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箱の家 PROJECT 青本往来記
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コンパクト箱の家

2020年09月29日(火)

今日も晴れで涼しい一日。今朝はiMacがなかなか立ち上がらず何度も画面が固まって動かなくなる。おかげで日記をHPに書き込んだのは正午前になる。最近、時々生じる現象だが、2003年初めに購入し7年半使用したiMacである。それまではMacBook Proを使っていたが、画面の大きさに惹かれて27インチiMacに変えた。映画を観るには格好のサイズである。現在もまったく動かない訳ではないが、反応が遅くなりいよいよ末期症状のようだ。完全に固まる前に買い換えてデータを移すべき時と判断し、直ちにアップルストアで同性能のiMacをネット購入する。直ちに明日の午後に着くというメールが届く。併せて3ヶ月前に画面が映らなくなり買い換えた木村のiMacを下取りに出す手配をする。『建築雑誌』12月号の連載記事のスケッチを続行する。リノベーションについては2000年代初期の大阪市大に在任の頃から何度となく書いているので、その原稿を読み直す。日本では建築を不動産ではなく償却資産と考える伝統があるせいか、リノベーションはなかなか根付かない。日本の建築家は住宅デザインでメディアデビューするのが一般的だが、そのような国は日本だけである。海外の建築家がそのような事態を訝る理由は、建築が不動産とは考えられておらず、ローンの担保として期待されていないためである。したがって担保のための条件規定が甘いため、逆に自由なデザインが可能になるのである。エクスナレッジ編集部から「奇跡と呼ばれた日本の名作住宅50:池辺陽」のゲラ原稿が届いたので道部加筆校正して返送する。茨城県牛久市にある「箱の家053」に住む市川捷護さんからメールが届く。外壁の汚れが気になるので清掃したいとのメンテナンスの要求である。外壁が中空成型セメント板の場合、台所や浴室の排気口周りが黒く汚れることが多いが、アルカリ性のセメントと空気中の炭酸ガスが結合して中性化の被膜を形成する際に、一緒に汚れが付着する。汚れは被膜が固定した現れなので、耐候性に問題はないことを返信する。『ジードルンク』の第2章「水平連続窓と機能性―ヴァルター・グロピウスのジードルンク・デッサウ=テルテン」を読み終わり、第3章「平行配置型住棟と住居の効率性の追求―オットー・ヘスラーのツェレのジードルンク・ブルームレーガー・フェルト」に進む。グロピウスがデッサウ市郊外に設計したジードルンクに特徴的な水平連続窓が、住人になかなか受け入れられなかった経緯が詳細に辿られている。理由は、新奇なデザインに対する感性的抵抗ではなく、むしろ部屋の居住性を規制するという機能的な理由というのが興味深い。ジードルンクにおける単純明快なモダニズム・デザインが、厳しい経済的制約を受けていたことの結果であるという転移も考えさせられる。


2020年09月28日(月)

久しぶりに秋晴れで清々しい一日。一昨日の「164U邸」オープンハウスに参加した人のリストをまとめてU夫妻に送信する。娘が自身のfacebookにオープンハウスに行った孫と僕の写真をアップしていいか問うてきたので、もちろん問題ないと返答する。直ちに僕のfacebookにもリンクされる(https://www.facebook.com/kazuhiko.namba/)。僕の仕事を孫に見せることができたことには、いささか感慨深いものがある。彼がどう感じたかはいずれじっくり訊いてみよう。『建築雑誌』12月号の連載原稿のスケッチを開始する。建築ストックに関する特集なので、リノベーションについて書くことにする。リノベーションについて論じる際に、僕の視点ではアーレント、ベンヤミン、ル・コルビュジエが三題噺になっているが、さてどのように適用するか考えてみよう。建築学会から依頼されている査読論文のレヴューの締切が近づいてきたので、再度読み直した上で建築学会HPのレヴュー欄にコメントを書き込む。近代建築史に関する新しい知見を明らかにしている点を積極的に評価する一方で、論文として文章をもう少し推敲するようにコメントする。「169菅野邸」のスケッチを再開する。佐々木睦朗さんからのメールを読みながら、プランについて再検討してみる。16時に木村が「166 K邸」の樹木調査を終えて出社する。彼は今日から通常勤務に戻るので簡単な打ち合わせ。併せて「169菅野邸」の変更板の図面化を指示する。『小嶋一浩賞」事務局から今年のシンポジウムの開催の連絡メールが届く。毎年小嶋さんの命日である10月13日に開催されているが、今年はオンライン開催になるそうだ。『ジードルンク』の第1章「最小住居への道程―エルンスト・マイのフランクフルトのジードルンク・ブラウンハイム」を読み終わり、第2章「水平連続窓と機能性―ヴァルター・グロピウスのジードルンク・デッサウ=テルテン」へ進む。フランクフルト市でエルンスト・マイは、最終的に12,000戸の住宅を実現したが、その中で最大の1,441戸のブラウンハイム・ジードルンクのデザインと建設ブロセスが詳細に紹介されている。ブラウンハイム・ジードルンクは賃貸と分譲が混合したジードルンクだが、分譲住戸は住民によって後に大幅に増改築され、建設当時の姿を留めない状態になっているという。著者の結論はやや前向きである。「それは、技術的、経済的な制約の中で工夫を凝らした建築家たちの試みと、実際にそれを受け入れる住人たちの活力のせめぎ合いが、長い時間の中で生きた建築遺産としての住宅地を生み出したものとも見なせよう」。行政を含めて、スクラップ・アンド・ビルドをくり返してきた日本との大きな違いに注目すべきだろう。


2020年09月27日(日)

曇りで涼しい一日。10時半出社。昨夜、スイスとポルトガルの建築家グループ( Filipe Magalhaes、Ana Luisa Soares、 Ahmed Belkhodja)のfala(https://falaatelier.com)からメールが届く。現在、彼らはカナダのトロント大学建築学科で教鞭を執っている若い建築家である。日本人のスタッフもいるのだろうか、日本語文も併記されている。1960年代から1990年までの日本の住宅建築に関する本を出す準備をしているので、僕の「若宮山荘」(1987)と「中田邸」(1992)の資料を送って欲しいという依頼メールである。かなり以前の仕事なので、本棚から抜刷ファイルを探し出し、雑誌の抜刷りをスキャンしてデータを返信する。一旦帰宅し、暑い風呂に入った後にベッドの中で読書と仮眠。15時過ぎに再び出社する。16時前に岩元真明さんが福岡から来所。『建築雑誌』2021年2月号の特集「建築の豊かさを問い直すーローコスト建築の諸相」の取材で、明日〈世田谷村〉に赴き、石山修武さんにインタビューするために上京したとのこと。主にプノンペンの〈ヒロシマハウス〉についていろいろ聴いてみたいそうだ。僕も東大にいた頃、研究室のメンバーを連れてホーチミン大学で国際ワークショップを開催したが、その合間にプノンペンまで足を伸ばして〈ヒロシマハウス〉を見学した。さらに隣地に建つナーリさんの家で建設経過についていろいろな話を聴いた。ナーリさんは浅草の出身で〈アジアのフーテン〉を自称し、地雷で脚を失った人のために、リヤカーを改造した車椅子のような荷車を作っていた。〈ヒロシマハウス〉の建設ワークショップの参加者は石山さんも一緒にナーリさんの家に寝泊まりしていたそうだ。たまに日本に帰ってきた時には、浅草で一緒に酒を呑んだこともある。その後、連絡が途絶えていたが、癌で亡くなったことを後に石山修武さんからの情報で知った。完成後の〈ヒロシマハウス〉はナーリさんが管理していたが、その後はどうなっているのだろうか。岩元さんとは互いの近況について話す。現在、マンションをリノベーションする自邸をデザインしており、リノベーションにおける内断熱と結露の実験を試みるそうだ。僕からは断熱材と下地RC間の配線配管ルートの気密性の確保についてアドバイスする。17時半に解散。夜はNHKTVでCOVID-19特集を観る。アジア諸国では、とりわけ観光業が大きな打撃を受けているようだが、テレワークを契機にそれをいかにポジティブにとらえるかを模索していることが印象に残る。


2020年09月26日(土)

曇り後小雨の肌寒い一日。8時半出社。「169菅野邸」のスケッチを少々。10時過ぎに事務所を出て渋谷経由で湘南新宿ラインに乗車。車内で昨日のzoom会議の記録をまとめて日記に書き込む。12時過ぎに籠原駅着。改札口で川島範久さんと能作文徳さんに遭遇する。昼食を摂ってから「164U邸」に向かうというので僕は早めに向かう。12時半に木村と戸田が到着。U夫妻に挨拶したのちに。駐車場に受付机を設置し、署名簿、アルコール消毒、手袋、非接触体温計を準備して13時からオープンハウスの受付開始。出足はそこそこだったが、14時を過ぎると徐々に人数が増えてやや過密になる。『建築雑誌』編集委員の川嶋さん、能作さん、小見山陽介さん、長澤夏子さんが到着したので、製本図面を見ながら説明。富山から山手工務店の山手さんが来たのにはびっくり。界工作舎OBOGでは東端桐子夫妻と栃内が来る。「箱の家147」の小暮一家と「箱の家153」の檀上一家も来所。東大建築学科の卒業生も数人来たので概要説明。戸田の友人やシグマ建設関係の人たちも多い。シグマ建設の社長の紹介で帽子職人が僕に帽子を作ってくれるというので頭を採寸してもらう。15時過ぎに中谷礼仁さんが来る。現在、自邸を設計中だそうで、界工作舎OBで早稲田大講師の中川純さんが設備システムのデザインを協力しているので、参考のために訪れたそうだ。まもなく僕の妻、娘、孫も着いたのでU夫妻と中谷さんに紹介。中川さんは奥さんと2人の娘を連れて来所。僕に代わりに中谷さんに空調設備システムの詳細について説明してもらう。17時前に片付けを始め、17時に終了。U夫妻にお礼の挨拶をし、車で籠原駅まで送ってもらう。高崎に帰る木村と別れ、池袋で戸田とも別れて19時前に表参道着。途中で簡単な夕食を摂り17時半に帰社。荷物を整理して帰宅。すでに帰宅している妻としばらく今日の感想を聴く。概ね評判は良いようだ。ウィスキーを飲みながら一日を回想。すっかり涼しくなったので、アクアレイヤーを冷房モードから暖房モードに切り替えてウォーミングアップする。『ジードルンク』を読みながら早めに就寝。


