う。一方で、この映画が問うているのは、子供の成長における家族のあり方でもある。映画の中で、事態を大きく展開させる契機は、何かを感じ取った2人の子供たちによる直感的な行動である。僕たち大人は子供たちを導こうとするだけでなく、社会に対する彼らの直感的な反応に学ばなければならないことを、この映画は教えているような気がする。


2018年06月08日(金)

7時起床。曇りの暑い一日。8時半出社。9時に事務所を出て、銀座線、山手線、モノレールで羽田空港第2ターミナルへ。10時15分発 AIRDO航空の新千歳空港行便に搭乗。機内は満員。11時40分新千歳空港着。札幌行のJRエアポートライナーで12時前に札幌駅着。構内の蕎麦屋で軽い昼食を摂ってから北口のタクシー乗り場へ。今日は日士連作品賞の現地審査である。13時半に岸和郎さんと待ち合わせ、タクシーで10分で札幌市内の〈北光(ほくこう)の家〉へ。建築家の杉山友和さんの事務所兼自邸である。間口3.3m、奥行16.5mの細長いプランで、住人は杉山さん夫婦と子供2人。木造3階建だが、防火指定のない地域なので木造軸組は内部に露出している。外断熱だが断熱性能は予想したよりもやや低い。外壁仕上げは0.8亳亜鉛マグネシウムメッキ鋼板の平張り。内装は壁・床・天井すべてが針葉樹合板仕上げ。側壁は構造用合板をそのまま仕上げにしている。建物中央に3層の吹抜けを通し、その周りに階段を回して、全体をスキップフロアの一室空間住居としている。吹抜けの短辺方向の両側に横力を受ける鉄筋ブレースを入れて、室内を柔らかく仕切っている。1階の土間スラブに温水チューブを打ち込んだ床暖房。航空便のスケジュールがあるため、岸さんは一足早く15時半過ぎにタクシーで帰る。僕はもうしばらく滞在し杉山さんとあれこれ建築談義。自邸なので思い切ったデザインに挑戦している点に感心する。表と裏に壁で囲まれた屋外テラスがあり、そこから自然光が入ってくる。唯一気になったのは、街に対して閉じている点である。3階に消防用の進入口がある以外は、外観は金属仕上げの素っ気ない〈閉じた箱〉である。建築家であればなおさらのことだが、何らかの形で街に開くべきではないかという私見を述べる。4時過ぎにお暇し、杉山さんの車で札幌駅まで送ってもらう。18時発の航空便が遅れて羽田に着いたのは20時過ぎ。21時半に帰社。スタッフに今日の資料を見せて簡単なコメント。ウィスキーを呑み直し今日一日を振り返る。『ダーウィン・エコノミー』を読みながら夜半就寝。


2018年06月07日(木)

7時起床。曇りのち晴れの暑い一日。8時半出社。はりゅうウッドスタジオから届いた縦ログ構法本の最終原稿を読む。160ページ近い原稿のうち僕自身に関係する部分だけを校正し、スキャンしてはりゅうウッドスタジオと編集のフリックスタジオに送信する。最終的な読みあわせは6月21日(木)に行うことになる。「161齋藤邸」について齋藤さんとのメールのやり取り。見積金額が予算を越えている点について議論するうちに、お互いの理解のすれ違いが浮かびあがり、なかなか落とし所が見えなくなってくる。減額のためにやるべきことはやったので、根本的なシステム転換が必要かもしれない。「162酒井邸」の第6案がまとまったのでチェックバック。次は設備システムについて調べるように戸田に指示。はりゅうウッドスタジオから『福島アトラス02---避難社会とその住まいの地図帳』(NPO法人福島まち・住まいづくりネットワーク 2018)と『福島アトラス03---避難12市町村の復興を考える基盤としての環境・歴史地図帳』(NPO法人福島まち・住まいづくりネットワーク 2018)が届く。東日本震災で原発災害を含めた大きな被害を被った福島県のコミュニティ復興の目安となる分析地図である。僕は直接には携わっていないが、メンバーの一人である〈NPO法人福島まち・住まいづくりネットワーク〉と明治大学の青井哲人さんたちの仕事である。18時に事務所を出て千代田線、南北線を乗り継ぎ市ヶ谷駅で下車。歩いて法政大学大学院新見付校舎へ。19時から北山恒さんの法匠セミナー「東京の新陳代謝と都市組織」に出席。法政大学の江戸東京研究センターの活動の一環として、北山さんは木造密集地域の再構築をテーマに絞って活動している。北山さんのレクチャーは何度か聴いているので、特に新しい発見はないのだが、問題点は徐々に整理されてきているようだ。最後に先日見学した門前仲町の〈モンナカ超混在都市単位 HYPERMIX〉を紹介して20時半に終了。同席した佐々木睦朗さんといつもの市ヶ谷の寿司屋で夕食。互いの近況を話し合った後10時に店を出てタクシーで青山まで戻り10時半に帰社。そのまま帰宅しウィスキーを呑みながら今日1日を振り返る。夜半過ぎ就寝。