2020年09月25日(金)

雨のち曇りの肌寒い一日。8時半出社。今日さらに2人、明日の「164 U邸」のオープンハウス参加希望者が加わる。参加者リストをまとめてクライアントのUさんに送信する。〈KENCHIKU〉編集部から最終のゲラ原稿が届いたので、一部だけ加筆校正して返送する。「169管野邸」の基本計画がある程度まとまったので、敷地、クライアント、プログラムの概要に関する説明コメントを添えて、佐々木構造計画に来週中の構造打ち合わせを依頼するメールを送る。間もなく佐々木睦朗さんから返事が届き、来週末に打ち合わせを持つことに決まる。鉄骨造ならば何とかなりそうだが、集成材構造では課題が多そうだ。来週の打ち合わせまでにスケッチしてみよう。16時から『建築雑誌』2021年1月号の特集「新型コロナ禍」に関するzoom 座談会の開始。加藤耕一さんの司会で、編集委員全員が参加し、1)全体編、2)教育編、3)仕事編、4)生活編というテーマで、順番に1時間ずつ意見交換する。1)では、まず一般論として、僕はイタリアの哲学者ジョルジュ・アガンペンを引用して、政府や行政には国民の移動と集会の自由を制限する権利はないし、ましてや死者を弔う権利を奪うことは言語道断ではないかと主張する。それに対して弁護士の岡本さんは、僕の主張は憲法に明記されている基本的人権であること、それを制限できるのは災害基本法や感染症予防条例だが、そこには基本的人権の制限は謳われていないと指摘する。引き続き僕からはCOVID-19 は大都市とコンパクトシティの再考を促すだろうと指摘。テレワークの普及によって、最近は地方への移住者が増加しており、都市と地方の二重生活の可能性が前向きに検討されているという指摘に対して、僕は19世紀のエベネザーハワードが提唱し田園都市の考え方に基づいて実現したレッチワースの取材を紹介しながら、1960年代にアーサー・C・クラークが提唱した〈地球村〉の失敗からも明らかなように、地方での職住一体化はうまく行かないだろうと主張する。2)の教育については、テレ授業の可能性について議論が展開する。デザイン教育における3Dデジタルによるスタディと模型によるスタディの比較論に関する議論では、僕は2009年の建築教育国際会議で展開された、3Dデジタルと模型の比較論争を紹介する。若い編集委員は、デジタル技術はここ10年間で大幅に進歩しているので、当時の議論は通用しないのではないかと反論するが、僕の考えでは、確かにデジタル技術の進歩は目覚ましいけれども、デジタル情報と模型の情報とは質が違うし、人間の感性は容易には変化しないだろうと反論する。3)の仕事編については、ほとんどの編集委員がテレワークによるオフィス空間の多様な変化について紹介する。それに対して、僕は仕事と生活を分けるという前提自体に疑問を呈し、僕が育った町屋での経験を紹介した上で、都市における職住近接住宅の再評価を主張する。最近のメディアでは、住まいに仕事を持ち込む職住融合住宅が議論されているが、それは職住近接住宅とはまったく異なると主張する。この問題に関して女性委員からジェンダーの問題提起がなされたが、確かに女性の仕事の仕方について、新たな角度からの検討が促されるべきであるのは確かだろう。4)ので議論は続いたが、19時になったので〈アフタートーク〉のzoom 会議に切り替える。小見山さんの司会で滋賀県立大の川井操さんへのインタビュー。Dot architects設計の大阪のリノベーション建築〈千鳥文化〉に関する議論だが、参加した板谷敏正さんが、クライアントの組織について調べた情報を紹介して、議論は一気に拡大する。議論は建築そのものを地域に結びつける方向へ展開する。20時に終了。木村から、来週から通常勤務に戻ることとし来週初めに「166 K邸」の敷地調査に向かう旨のメールが届く。戸田と明日のスケジュールを確認して21時半に帰宅。シャワーを浴びた後、lPadで「169管野邸」の図面を観ながら夜半就寝。


2020年09月24日(木)

曇り一時雨の涼しい一日。8時半出社。国勢調査の書類が届いたので、オンラインで調査事項を書き込む。〈KENCHIKU〉編集部から校正原稿が再度、届いたので一部加筆校正して返信する。ニチハ・サポートセンターから催促メールが届いたので〈NICHIHA SIDING AWARD 2020〉の総評に取り組む。今年は応募数が例年よりも多かったこと、全体としてレベルがかなり高かったことなどを、具体的な作品評に絡めて2枚弱書く。15時までにまとめてサポートセンターに送信する。甲府のNさんからメールが届き、連休を挟んだために「167 N邸」の銀行のローンの審査結果が出るのが少し遅れそうだとのこと。敷地代金を精算しなければならないので、予定の10月1日の着工は1週間ほどずらす必要があるようだ。直ちにその旨を藤忠にメール報告する。したがって根切工事は10月の第2週になりそうだ。夕方までに戸田が「167 N邸」のプレカット図をチェックし終わったので、コメントを加えて藤忠に送信する。細部まで描き込まれた加工図だから、大きな間違いは起こらないと思われるが、構造軸組がすべて表し仕上なので、間柱の欠き込みに注意するように指示する。 木村から「169菅野邸」の基本図一式が届く。明日、チェックバックする旨を返信する。来週には佐々木構造計画に相談しよう。『ジードルンク』の第1章「最小住居への道程―エルンスト・マイのフランクフルトのジードルンク・ブラウンハイム」を読み続ける。エルンスト・マイがシュレージェン地方のブレスラウから故郷のフランクフルト・アム・マインに戻るのは1925年である。市の建築局長としてジードルンク建設を積極的に推進し、1929年には「生活最小限住居」をテーマとする第2回CIAM(Congrès International d'Architecture Moderne 近代建築国際会議 )の開催を先導した後に、1930年にはソ連に移住する。マイがフランクフルトでジードルンク建設に取り組んだのは5年間だが、この短期間に大量の住戸を供給している。マイの活動については2点だけ気になることがある。ひとつは第2回CIAM会議のテーマ「生活最小限住居」は、第2次大戦後の日本のモダニズム建築家たちにも大きな影響を与えたことである。僕の師である池辺陽は「生活最小限住居」のコンセプトを元に「立体最小限住宅(住宅No.3)」を設計している。もうひとつは、フランクフルトでのマイの活動と、1924年にフランクフルトに設立された〈社会研究所〉(フランクフルト学派)との関係についてである。しかしマックス・ホルクハイマーやテオドール・アドルが〈社会研究所〉に加わるのはエルンスト・マイがフランクフルトを去る1930年以後なので、直接的な出会いはなかったのかもしれない。


2020年09月23日(水)

雨が降り続く涼しい一日。連休明けのせいで頭が少々ぼんやりしている。連休中に、今週末の「164 U邸」オープンハウスへの参加申し込みが何人か加わったが、全体として人数はそれほど多くない。それでもクライアント候藤になりそうな参加者が数人いるのでじっくりと対応しよう。藤忠の遠山社長から、先週末に実施した「167 N邸」の敷地地盤調査の報告書が届く。予想はしていたが、水田を造成した土地なので支持耐力はあまりない。それでも砂利で敷き固めている地盤なので「箱の家」のベタ基礎ならば耐力的に問題はないという結論である。実施設計の構造仕様のまま進めるように藤忠に返信する。引き続き午後にプレカット図が届いたので、チェックするように戸田に指示する。小川建設から一昨日に届いた「166 K邸」の工事契約書と見積書のチェックバックが木村から届いたので、工事契約の手順に関するコメントと併せて小川建設に転送する。木村から「169菅野邸」の基本図が届いたのでチェックバック。2階の屋根について再検討するように依頼する。『建築雑誌』編集部から11月号の連載「建築的時間の4層構造」のゲラ原稿が届く。文字数が大幅にオーバーしているので、思い切って削減して返信する。直ちに修正原稿が届いたので、再度校正して返送。12月号の連載も締切が迫っている。法政大学の下吹越武人さんから「建築の4層構造」を応用した卒業論文へのアドバイスを依頼するメールが届く。大学4年生なのであまり期待はできないが、どんな解釈をしているのか興味があるので来週の来所を返信する。『ジードルンク』は序章「ジードルンクとは何か」を読み終えて、第1章「最小住居への道程-エルンスト・マイのフランクフルトのジードルンク・ブラウンハイム」へ進む。序章では1919年の第一次大戦終戦からナチスが政権を取る1933年までのドイツのジードルンクの展開の歴史が辿られている。「合理主義に立脚し、線や面、ヴォリュームという抽象的な要素の構成による美学をよしとする、社会改革に裏打ちされた建築運動」というDOCOMOMOによる建築のモダンムーブメントの定義が記憶に残る。ジードルンクの計画は、英国のエベネザー・ハワードの田園都市構想に大きな影響を受けたらしい。しかし技術や構法の面では、RC造や鉄骨造はわずかで、依然としてレンガ造が大多数だったようだ。


2020年09月22日(火)

晴れのち曇り、夜は小雨の涼しい一日。5時過ぎに目が覚めて、突然、8月に前田工学賞と研究助成の募集が始まっていることに気がついたので、募集要項をfacebookにアップする。建築部門と土木部門は例年通りだが、今年度からI-Construction 部門が加わったことを表示する。7時半起床。9時出社。昨日小川建設から届いた「166 K邸」の工事契約書をチェックし、間違いがないことを確認したので工事契約の手順についてKさんに確認メールを送る。明日、木村のチェックを待って小川建設に連絡しよう。『ジードルンク』を読み始める。1920年代のワイマール時代のドイツ各地に建設された集合住宅のことを〈ジードルンク〉と呼ぶ。ジードルンクはモダニズムの中心的な建築で、1929年から1933年のナチス政権の成立までの短期間に集中的に建設されたようだ。午後は帰宅し暑い風呂に入った後にiPadで建築学会から依頼された査定論文を読む。若い研究者のせいか、あるいは研究対象に引きずられたせいか文章が読みにくい。何とか読み通し頭を整理する。今週中には査定結果を送ろう。17時過ぎに家を出て日比谷のTOHOシネコンへ。18時から『TENET』(クリストファー・ノーラン:監督 2020)を観る。館内はほぼ満席、とはいえ座席は一席置きだから定員の半数である。ストーリーは複雑怪奇でほとんど理解できない。確かなことは、テーマが〈時間〉であること位である。〈時間の矢〉の方向を決定しているのは、熱力学の第2法則、すなわちエントロピー増大則だが、エントロピーを制御するアルゴリズムを持っている何者かによる世界滅亡の目論みを防止するというSF大作である。時間の巡行と逆行が同時並行的に描かれる細部の映像はエキサイティングだが、全体のストーリとの関係が読み取れないのでイライラする。処女作の『メメント』から始めて『インセプション』『ダークナイト』『インターステラー』を通して観て分かることは、クリストファー・ノーラン映画のテーマが、一貫して〈時間〉あるいは〈記憶〉であることを改めて確認した映画である。


2020年09月21日(月)

曇り後晴れの涼しい一日。いよいよ秋になったようだ。9時出社。しばらく間をおいたので「165 箱の長屋」と「166 K邸」の図面をじっくりと検討してみる。「166 K邸」は「箱の家」としては完成形に近い構成になっている。「165 箱の長屋」は依然として未完成な印象がある。というか「箱の家」の集合体なので構造や設備システムに難しい条件がいくつか残っている。もう少しスタディをくり返すべきかもしれない。夕方に小川建設から「166 K邸」の工事契約書のたたき台と最終見積書が届く。直ちにKさんと木村に転送し連休明けにチェックバックするように指示する。13時に事務所を出て渋谷の東急文化村のル・シネマ2へ。13時半から『シチリアーノ』(マルコ・ベロッキオ:監督 2019)を観る。1980年代から2000年代にかけてのシチリア島パレルモでの麻薬集団の抗争史をドキュメンタリータッチで描いた大作である。イタリアとドイツの共作であるのは、ヨーロッパでそれだけ興味を持たれているテーマなのだろう。主人公ブシェッタの個人史と絡めて、ほとんどが刑務所での尋問や裁判のシーンなので、シチリアの風景はわずかしか出てこない。秘密集団である犯罪組織〈コーザ・ノストラ〉の幹部であるブシェッタが、コルレオーネの集団〈マフィア〉の犯罪を法廷で告発する経緯が描かれているのだが、僕には細かな歴史的経緯はよく理解できない。16時過ぎに終了。17時帰社。Amazonから『ジードルンク 住宅団地と近代建築』(海老澤模奈人:著 鹿島出版会 2020)が届いたので、『予想どおりに不合理』は一時休止し、建築の本を先に読むことにする。


2020年09月20日(日)

曇りのち雨、午後から曇りの涼しい一日。7時半起床。8時半出社。iPadと本を鞄に入れて9時前に事務所を出て原宿駅から山手線で新宿に行き9時22分発の中央線特急あずさ号に乗る。戸田とは車内で待ち合わせ。半分程度の乗客。車内では日記をまとめて書き込んだ後は読書。11時4分に甲府着。¬辛うじて雨は止んでいるが蒸し暑い。南口の信玄蔵前で藤忠工務店の遠藤社長夫妻と待ち合わせ。車で約15分で「167N邸」敷地へ。N夫妻と5歳と2歳の男の子2人が待機している。直ちに略式の地鎮祭を開始。僕の司会で、二礼二拍一礼した後に敷地四隅を塩、米、神酒で浄めて約15分で終了。引き続き近所の挨拶回り。ほとんどの家がハウスメーカーの新しい住宅で、住人もN夫妻とほぼ同世代のようである。N夫妻は子供を近くのN夫人の実家に預けに行き、僕たちは藤忠の車で甲府市内の割烹料理店へ向かう。まもなくN夫妻も到着し12時過ぎから地鎮祭祝いの会食。魚料理とビールで話が弾む。明日からN一家は子供たちを連れて上越市立水族博物館に向かうそうだ。日本設計で働いている難波研究室OBの寺崎雅彦さんが担当した建築である。 2時半に会食終了。N夫妻にお別れの挨拶をした後に、藤忠の車で甲府駅まで送ってもらい16時前に甲府駅発のあずさ号に乗車。車内は約6割の乗客。16時半新宿駅着。戸田と別れ17時に帰社。戸田から届いた地鎮祭の写真をfacebookにアップする。明日と明後日は連休なので、久しぶりに映画を見ることにして予約する。昨日プレゼンテーションした坂本さんに「箱の家164」のオープンハウスの案内を送信。『予想どおりに不合理』(ダン・アリエリー:著 熊谷淳子:訳 2013)を読み始める。『〈人間以後〉の哲学」とは対照的な内容で少し違和感があるが、こちらの方がリアリティがある。疲れと酔いで早めに就寝。


2020年09月19日(土)

曇り時々雨の涼しい一日。8時半出社。午前中は明日の「167 N邸」地鎮祭の準備。持参する確認申請認可証、製本した実施図面2部、実施案の模型を確認する。昨日、木村から届いた「169管野邸」をチェックした図面をスキャンして木村に返信する。暖炉の位置や玄関吹抜について再検討する。13時過ぎに鵠沼海岸の坂本謙治さんが来所。直ちに「168坂本邸」第1案のプレゼンテーション開始。設計概要書、基本図面、模型を見せながら概要を説明した後に、何点か質問を受ける。平面計画全体については基本的に要求を満足しているようだが、台所については食器棚、炊飯器、電子レンジ、ミキサーなどの収納場所について細かな注文のチェックを受ける。坂本さんが調理師免許を持っていることは、今日初めて聴いた。平面計画については、ほぼ坂本さんの要求を満足しているが、外装のガルバリウ鋼板や室内床のフレキシブルボードに対して若干抵抗があるようだ。最近の「箱の家」を実見したいといわれたので案内図を送ることを約する。工事費の概算については、ほぼ予想通りとのこと。図面と模型を持ち帰って奥さんの意見も聴いてもらうことにして15時前に終了。戸田に明日のスケジュールを確認して解散。木村から「169管野邸」の修正図面が届いたので再びチェックバック。構造システムについてコメントする。『〈人間以後〉の哲学―人新世を生きる』(篠原雅武:著 講談社 2020)は、第7章「新しい人間の条件―アーレントからチャクラパルティへ」と「エピローグ2020.3.11」を読み終わり、読了。第7章ではハンナ・アーレントの『人間の条件』における事物と人間の関係に関する議論を、著者の〈人間以後〉の視点から「まだ人間中心主義にとらわれている」と相対化し批判している点には〈後出しジャンケン〉のような嫌味を感じる。少なくともアーレント思想へのリスペクトを前提に批判すべきではないだろうか。ブルーノ・ラトゥールのANT(アクター・ネットワーク理論)も引用されている。確かにラトゥール思想は著者の主張に近いかもしれない。各章の冒頭に著者自身の体験が綴られ、時折、音楽やアートに関する個人的感想が挟まれている。文献の読解だけでは説得力がないと考えたのかもしれないが、本書のテーマである事物と人間の関係にはなかなか結びつかず、閑話休題という感じである。現代思想を総浚いしたような内容なので、大変勉強にはなったが、全般的に振り下げが足りず、論理的というよりも感覚的で、意図的とはいえすべて自分の興味に引き寄せて読み解くことに終始している点で一貫している、というか牽強付会的な主張に終始しているというのが正直な読後感である。


2020年09月18日(金)