2018年06月06日(水)

7時起床。梅雨に入り雨が降り続く涼しい一日。早朝、富山の酒井さんから今週末に上京するので事務所を訪ねたい旨のメールが届く。土曜日の午前中は「159吉村邸」の現場監理なので、午後一番の打ち合わせを約束するメールを返送する。直ちに昨日届いた追加の設計条件を考慮したスケッチをまとめて戸田と打ち合わせ図面の清書と設備システムの調査を指示する。今週末の打ち合わせまでにはまとめるようにしよう。熊本の保田さんから「163保田邸」の設計監理契約書類を返送した旨のメールが届いたので、届き次第に実施設計に着手する旨のメールを返送する。来週には現場監理の協力を頼む熊本の建築家と見積もりを依頼する工務店を探索も始めねばならない。東浦和の齋藤さんから「161齋藤邸」の計画を再考したい旨のメールが届く。それぞれの家には測り知れない特異な個別事情があるようだが、僕たちはその内部事情にまで頭を突っ込むことはできない。しかしそれが状況を大きく変化させるようだ。最近の何軒かの〈箱の家〉では、それぞれの事情があまりに異なっているので、僕たちはやや振り回されている感じである。その点が住宅と公共建築・商業建築との違いかもしれない。クライアントの顔が見えることは基本的にはいいことではあるが、時折シンドイこともある。結局のところ、僕たちは与えられた条件のもとでベストを尽くすしかない。近現代建築資料館から6月9日(土)に開催する収蔵展『建築からまちへ1945-1970---戦後の都市へのまなざし』のカタログが届く。池辺陽の「渋谷復興計画1946」について書いた僕自身の原稿を再読する。
http://nama.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2018/05/collection_showcase_2018.pdf
建築学会から『建築雑誌』6月号が届く。特集「構造の常識の過去・現在・未来」を読む。戦後から今日までを25年を区切りとして4つの時代に分け、それぞれの時代の構造デザインの動向について川口衞、斉藤公男、佐々木睦朗、金箱温春にインタビューしている。特集の担当者は佐々木事務所の出身者が中心である。どのインタビューも興味深く読んだが、2011.3.11以降は全体的にやや保守的になっていることがよくわかる。21時半帰宅。ウイスキーを煽りあれこれ考えを廻らせる。なかなか寝就かれず夜半過ぎ就寝。


2018年06月05日(火)