曇り後晴れで残暑がぶり返した蒸し暑い一日。戸田は今朝一番に新宿の審査機関に赴き「167 N邸」の確認申請認可証を受け取り、その足で長期優良住宅の申請を提出するために甲府市役所へ赴く予定。認可証を受け取って新宿を出発する時、甲府市役所で申請書を提出する時、提出が終わって甲府駅を出る時に、その都度連絡を受け、Nさんにメール報告する。「165箱の長屋」と「169菅野邸」の今後のスケジュールについて木村とメールで打ち合わせ。「169菅野邸」のプレゼンテーションの準備に10月中の2週間を確保し「165箱の長屋」の見積用図面を11月末までに完了するスケジュールとすることを確認。このスケジュールを報告し、併せて地盤調査や既存住宅の図面の手配を依頼するメールを田中会計士に送信する。まもなく松江の菅野紘さんからメールが届き、敷地測量の手配をしたとのこと。プレゼンテーションの準備までに間に合えばいいのだが。木村がまとめた「169菅野邸」の図面をチェック。暖炉の位置についてスタディを繰り返す。15時から近現代建築資料館の企画小委員会の準備web会議。引き続き15時半から企画小委員会のweb会議。企画委員には今まで通り女子美大の太田泰人さんと国士舘大の国広ジョージさんが残り、武蔵野美大の柏木博さんと東工大の安田幸一さんが抜け、新たにパナソニック汐留美術館の大村理恵子さんと京セラ美術館の前田尚武さんが加わっている。議題は先日の運営委員会とほぼ同じだが、相変わらず資料館のパソコン環境が悪く、画面はボケてパタパタ漫画のようだし、声は途切れ途切れなのでまったく会議にならない。とりあえず資料館の画像を消し、声だけで会議を進めて45分で終了。まったく神経をすり減らされるweb会議である。17時過ぎに戸田が帰社したので、明日の「168坂本邸」のプレゼンテーションの準備。設計要領を見直し、図面と模型をチェックする。建報社から届いた〈KENCHIKU〉の連載のゲラ原稿が届いたのでチェックバック。連載のタイトルは「現代住宅をめぐって」とする。『〈人間以後〉の哲学』は第5章「人間の覚醒―柄谷行人」、第6章「地下世界へ―フレッド・モートン」を読み終わり、第7章「新しい人間の条件―アーレントからチャクラパルティへ」に進む。第5章では、柄谷行人のカント解釈についての議論が展開している。著者は柄谷に倣って、カントの認識論の〈コペルニクス的転回〉を、通説の人間中心の相関主義的認識論ではなく〈物自体〉の提唱にあるという解釈を踏襲している。メイヤスーに代表される〈思弁的実在論〉は、カントの相関主義的認識論の克服をめざしているにもかかわらず、その根拠として〈物自体〉に注目するというのは皮肉というしかない。なぜならカントにとって〈物自体〉は、相関主義的認識論を成立させる根拠としての〈余白〉あるいは〈残余〉であり、ウィトゲンシュタインのいう〈語り得ぬもの〉のような存在だからである。カントが提唱し、柄谷が再認している〈視差parallax〉の概念に注目している点も興味深い。


2020年09月17日(木)

秋雨前線のせいで薄曇りだが昨日よりもやや蒸し暑い一日。8時半出社。9時過ぎに事務所を出て、竹下通りを原宿駅に向かい、竹下口が見える途中で左折して坂を上り、6月に開業した〈ウィズ原宿(WITH HARAJUKU)〉の裏口から入り、さらにエスカレーターで上って表通りに通り抜けると原宿駅表参道口の前に出る。〈ウィズ原宿〉の地上レベルは裏原宿の竹下通りからかなり高い位置にあることが分かる。予約しておいた9月20日(日)の甲府行の特急券を改札口で受け取り、表参道を下って9時半過ぎに帰社。確認審査機関に「167 N邸」の確認申請認可について改めて問い合わせたところ、審査が立て込んでいるため認可は明朝になるとの回答。甲府のNさんにその旨をメール報告すると、認可証は地鎮祭の際に持参してくれればいいという返信メールが届く。しかし甲府市役所への長期優良住宅の申請は、着工前に済ませる必要があるため、明朝に確認申請の認可証を受け取ったら、その足で甲府市に向かうように戸田に指示する。はりゅうウッドスタジオの滑田崇志さんからメールが届き〈KAMAISIの箱〉がどうやら廃棄を免れることになったようだ。9月30日に滑田崇志さんが現地に赴き、釜石市役所から説明を受けた上で、はりゅうウッドスタジオか芳賀沼製作所が建物を譲り受けることになりそうだとのこと。その際にはPR45の新藤典子さんも立ち会うそうだ。『建築雑誌』2020年12月号のアフタートークの記事に、担当の小見山さんが『建築雑誌』2018年5月号の建築批評「dot architects《千鳥文化》」をとり挙げるので、篠原雅武が寄稿した「千鳥文化の感覚 ― 軽さ、ガラスの壁、地域からの自立をめぐって」を読んでみる。淡々とした建築批評を通して、建築家が地域に根付くような建築を提案する時代は終わり、建築が自立する時代になったことを指摘している。『〈人間以後〉の哲学』は第3章「人間から解放された世界―ティモシー・モートン」、第4章「人間以後の哲学―グレアム・ハーマン」を読み終わり、第5章「人間の覚醒―柄谷行人」に進む。篠原は『自然なきエコロジー』(ティモシー・モートン:著 篠原雅武:訳 以文社 2018)の訳者なので、モートン思想に対する思い入れが強いようで、オブジェクト指向存在論(object-oriented ontology:OOO)を提唱したグレアム・ハーマンについて論じた第4章においてもモートン思想の紹介が続いている。とはいえ人間よりも事物に重きを置く立場から思想を読み解こうとするスタンスは変わらない。


2020年09月16日(水)

曇りで涼しい一日。8時半出社。昨日に引き続き『建築雑誌』11月号連載原稿「建築的時間の4層構造」を続行する。各層の時間のあり方について詳細に説明した後、しばらくの間問題点を整理してから、最近の実在論の思想潮流に引き寄せて、第1、2層のハード性と第3、4層のソフト性における時間の様相の相違について比較対照を行い10枚近く書いて完了。思弁的実在論についてはあまり言及せず、あくまで建築的時間の実在性と相関性に引き寄せて論をまとめる。午後、改めて読み直した上で『建築雑誌』編集部に送信する。引き続き12月号の連載テーマについて考える。既存建築のストックに関する特集で、何度か取材にも付き合ったのでリノベーションやコンバージョンについて書くのがいいかもしれない。以前〈リノベーション的視点〉について論じたことがあるので、そのトピックを展開させることを考える。午後、木村がテレワークから久しぶりに出社したので打ち合わせ。まず「166K邸」の確認申請の進行状況について報告を受ける。確認申請が一区切りついたので、引き続き長期優良住宅の申請に進む。「165箱の長屋」の空調システムと仕上材料について意見交換。基本的に〈箱の家〉の標準仕様に倣って実施設計を進めるが、賃貸住宅なのでメンテナンスの条件も考えねばならない。引き続き、松江の「169菅野邸」のスケッチを見ながら設計条件について説明する。図面がまとまった時点で一度、佐々木構造計画に相談する必要があるだろう。戸田が製作中の「168坂本邸」第1案の模型をチェックする。塀を加えて完成させ、写真撮影を行うように指示する。『〈人間以後〉の哲学―人新世を生きる』は第1章「世界の終わり?」第2章「世界形成の原理―ガブリエルとメイヤスー」を読み終わり、第3章「人間から解放された世界―ティモシー・モートン」に進む。読みやすいが、かなり感覚的な文章で学生向けの思想入門書に思える。マルクス・ガブリエルやカンタン・メイヤスーについては僕も若干勉強したが、著者の読解は彼らの論理性をほとんど無視して感覚的にとらえているようだ。思弁的実在論とアートや音楽との関係について論じているのだが、それが人間性を超越しようとする実在論とどう関係するのかがいまいち理解できない。人間から逃れようとしながら人間に留まろうとするアンビバレントな議論が延々と続くので、やや食傷気味である。


2020年09月15日(火)

曇り一時晴れの涼しい一日。世田谷のKさんからFAXで「箱の家144」の検査済証が届く。スキャンデータを木村に送信するが、建築計画概要書のコピーも必要だという返事が届いたので、検査済証一式の送付をKさんに依頼する。木村は明日、世田谷区役所に向かい、確認申請の手続きをする予定である。TVディレクターの湯沢信夫さんから9月13日(日)に「渡辺篤史の建もの探訪」の撮影を行った「159吉村邸」が、TV朝日では11月14日(土)4:30-5:00amに放送されるという周知メールが届く。BS朝日では翌日11月15日(日)8:30-9:00amに再放送があるようだ。吉村夫人のfacebookには渡辺篤史のプロフィール写真と楽しい撮影の様子が報告されている。『建築雑誌』11月号の連載原稿「建築的時間の4層構造」を書き始める。「建築の4層構造」のマトリクスに時間(歴史)を加えて、各層の時間の様相について説明することから始める。途中で気分転換のために『〈人間以後〉の哲学―人新世を生きる』(篠原雅武:著 講談社 2020)を読み始める。著者は建築や空間に興味を持つ若い哲学者なので、いくつか論文を読んだことがある。総じて難しい思想を易しい言葉で噛み砕いて説明する哲学者という印象で、目次に柄谷行人の名前を見つけたので読んでみる気になった。時間についても参考になりそうな所見がありそうである。今週末の「168坂本邸」第1案プレゼンテーションのために設計要旨をまとめる。二世帯住宅と住み替えの変化に対する「箱の家」のコンセプトの適用であることと構法と仕様について少し詳しく記説明し、スケジュールは設計期間、工事費は概算を記すだけに止める。〈タニタハウジングウェア〉から『図解 雨仕舞の名デザイン』(堀啓二:著 学芸出版社 2020)が届く。以前に真壁智治さんの紹介で僕も短い論考を書いたことがある。堀さんの手描きの説明図が写真よりもずっと分かり易いのが特長である。


2020年09月14日(月)

曇り後雨の涼しい一日。いよいよ秋だろうか。8時半出社。「169菅野邸」のスケッチ見直しを少々。10時半から近現代建築資料館のweb運営委員会開始。今年度から運営委員会と小委員会のメンバーが一部入れ替わり、運営委員会から松隈洋が、企画小委員会から柏木博が抜けている。浅田副館長に理由を問うと、就任期間が長いのでという曖昧な回答である。松隈さんはコアメンバーだったが、自分の意見が通らなかったので辞任したのかもしれない。僕は開館当初からの運営委員だが、創設者の鈴木博之は6年前に亡くなり、石山修武も鈴木がいないのではしょうがないと早々に辞めた。名誉館長の安藤忠雄は委員会にはまったく出てこない。僕は鈴木の遺志を継いで今まで居残ってきたが、そろそろ辞めどきかもしれないと考えて、今年一杯で退任したい旨を館に伝える。運営委員会はオリンピック開催に並行して予定していた丹下健三展の開催延期、所蔵品展の計画、資料の受け入れ状況などについて議論が進む。COVID-19によって展覧会の開催条件が大きく変わったので、資料のデジタル化について意見が噴出する。建築図面の収集を主とする建築資料館なので、デジタル化というテーマが浮かび上がるのは当然だろう。しかし図面よりも現実の建築に注目するならば、デジタル化はデザイン段階での手段であり、その問題について僕は『建築雑誌』10月号の連載に「デジタル・ターンの記号問題を書いた。資料よりも現実の建築を重視するという僕自身の立場からも、建築資料館の委員はそろそろ辞めどきに思える。富山の横山天心さんから依頼されていた「162酒井邸」のプレゼンテーション図面と写真一式を横山さんに送る。『建築雑誌』11月号の連載原稿「建築的時間の4層構造」のスケッチ続行。ようやく光明が見えてきたので、明日から本格的に取り組もう。16時のネットニュースで、安倍晋三を引き継ぐ自民党新総裁の選挙で、菅義偉(よしひで)元官房長官(71)が予想通り534票のうち377票を獲得して新総裁に選出されたことを知る。岸田文雄は89票、石破は68票なので、菅の圧勝である。次の興味は組閣だが早々と二階幹事長と森山国会対策委員長の留任が決まったことには些か気分が萎える。木村と「166 K邸」についてメールのやり取り。確認申請には、隣接する「箱の家144」の検査済証を添付する必要があるので、Kさんにその旨をメールする。『習慣の力』は第9章「習慣の功罪―ギャンブル依存は意志か習慣か」「付録―アイデアを実行に移すためのガイド」「ペーパーバック版あとがき」を一気に読み通して読了。第9章は夢遊病の一種である〈夜驚症〉によって自分の妻を殺した事件と、〈ギャンブル依存症〉が昂じて自己破産した事件とを比較しながら、裁判では前者が無罪、後者が有罪となった経緯について説明している。〈夜驚症〉と〈ギャンブル依存症〉はどちらも〈習慣病〉の一種だが、前者は本人の意志とは関係なく習慣が衝動的な行動を引き起こすのに対して、後者は本人の意志が引き金になって習慣が引き起こされる。要するに、前者は本人の意志で止めることはできないが、後者は本人が〈ギャンブル依存症〉であることを自覚しているので意志で止めることできる可能性があるからある。本章では再び習慣を生み出す脳の部位、大脳基底核と脳幹の働きに関する議論が展開される。著者は最後に、プラグマティズムの創始者で心理学者のウィリアム・ジェームズの有名な言葉を引用している「私たちの生活は全て、習慣の集まりに過ぎない」「信じようとする意志こそが〈変化を起こせる〉という信念を築くのであり、そのもっとも重要な方法は習慣である」。結論はややノウハウ的だが、感心したのは著者の徹底した調査による実証主義である。建築を通じて日常生活の習慣を構築すること。それが建築のもっとも重要な働きであることを再認識する読書だった。


2020年09月13日(日)

曇り後晴れの蒸し暑い一日。8時起床。9時半出社。10時半に事務所を出て表参道から千代田線で乃木坂駅にて下車。国立新美術館の裏を通り、六本木トンネルを抜け、信号を渡って直ぐの道を左折し、そのまま緩やかな坂を上って、約30分で赤松佳珠子+大村真也/CAt設計の〈ROPPONGI TERRACE〉のオープンハウスに到着。西側の密集住宅地側からアプローチする旗竿敷地だが、進入路を隣家と共有しているので幅員は4mある。すでに多くの見学者が訪れて、ごった返している。赤松佳珠子さんに挨拶し、簡単な説明を受ける。RC壁構造3階建てのワンルームアパートで、アプローチのある西側に南北に共有廊下と階段を通し、東西に抜けるワンルーム住戸4戸を並列配置している。敷地東側はGLが一段高い区立公園なので、各階のスラブを東に向かって傾斜した逆スラブとし、住戸の床レベルを東に向けて階段状に上げることによって、住戸内の空間を緩やかに仕切っているのがミソである。逆スラブと床の間に配線・配管を通し、天井は斜めのスラブをそのまま仕上にしている。内外共にRC打放し仕上だが、型枠にOSBパネルを使っているので、表面にラフな模様が残っているのが興味深い。各住戸の公園側の開口にはCAtの常套手法である折畳み横引サッシが使われ、全面開放している。全体としてかなりコストがかかっているように推察されるが、六本木の都心一等地にふさわしいワンルームアパートである。賃貸料は1坪当たり2万円以上として、おそらく月額25万円は下らないだろう。入居するのは若いエリート夫婦だろうか。都心のアトリエとして使う人もいるかもしれない。会場ではたくさんの若い建築家や建築ジャーナリストに会い、懐かしい顔も混じっているので、あちことで立ち話をしたが、僕の世代の建築家には出会わなかった。東側の公園に回ってしばらく外観を眺めた後に12時過ぎに会場を発つ。12時半帰宅。『建築雑誌』11月号連載原稿のスケッチを少々。シャワーを浴びてからしばらく仮眠と読書。『習慣の力』は第8章「公民権運動の真相―社会運動はどのようにして始まるか」を読み終わり、第9章「習慣の功罪―ギャンブル依存は意志か習慣か」に進む。第8章では人種差別撤廃の公民権運動や宗教の布教の成功は、コミュニティ内の人間関係の〈強いつながり〉と〈弱いつながり〉が渾然一体となって醸し出される〈社会的な義務感(ピア・プレッシャー)〉によって生まれることが明らかにされる。どちらも運動の〈社会習慣化〉に根ざしているのである。


2020年09月12日(土)

雨が降り続く涼しい一日。8時半出社。甲府のNさんから「167N邸」の銀行ローンの最終申込を済ませた旨のメールが届く。着工は審査が正式に認可される2週間以降にするようみ近郊から指示されたとのことなので、地鎮祭は形式的な着工であることと、地盤調査はローン認可以降とする旨を返信し、工務店の藤忠にも転送する。「169菅野邸」のスケッチ続行。いつものように1/00のスケールで手描きで平面図をまとめる。11時半に週末の所内打ち合わせ。戸田と「168坂本邸」のプレゼンテーション模型について打ち合わせ。来週前半には完成するだろう。「167 N邸」の確認申請認可を受けた後に長期優良住宅申請のために甲府市役所に行くことを確認する。15時までに「169菅野邸」のスケッチ図面がまとまったので、敷地写真と一緒にdropboxに入れ、その旨を木村にメール報告する。16時から〈住宅遺産トラスト・オンライントーク〉の第1回が開始。吉村順三が設計した〈旧園田高弘邸(1955)の暖炉脇に写真家の藤塚光政さんが座り、増築棟にいる編集者の伏見唯さんの司会によって、〈園田邸〉の内外をビデオ紹介した後に『日本の住宅遺産 名作を住み継ぐ』(伏見唯:著 藤塚光政:写真 世界文化社2019)の写真を紹介しながら、伏見さんと藤塚さんが対談。藤塚さんの写真を見ながら、陰影のコントラストや人物の配置の巧みさに感心する。17時半終了。写真に暖炉が何度も出てくるので、思わず「169菅野邸」に暖炉を入れていることを忘れていたことに気づき、図面に描き込む。2階平面はリビングを中心に置き、幅5.4m、奥行7.2mを確保しているので、壁際中央に難なく暖炉を配置できる。17時帰宅。『習慣の力』は第7章「買わせる技術―ヒット商品を自在に生み出す秘策」を読み終わり、第8章「公民権運動の真相―社会運動はどのようにして始まるか」に進む。第7章はビッグデータの統計処理によって顧客の買物の傾向を割り出す情報技術の紹介である。買物の傾向はほとんど習慣によって決まるので、妊婦であることもほとんど統計処理によって推測できるようである。人生の中で生活習慣が大きく変わるのは子供が生まれる時であることや、新しい習慣の提案は古い習慣に関係づけると根付きやすいという指摘が興味深い。若い夫婦のための「箱の家」を何度か設計してみた経験によれば、夫婦の子供の誕生は「箱の家」の完成の直前か直後であることが分かったが、その理由がなんとなく腑に落ちた。住まいの新築は子供の誕生と同じように、家族の習慣の大きな再編成の契機なのである。家早何友。


2020年09月11日(金)