7時起床。今日も晴れで暑い一日。8時出社。早朝にメキシコ航空から予約購入した9月末のJFK(ニューヨーク)からカンクン(メキシコ)への航空便がキャンセルになったというメールが届く。すでに購入代金を払っているので、慌てて日本支店に電話すると何とか代替便を押さえるという。しばらく待っているとDELTA航空から代替便の予約メールが届く。スケジュールもほぼ同じなのでホッと胸をなでおろす。先月末に「162酒井邸」と長原の〈箱の家164〉のクライアントにメールを送ったが、返事がないので確認のため先月末のメールを再送する。まもなく富山の酒井さんから追加条件に関するメールが届いたので、早速これまでの案を見直しスタディを開始する。あれこれとスタディを繰り返し夕方までに方針をまとめる。〈箱の家164〉はいまだに梨の礫だが、ローンの審査をパスしなかったのだろうか。うまく行っても行かなくても状況報告くらいするのが、サービスとして資料を作成した僕たちに対する最低限の礼儀ではないかと思うのだが。家早南友。戸田には今週末から「163保田邸」の実施設計を開始するように指示する。僕のFacebookタイムラインで紹介したオンラインコース"Four Facets of Contemporary Japanese Architecture: Technology"がまもなく終了するので、隈研吾のビデオ・コメントをもう一度見直して気づいたことがある。隈が1970年代の安藤忠雄のRC造や集成材造の仕事について「一定のルールを決めた上で、それを徹底的に追求するゲームのような建築である」と位置づけているのは、おそらく『ヘーゲル読解入門―『精神現象学』を読む』(アレクサンドル・コジェーヴ:著 上妻精+今野雅方:訳 国文社 1987)の註においてコジェーヴが紹介している〈日本的スノビズム〉を念頭に置いたコメントであることに思い至る。要するに、隈は安藤の仕事を茶道や華道と同じような、社会からかけ離れたゲームであると片付けたいようである。しかしながら建築は茶道や華道とは異なり、そもそも社会に密着した芸術だから、僕としては賛同しがたい解釈である。技術という側面から捉えるならば、ワルター・ベンヤミンが指摘したように、むしろ技術の進化形態すなわち〈遊戯的技術〉と解釈すべきだろう。その意味でなら〈箱の家〉も〈建築の4層構造〉に基づく〈遊戯的技術〉だといってもよいだろう。要するに、可能な限り設計条件の変数を増やし、その相互調整によって、社会の要求により深く応える建築をつくろうとしているのである。21時半帰宅。『ダーウィン・エコノミー』を読み続けるがイマイチ乗り切らない。全てを経済的な視点から見ようとするスタンスについていけないからである。夜半就寝。


2018年06月04日(月)