快晴で蒸し暑い一日。8時半出社。昨日に引き続き「169菅野邸」のスケッチを続行する。1階を駐車場とゲストルームにするプランは同じままで、2階は昨日の案を逆転させて、共有部分を南に、寝室と浴室を北に置く案を試みる。しかし1階からの縦動線が北側にあるため、2階のプライバシーの勾配がうまく配分できない。やはり昨日の案が合理的だという結論に至る。13時半から来週月曜日に開催される近現代建築資料館 運営委員会のwebによる事前説明会を開始。浅田副館長、調査官の川向正人と加藤道夫が参加する。送られてきた議事進行メモを見ながら説明を受けるが、資料館のPCの性能あるいはWiFiの容量不足のせいで画像がボケてパタパタ漫画のようになる。これでは会議にならないので30分で終了。本委員会もzoomなので、それまでに改良しておくように要請する。『建築雑誌』11月号の連載原稿スケッチ再開。〈建築の4層構造〉にしたがって〈建築的時間〉について書くつもりだが、各層の時間お様相が異なる点をいかに説明するかがポイントになりそうだ。パタンランゲージやアフォーダンス理論を〈ハビトゥス〉の問題に結びつけて時間論に展開する議論について考える。『習慣の力』は第6章「危機こそ好機―停滞する組織をいかに変革させるか」を読み終わり、第7章「買わせる技術―ヒット商品を自在に生み出す秘策」に進む。第6章では、医療事故を引き起こした病院内の因習的な権力構造や、火災事故を防げなかった地下鉄の官僚組織が、事故を契機にして改編されるプロセスが紹介されている。組織は慎重な意思決定にもとづいて合理的な選択をしているように見えるが、実際には長年続いている組織的習慣によって導かれていることの例証である。今日は2001年9月11日の同時多発テロから19年目で、TV各局で記念式典の映像が流れている。


2020年09月10日(木)

曇り一時雨、後晴れで変わりやすく蒸し暑い一日。8時半出社。気象庁のHPでここ数年の松江の年間気象データを調べる。気温は冬季でも0度以下になることはなく、夏季は30度前後で、総体的には東京とほぼ同じ気温である。しかし年間降雨量は東京よりも350伉度多い。とくに冬季の雨量が多いのはおそらく雪のせいだろうか。日射時間は、東京よりも400時間以上短く、とくに冬季の日射時間が短い。したがって冬季の日射によるダイレクトゲインはあまり期待できないようだ。さらに敷地の南隣家はパチンコ屋なので、視界も日照も期待できないため南方向への開放性には要注意である。風向は、冬季、夏季共に主に宍道湖からの西風で、中間期だけが内陸からの東風である。こうした気象データを与条件にして、改めて「169菅野邸」のスケッチをくり返す。南方向への開放性は部分的にしてスクリーンを立て、西方向への開放性をメインとする。このため夏季の西日制御が重要な課題となる。『建築雑誌』の連載原稿に取り組む気分になかなかなれない。設計のスケッチの方が原稿を書くよりも楽しいからである。とはいえそろそろ本格的に取り組む必要がありそうだ。BS朝日の『渡辺篤史の建もの探訪』の制作プロデューサー湯沢信夫さんから「箱の家159」の取材撮影のシナリオが届く。撮影は今週末の日曜日だそうだ。吉村夫妻から細かな仕様を聞かれたので回答メールを送る。『習慣の力』は第5章「スタバと〈成功の習慣〉―問題児をリーダーに変えるメソッド」を読み終わり、第6章「危機こそ好機―停滞する組織をいかに変革させるか」に進む。第5章では、様々な局面における〈自己制御self regulation〉を〈意志力〉として捉え、メンバー全員の意志力を強化して組織の習慣にすることの重要性が説かれている。納得できる点も多いが、ますます心理学的ノウハウに近くなってきた。というかピエール・ブルデューのハビトゥス論のプラグマティズム版である。


2020年09月09日(水)

快晴で今日も蒸し暑い一日。昨夜はぐっすり寝たので目覚めは爽やかである。8時半出社。昨日撮った写真を「169菅野邸」敷地と〈東光園〉に分ける。前者は敷地の撮影位置で分類する。後者は主要なアングルを10点選んでfacebookに投稿する。流政之の庭園の写真を撮っていないのは、現地で原形デザインであることに確信が持てなかったからだが、どうも原形デザインのままのようだ。植木が繁茂し周囲に建物が建て込んだために印象が変わったらしい。それと僕は流政之に対してあまりいい印象を持っていないことにも一因がある。流政之はイサム・ノグチと同じ花崗岩、庵治石の産地である香川県の屋島にアトリエを構えていたが、イサム・ノグチが屋島の麓に民家を移築してアトリエにしていたのに対し、流政之は屋島の上にアトリエを構えていた。そのスタンスも気に入らなかった。1970年代の初期当時、香川県庁建築課長だった山本忠治さんに案内されて、夕方に流政之のアトリエを訪ねたことがある。ちょうどその時、流はアトリエに前川國男を招いて小さなパーティを開いていた。出席者は前川國男と事務所のスタッフ数人だったと記憶している。広い玄関ホール兼アトリエに入ると、正面に直通階段があり、階段を上ると屋島の台地にそのまま連続するリビングがあった。その階段の上に、逆光に照らされてシルエットの流政之(おそらく演出だろう)の姿が現れ、僕たちを迎えてくれた。そのスタンドプレイに僕は少々辟易とし、流の作風と同じセンスを感じたのである。ちょうど前川が皇居前の東京火災海上ビルを設計している時で、超高層ビルの足元周りの彫刻を確認に来ていたのかもしれない。その時初めて会った前川も巨匠然としていて、あまり印象が良くなかった。東大紛争の直後で20代の僕の感性が好戦的だったせいもあるだろう。そのため無意識のうちに、東光園の庭を避けていたような気もする。若い時に刷り込まれた感性は根深いようだ。「196菅野邸」の敷地写真を見ながらスケッチを開始する。写真を見ながら、前面道路から敷地に上がる斜路の位置を推定し、敷地に描き入れ、建物の外形配置をスケッチし、最初に4台分の車庫を置いてみる。その上で1階のプランと動線をスケッチする。西側の前面道路からの距離を確保し、敷地東側に置かれている巨石の列を避け、駐車場の幅を確保すると、建物の間口と奥行は半ば自動的に決まってくる。一日中スケッチをくり返し、夕方までにほぼ概略を決める。当初、構造は木造で考え、菅野さんにもそう話したが、1階の4台分の駐車場を確保し、2階に広いベランダを確保するには、どうやら鉄骨造の方がふさわしいようだ。それにしても1、2階とも西と南に開放するにはブレースの入れ方が難しい。2階をメインの居住空間にした場合の空調方式も大きな課題である。床下空調システムを適用するかどうかは床の構造に関わるからだ。菅野夫妻の年齢とセカンドハウスという機能を考えると、すべて電化する方がいいかもしれない。今日は課題を炙り出すところで終了する。とはいえ建物配置の最終的な決定には、やはり正確な敷地測量図が必要なので、菅野さんにその旨の依頼メールを送信する。『建築雑誌』11月号の連載原稿の締切はとっくに過ぎているが取り組む気にならない。戸田に「167 N邸」の確認申請と長期優良住宅の申請の進行状況を確認する。長給料住宅の認可を受けるには、着工前に山梨県庁による確認が必要なので、近いうちに甲府に行かねがならない。21時半帰宅。『習慣の力』は第5章「スタバと〈成功の習慣〉―問題児をリーダーに変えるメソッド」を読み続ける。スターバックスの店員の教育システムについての議論が展開するが、徐々に科学的な解説が薄れてノウハウ本のような様相になってくる。


2020年09月08日(火)

台風一過、快晴でピーカンの蒸し暑い一日。5時前起床、急いで朝食を済ませて5時半に出社。iPad とスケッチブックを鞄に詰めて5時40分に事務所を出る。表参道から銀座線で新橋へ。JR山手線で浜松町へ。モノレールに乗り換えて6時45分に羽田第一ターミナル到着。7時10分発のJAL出雲行きに搭乗。機内は満員、8時半に宍道湖の西端にある出雲空港に着く。出口で菅野紘さんと待ち合わせ菅野さんの車で松江市内の「180菅野邸」の敷地へ。宍道湖の東湖岸に面した敷地で、湖に沿って南北に湖岸道路が通り交通量はかなり多い。車の騒音をいかに遮断するかが重要な課題だろう。湖岸道路と敷地の間には緑地帯があり松の木が植えられ遊歩道が通っている。緑地帯と敷地の間にも細い道路が南北に通り、敷地へのサービス道路になっている。敷地はこのサービス道路に沿って南北約35m、東西約25m、220坪の広さで、敷地レベルは道路から約1m高く、道路に面した擁壁は粗い積石である。敷地から西側に宍道湖の景観が広がっている。敷地東側に複数の巨大な石が南北一列に置かれ南側には木材が置かれている。西南端に大きな松の木が生えているが他に樹木はない。敷地の南側はパチンコ屋、東側は木工工場、北側は屋外駐車場を挟んで5階建てのアパートが建っている。周囲には戸建て住宅はなく、工場や倉庫ばかりである。ライフラインを調べると排水枡はあるが、水道メーターは見当たらないので引き込まれていないようだ。サービス道路に沿って電柱が立っているので電気と電話は問題ない。北側のアパート前にLPガスボンベ置場があるところをみると都市ガスもないようだ。1時間余り敷地周りを調べた後に、近くのカフェで一服。菅野さんのプログラムを聞く。現在、松江市内に自宅があるが、今回の住宅はセカンドハウスとして計画し、風呂に入りながら宍道湖の夕日を眺め、時折ゲストを招いてパーティを開きたいのだという。現在の住まいは20年以上前に林雅子の設計で建てたそうだが、現在は荷物が一杯で倉庫のようになっていため見てもらいたくないという。要するに余生を楽しむためのセカンドハウスのようである。12時を過ぎたので菅野さんの車で松江市内の割烹料亭へ。菅野夫人が所有する宍道湖西端に面する割烹旅館の1階である。どうやら菅野一家は松江市の名家のようだ。和食のフルコースをゆっくりいただきながら菅野夫妻のプログラムを聞くうちに、徐々に菅野邸のイメージが具体的になってくる。15時前に店を出て、宍道湖に面する菊竹清訓設計の島根県立美術館へ。今日は火曜日で休館のため湖畔に面する外観だけを見学、緩やかな曲線の軒先が印象的だが今一ピンとこない。15分で美術館を発ち、山陰高速道路を東へ向かい、米子市内を抜けて、皆生温泉の〈東光園〉へ16時前に到着。菊竹清訓設計で1964年に完成したホテルである。40年前に妻と一緒に山陰の菊竹建築行脚したことがあるが、その時に一泊しダイナミックな空間とクレイジーなディテールに驚愕した。完成後56年経過し外部のコンクリート打放しは白く塗装され、階段の縦桟はアルミニウムに変えられ、スチールサッシには錆が浮き上がっているが、外観のシルエットは健在である。今日は宿泊客が少ないので、許可を得て館内を見学する。最上階の食堂は集会室に替わり、4階の空中庭園には北の新館につながるブリッジが架けられている。ロビーの椅子は剣持勇の藤椅子のままだが、客室廊下の粟津潔の巨大文字は消えている。流政之の庭は記憶とは若干変わっているような気がする。感動の余韻に浸りながら17時にホテルを発ち、大山の緩やかな山並みを眺めながら山陰高速道路を西へ向かい18時前に出雲空港に到着。菅野夫妻に2ヶ月内に第1案のプレゼンテーションをすることを約束し、荷物検査場前で別れる。待合室でしばらく休憩し19時25分発の羽田行の小型機に搭乗。機内は満員。21時前に羽田着。10時過ぎに帰社。直ちに帰宅しビールを飲んで一休みした後にシャワーで汗を流す。『習慣の力』は第4章「アルコアの奇跡―会社を復活させたたった一つの習慣」を読み終わり、第5章「スタバと〈成功の習慣〉―問題児をリーダーに変えるメソッド」に進む。第4章ではアルミニウムの精錬メーカーであるアルコア社の社長に就任した官僚上がりのCEOが、〈安全性〉を会社の目標に掲げて優良企業に仕立て上げた経緯が詳しく紹介されている。つまり危険な作業を伴うアルミニウムの精錬作業に〈キーストン・ハビット〉(要となる習慣)を持ち込み、それが契機になって会社全体に一体感が生まれたという事例である。〈キーストン・ハビット〉は本書のキーワードである。〈キーストン・ハビット〉となるかどうかは前もってはわからないが、何かを変える間接的な習慣である。


2020年09月07日(月)

雨が降り続く蒸し暑い一日。夕方には天気が回復する。8時半出社。建築学会から依頼された査読論文をダウンロードして読み始める。しかし若い研究者のせいか、自身がすでに書いた一連の論考を前提にして論を展開しているために、コンテクストを読み取るのが難しい。とりあえずGoogleで彼の書いた論考を探してざっと読んでみると少しずつコンテクストが読めてくる。出社してきた戸田と「168坂本邸」のプランの打ち合わせ。僕の第1案をプレゼンテーションに採用することに決め、断面図と立面図をまとめるように指示する。午後までに何度か打ち合わせをくり返しプレゼンテーション用の図面がまとまったので、模型の制作に着手するように指示する。(株)藤忠から「167 N邸」の地鎮祭後にアースワーク事務所の渡辺安徳さんと一緒に食事をする提案メールが届いたので、N夫妻と相談して決める旨の返信メールを送る。思い立って「164 U邸」のオープンハウス案内を「箱の家」のクライアント、界工作舎OBOG、難波研OBOG、『建築雑誌』の親しい編集委員に送る。新建築住宅特集の編集部にも送り、取材の検討を依頼する。まもなく西牧編集長から12月号に掲載したい旨の返事メールが届いたので、U夫妻にその旨を伝え撮影の協力を依頼する。『習慣の力』は第3章「習慣を変えるための鉄則―アルコール依存症はなぜ治ったのか」を読み終わり、第2部「成功する企業の習慣」の第4章「アルコアの奇跡―会社を復活させたたった一つの習慣」に進む。第3章ではアルコール依存症の克服プロセスが、さまざまな事例を挙げながら説明される。小さなきっかけで一時的な克服は可能だが、一時的なストレスによって必ず揺れ戻しが生じる。完全に克服するには、2人以上の共同体を通じて何らかの超越的な存在(たとえば神)へ帰依することが必要だという。これはグレゴリー・ベイトソンが『精神の生態学』で論じている自己言及からの脱出と同型であり、不完全性定理の現実版である。


2020年09月06日(日)

小雨と晴れがくり返す蒸し暑い一日。10時出社。甲府のNさんから「167 N邸」の工事契約書が届いた旨のメールが届く。合わせて火災保険に加入するために「167 N邸」の防火性能と耐震性能について訊かれたので、調べた上で回答メールを送る。工事契約が成立したので、(株)藤忠を紹介してくれた甲府の設計事務所アースワーク環境計画事務所の渡辺安徳さんに、工事契約に至った報告とお礼と9月20日の地鎮祭終了後に会えないかという打診メールを送る。辻堂の坂本さんから返信メールが届き、計画の時期が少し延びそうだが、とりあえずプレゼンテーションを依頼する旨の返信メールが届く。9月19日(土)に図面と模型のプレゼンテーションを行うことになった。ハウスメーカーとのコンペだそうだ。家早何友。やるだけのことをやった上で坂本さんの判断を待つしかない。『習慣の力』は第2章「習慣を生み出す〈力〉―ファブリーズが突然大ヒットした理由」を読み終わり、第3章「習慣を変えるための鉄則―アルコール依存症はなぜ治ったのか」に進む。第2章では消臭剤の〈ファブリーズ〉の販売戦略の紹介から、消臭という機能性の宣伝だけではまったく売れず、掃除の仕上げという習慣的な満足感に結びつけて初めて爆発的に売れるようになったというエピソードが紹介される。人間は臭いに対しては慣れてしまうので、日常的には消臭の必要性をあまり感じないが、消臭剤に微かな芳香を加え日常的な掃除のルーチンの中に組み入れることによって常備品に変わるのである。ここから学ぶべき事は、適応と習慣を変えることの難しさであり、住宅のデザインにおいては単に便利さや機能性だけでなく、それが生活にどのように組み込まれ、生活をどのように変えるかを、ポジティブな目標に結びつけて提案することが必要不可欠だということである。


2020年09月05日(土)

晴れのち午後は雨の蒸し暑い一日。8時半出社。〈KENCHIKU〉の連載原稿を読み直し、若干加筆校正し図版を添えて建報社に送る。昼前に(株)藤忠から「167 N邸」の工事契約書3部が届いたので、設計監理者の欄に捺印・割印し、銀行提出用の図面を同封して宅急便で名取さんに送付する。これで着工前の仕事は一通り完了したことになる。11時過ぎに杉村浩一郎・永井佑季夫妻が、生まれて5ヶ月の娘の芙美ちゃんを連れて来所。妻を事務所に呼んで夫妻とあれこれ四方山話を交わした後、孫たちが使った遊具などを見せて、使えそうなものを持って行ってもらうことにする。芙美ちゃんを交えて記念写真を撮って12時過ぎに解散。辻堂の坂本謙治さんから「168坂本邸」のその後の経過に関する問い合わせのメールが届く。8月1日(土)に「164U邸」を見学してから1ヶ月が経過したからである。ちょうど第1案がまとまる見通しが立ったところなので、9月中旬にプレゼンテーションしたい旨の提案メールを送る。14時に帰宅。シャワーを浴びて汗を流した後にベッドの中で読書。『習慣の力』はプロローグと第1部「個人の習慣」の第1章「〈習慣〉のメカニズムー行動の4割を決めている仕組みの秘密」を読み終えて、第2章「習慣を生み出す〈力〉―ファブリーズが突然大ヒットした理由」へ進む。プロローグで〈習慣〉は次のように定義されている「ある時点で意図的につくり、やがて考えなくても毎日、何度も行えるようになるもの。やがて決定をしなくなり、その行動は無意識のものとなる」。本書の議論の中心的な主張について、著者は「習慣は変えられる」だと主張している。第1章では、脳の特定の箇所(脳幹に近い基底核)に損傷を持つ患者は、日常の習慣的な行動は難なくこなすことはできるが、行動する意図や記憶を全く失っているという事態から、行動の習慣化が大脳から基底核への行動の無意識化であることが明らかにされる。こうした事実から、住宅における生活行動は、まさにこの定義に該当することが了解できる。住まいに棲み込むとは、そういうことだろう。


2020年09月04日(金)