6時前起床。晴れで暑い一日。急いで朝食を摂り6時半出社。Macbookを鞄に入れて6時45分に事務所を出る。外苑前から銀座線、丸ノ内線の乗り継ぎ東京駅にて下車。いつもはゆっくりと朝食を摂っている時間だが、東京駅のコンコースは通勤通学の人たちでごった返している。7時23分の新大阪行のぞみに乗車。今日は日本建築士会連合会作品賞現地審査の第一日目である。車内で村松映一さんと待ち合わせ。中谷礼仁さんも同行するはずだが隣の席は空いている。メールで確認すると一足先の便に乗ったそうだ。年寄り二人に挟まれるのは避けたいからだろうか。車内で昨日の短い日記を書き込んだ後は1時間半村松さんと歓談。名古屋駅で下車。関西線のホームで竹原義二さん中谷さんと会い4人で桑名行の普通電車に乗る。永和駅で下車しタクシーを呼んで10分で愛西市大井町の「波板の家(愛西の住宅)」に着く。玄関前で建主、設計者の山下大輔さん、構造家、工務店の施工担当者が迎えてくれる。3階建ての鉄骨造住宅で2,730丱哀螢奪匹3スパン、階高も2,730个覆里如∩澗里侶疎屬楼貶8,190个領方体である。キューブの形態を明確に表現するために、建物全体を黒一色で統一し、基礎や防水パラペットのディテールを工夫してキューブ形を分節化している。このキューブの中にテラス、物干場、ベランダなどの半屋外空間を取り込んでいるため、いたるところがヒートブリッジになっている点や、空間単位が2,730亞僂呂笋箴さい感じがする点など問題点は多いが、鉄骨造に挑戦している点には好感が持てる。庭が造園されればキューブがさらに浮き立つだろう。総じて若さに溢れた思い切りのいい清々しい建築である。10時半にお暇し、永和駅から名古屋駅まで戻り、東京に戻る中谷さんと別れる。昼食の弁当を買って11時過ぎの新幹線に乗り岡山駅に13時半着。改札口で岸和郎さんと待ち合わせ、設計者である竹中工務店広島支店設計部の門谷和雄さん小松幸雄さんの案内でマイクロバスに乗り、国造30号線を南方の宇野方面へ向かう。約20分で国道沿いに建つ中古バスの展示場「リマニット・モータリー藤田展示場」へ着く。屋外展示場は長さ約80m、奥行16m、天井高6mの軽快な鉄骨造の屋根で覆われ、両端のRC造壁と点検場のRC造の箱が横力を負担している。展示場の奥に平行して一回り小さな平屋の商談・事務棟が置かれている。機能も形態も単純明快な建築なので、大雑把なデザインではないかと予想していたが、意外に細かなディテールまで考え抜かれている。展示場の広大な屋根で集熱した空気を暖房に利用し、地中にヒートパイプを埋め込んで熱交換したりなど、エネルギー面での配慮も盛り込まれているのに感心する。絵画など展示品の趣味の良さから、建築に対して理解があるクライアントであることが読み取れる。僕自身の趣味とは若干異なる面があるとはいえ力作であることは間違いない。15時過ぎにお暇し岡山駅へ戻り構内のビヤホールにて地ビールで一服。16時13分発ののぞみに乗り、3時間の車内では村松さんとあれこれ四方山話。19時過ぎに東京着。改札口で村松さんと別れ、銀座線に向かう途中の立食寿司屋で簡単な夕食。20時半に帰社。スタッフに資料を見せて今日の感想について話してから21時半に帰宅。一日を反芻しながらウィスキーを呑みんだ後に『ダーウィン・エコノミー』を読みながら夜半就寝。


2018年06月03日(日)

8時起床。晴れで暑い一日。昨夜は少し呑みすぎたので頭が痛い。ゆっくりと朝食を摂った後に朝風呂に入ってアルコールを抜く。11時過ぎに出社。日記を書き込んだ後「163保田邸」の設計監理契約書類を揃えて捺印。クリアファイルに入れて、返信用封筒を同封する。一通り書類を揃えてタッフに送付に関するメールを送る。13時過ぎに帰宅。その後はベッドの中で読書とiPadザッピングの繰り返し。ますますiPadの反応が遅くなっているので、そろそろ買い換えどきかもしれない。昼食を抜いたので18時過ぎに早めの夕食。その後はボンヤリとTVを見ながらあれこれ考える。明日は早いので11時前に就寝。


2018年06月02日(土)

7時起床。晴れで暑い一日。8時半出社。9時過ぎに事務所を出て、銀座線、山手線、目黒線を乗り継ぎ武蔵小山駅にて下車。歩いて10分で「159吉村邸」現場へ。外部足場は取れて建物の全体像が姿を現わし、足元の外構工事が始まっている。3階の写真スタジオの窓が幅一杯に広がる単純な白い箱である。まもなく吉村夫妻が車で到着し施主支給の設備機器の一部を搬入。残りの支給機器の搬入は来週月曜日である。工事は内装工事が大詰めで並行して塗装工事も進んでいる。屋上にはデッキが置かれている。竣工検査直前の来週土曜日の現場監理を約束して11時前に現場を発ち12時前に帰社。熊本の〈箱の家163〉がようやく収斂したので図面一式をYさんに送る。夕方、この案で契約したいという返事が届いたので「163保田邸」の設計監理契約がようやく成立することになる。契約を締結したら、直ちに現場監理の協力を依頼する熊本の建築家や見積を依頼する工務店を探さねばならない。設計業務委託契約書と重要事項説明書の叩き台を作成し保田さんに送り承認をもらう。夜に承認の返事メールが届いたので明日、正式書類を作成し郵送しよう。東京大学edXからメールが届く。オンラインコース"Four Facets of Contemporary Japanese Architecture: Technology"は順調に進み、あと2週間で閉講となる。その後もArchived Courseとしてアクセス可能出そうだ。コース内のDiscussion Forumsでは〈箱の家〉や僕の話が興味深いという投稿がいくつもあり、下記のような匿名の意見が投稿されているので英文の文献を知らせてほしいとのこと。「Literature by Kazuhiko Namba? discussion posted 4 days ago by anonymous.
「I just completed the excellent Module 2 on Kazuhiko Namba. His analysisof societal trends and their implications on and interrelations with thefield and practice of architecture, his contextualization of the environment and logics prevailing in post-war Japan, as well as thebroad theoretical references he was quoting struck me as extremelystimulating, and intelligible.Would someone know of literature, books, essays written by him andavailable in English language? Or if only books in Japanese areavailable, what is the best publication to start studying his ideasmight be? Many thanks in advance for your tips. This post is visible to everyone.」
残念ながら、僕には英文の著作はないので、以下のレジメを紹介する。1)http://www.kai-workshop.comの〈箱の家〉の欄、2)『〈箱)構築』(難波和彦:著 TOTO出版 2001)、3)『進化する箱』(難波和彦:著 TOTO出版 2015)。
14時に事務所内外を掃除し解散。15時帰宅。18時半に家を出て地下鉄で渋谷へ行き井の頭線ガード近くのちょっと変わった焼き鳥屋で夕食。9時前帰宅。ウイスキーを呑み直し『ダーウィン・エコノミー』を読みながら夜半就寝。


2018年06月01日(金)

7時起床。快晴で暑い夏日の一日。8時半出社。熊本のYさんからの4つの代替案の比較表を作成し夫婦で相談した結果、実施案の方針を決めた旨のメールが届く。4案を11の条件から重み付け採点した評価マトリックスを作成しているので少々びっくりする。流石に根っからのエンジニアである。このマトリクスによって奥さんは説得されたらしい。早速その結果を図面化し設計監理契約の条件をまとめて返信する。一気に収斂したので週末には契約締結まで進めそうだ。レモン画廊の松永直美社長から、今日の日本経済新聞に掲載された是枝裕和監督ノンタビュー記事のコピーが送られてくる。Facebookに掲載した『万引き家族』のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞のニュースを見てくれたらしい。松永さんとは昨年度のレモン展の審査委員長を担当した際に映画の話題で盛り上がり中国のジャ・ジャンクー監督を推薦したことを思い出す。松永さんはレモン展の継続に対して今年度の建築学会業績賞を受賞したので、お礼とお祝いのメールを送る。15時に事務所を出て、銀座線、山手線を乗り継ぎ品川駅にて下車。高輪口に出て品川GOOSビルへ。坂倉準三事務所が設計した、かつての品川パシフィックホテルである。29階の座・ランドマークスクエアトーキョーで16時から前田記念工学財団の「前田工学賞授賞式」である。記念財団理事長の挨拶の後に受賞者の紹介。今年は川島範久さん一人が前田工学賞を受賞し土木系はいない。山田一宇賞は4人が受賞し、東京理科大の建築史家、石榑督和さんが入っている。その後、受賞者が各10分の研究発表。引き続き、研究助成者の紹介と挨拶。18時に終了。同じ階のバンケットルームに移動し懇親会。川島さん、石榑さんに加えて、研究助成を受ける奈良文化研究所の建築史家、海野聡さんや北九州私立大学の構造家、藤田慎之輔さんらと歓談。石榑さんと藤田さんは建築学会『建築雑誌』の編集委員なので、最近の若い研究者たちの研究テーマについて話を聞く。20時に中締の後、川島さんと2人で30階のバーで飲み直し。21時前に店を出て21時半帰社。スタッフに明日のスケジュールを確認し帰宅。ウィスキーを呑み直し『ダーウィン・エコノミー』を読みながら夜半就寝。


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