台風の影響か快晴で朝から30度を超える猛暑日。8時半出社。〈住宅遺産トラスト〉からオンライントークへの案内メールが届く。〈旧園田高弘邸〉(吉村順三設計/1955年竣工)について藤塚光政さんが話すというので、参加申し込みのメールを返送する。まもなく事務局からzoomミーティングのURLが届く。赤松佳珠子/CAtから集合住宅ROPPONGI TERRACEのオープニング案内のメールが届く。登録制なので直ちに早速見学希望の返信メールを送る。(株)藤忠に「167N邸」の工事契約書について問い合わせメールを送る。一昨日に確認したにもかかわらず、まだ届かないからである。まもなく返事メールが届き、新しい約款を取り寄せるために時間がかかったが、製本して今日中に送る旨の返信メールが届く。確認の返信メールのついでに地鎮祭の日時と開催要領について知らせる。今日は1日をかけて〈KENCHIKU〉の連載原稿に取り組み、夕方までにようやく所定の8枚を書き終わる。日本の住宅ローン制度と住宅デザインとの関係についての論考だが、これまで何度も考えたトピックなので、改めて問題点を整理するために四苦八苦することになった。20年ほど前にメキシコの建築家に問われてから考え始めた問題の回答を、ようやくまとめることができたように思う。『建築雑誌』3月号に書いた、建築学科が工学部にあるのは日本の大学だけであるというトピックと同じで、複雑な歴史的経緯の結果なのである。明朝に読み直して建報社に送ろう。辻堂の坂本謙治さんからメールが届く。「168坂本邸」の計画には少し時間がかかりそうだとのこと。ちょうど第1案をまとめているところなので、どのように対応するか考えてみよう。夜は『世界の根源 先史絵画・神話・記号』(アンドレ・ルロワ=グーラン+クロード=アンリ・ロケ:著 蔵持不三也:訳 ちくま学芸文庫 2019)を一気に飛ばし読みし読了する。アンドレ・マルロー、ティエール・ド・シャルダン、ミルチャ・エリアーデ、レヴィ=ストロース、ジャック・モノー、ジョルジュ・カンギレム、ガストン・バシュラールなど、錚々たる人たちとの交流が述べられているが、ほとんどが『身ぶりと言葉』(アンドレ・ルロワ=グーラン:著 荒木 享:訳 新潮社 1973)に関する脚注のようなエピソードばかりである。『身ぶりと言葉』については、若い仲間との共著『建築家の読書塾』(難波和彦:編 みすず書房 2015)で詳しく論じているのでよしとしよう。引き続き『習慣の力』(チャールズ デュヒッグ:著 渡会圭子:訳 早川書房 2019)を読み始める。日常生活のなかで無意識にくり返されている行動と脳の構造との関係から話が始まる。


2020年09月03日(木)

雨のち晴れの蒸し暑い一日。8時半出社。甲府のNさんから「167 N邸」の地鎮祭を9月20日(日)に実施したい旨のメールが届く。いつもの「箱の家」のように神主抜きの略式地鎮祭が希望である。界工作舎としてはまったく問題はないので当日の11:30に開始する旨を返信し、御神酒、塩、米を用意するように依頼する。引き続き駅ネットで11時過ぎに甲府着の特急あずさ号の乗車券を予約購入する。「166 K邸」のKさんから庭の保存木の剪定についてのメールが届く。小川建設とはまだ工事契約を締結していないのだが、工事時期と手順について植木屋と相談したらしい。工事契約締結後に小川建設の立ち合いの元にすべきことなので勇足である。Kさんの焦る気持ちも理解できるので、急いで工事契約に進むために工事契約書のたたき台の作成について細かな説明コメントを添えて小川建設に依頼メールを送る。概算見積から2ヶ月以上が経過しているので、減額変更のやり取りをその都度チェックしなければならない。Amazon関連で本を耳で聴くaudibleという有料サービスがあるようだが、申し込んだ記憶はまったくないにもかかわらず利用請求書が届いている。急いで退会する手続きをネット上で探したが見当たらないので、直接サービスセンターに電話し抗議したところ返金してくれることになる。家早何友、油断も隙もあったものではない。『建築雑誌』9月号が届いたので表紙の写真を撮りfacebookにアップする。10月号の表紙について写真家と編集委員との間で意見がくい違い、写真家が今後の撮影を辞退するといってきた。詳しい経緯はわからないが編集委員の要求に対してよほど腹に据えかねたのだろう。僕としてはこれまでの表紙写真に感心してきたので、継続を依頼するように高口編集委員長に調停を進言する。
https://tsudanao.com/news/2020/
夜Uさんから「164 U邸」のオープンハウスを条件付きで承諾する旨のメールが届いたので、以下のような文章を添えてfacebookと界工作舎HPに掲載することにする。界工作舎OBOGやメディアには直接案内状を送ることにしよう。

「箱の家164」のオープンハウスを、9月26日(土)13:00-15:00に開催します。場所は高崎線の籠原駅から徒歩7分の場所です。参加希望の方は、界工作舎の下記メールまで、氏名、所属を明記の上、申し込んでください。案内状を送ります。転送はしないでください。すでに入居されているため、当日はマスク着用、入口にて手のアルコール消毒と体温を計測し、37.5度以上の方にはご遠慮いただきます。界工作舎 email:kai@kai-workshop.com

21時半帰宅。『世界の根源』を読みながら夜半就寝。冗長な対談が続くので飛ばし読みを始める。


2020年09月02日(水)

曇り後小雨の蒸し暑い一日。8時半出社。昨日、保田さんから届いた「箱の家163」の温湿度データへのお礼のメールに対して、再び保田さんから届いたメールに思わず膝を打つ。保田さんはこう書いている。「温湿度データをこの1年間とり続けてきて発見した興味深い点のひとつに「人間は慣れる(適応する)もの」というのがあります。冬場と夏場では別人になっているのがよくわかり、人間の適応能力には驚くばかりです」。これに対して僕は直ちに以下のような返信メールを送る。「人間の適応力についての感想には心底から共感します。この問題について池辺陽は『デザインの鍵』でこう書いています。「建築の目的は、ある定まった人間に対して、それに適応した建築をつくることではなく、建築と人間が結びついたときに、そこに新たな人間が生じ、また建築自体も、その人間によって変化するというダイナミックなプロセスであることを忘れてはならない」(「8. 人間は変化のプロセスをもつ」『デザインの鍵』(池辺陽:著 丸善1979))。このテーゼは僕のデザイン・ポリシーです。『建築雑誌』2020年7月号の連載「生態的デザインをめざして」にも引用しました。生活の変化を前向きに捉える意味では〈適応〉というよりも〈進化〉と呼んだほうがふさわしいような気がします。」たまたま昨日Amazonに『習慣の力』(チャールズ デュヒッグ:著 渡会圭子:訳 早川書房 2019)を注文したばかりなので、その符合にも少々驚いたのである。アフォーダンス理論はこの事態を明確に理論化するだろうという予感がある。『建築雑誌』2021年1月号で『新型コロナ禍』特集を企画することになり、その巻頭で加藤耕一さんの司会で編集委員全員が参加する拡大座談会を開催することになった。『建築雑誌』の編集を始めてから丁度1年目の特集なのでいい機会だと編集部も賛同してくれた。しかし30人近い編集委員のzoom会議になり交通整理が大変なので各人の発言テーマを書き込み、それにもとづいて議論を進めるための概略のシナリオをまとめるそうだ。甲府のNさんから一昨日に送った「167 N邸」の工事契約書のたたき台の内容を承認する旨のメールが届いたので、直ちに(株)藤忠に転送し、捺印・割印した正式な工事契約書3部を界工作舎に送るよう依頼する。籠原のUさんから電話が入り「164U邸」のオープンハウスについて相談を受けたので、一般公開ではなく簡単な予約制にすることを提案する。8月中は空調機の温度を26度に設定し還流ファンを上向き常時駆動にして室内気温は27度辺りで安定しているそうだ。「163保田邸」とほぼ同じ性能なので胸を撫で下ろす。世田谷のKさんから「166 K邸」の敷地測量図が届いたのでスキャンしてデータを木村に送る。夜に木村から確認申請を審査機関にオンライン提出した旨のメールが届く。引き続き長期優良住宅の申請を進めるように返事する。ネットニュースでリチャード・ロジャースがパートナー事務所から引退することを知る。1933年生まれで今年87歳だそうだ。彼とは一度だけ話したことがある。1985年に富山のYKK国際会議場に戦後生まれの建築家が一堂に解した「建築国際会議」を開催したが、オープニングレクチャーに彼を招聘した時である。ポンピドゥー・センターやロイズ・オブ・ロンドンは僕のお気に入りの建築で何度も訪れたことがある。彼の叔父さんはミラノのトーレ・ベラスカを設計したイタリアの建築家エルネスト・ロジェルスである。
https://www.dezeen.com/2020/09/01/richard-rogers-resigned-rogers-stirk-harbour-partners/?
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21時半帰宅。夜「163保田邸」の保田さんから再びメールが届く。「ご返信ありがとうございます。「デザインの鍵」は僕の大好きな本のひとつで、何度でも読んでみたくなる名著ですね。「箱の家」は「進化する箱」であると同時に「人を進化させる箱」でもあるのでしょう。人×箱=進化がどのようにどこに向かって遂げていくのか大変興味深く、時をかけて見届けたいと思います。「箱の家163」は僕にとっては単なる住宅ではなく、構造・気候制御・生活の仕方・エネルギー・家族間および外部コミュニケーションなど多様な実験マシンであります。けれども僕にとってはもっとも「ふつう」な住宅でもあります。このようなデザインをしていただいて、ありがとうございました。「箱の家」のさらなる進化を期待しています」。保田さんは池辺の思想を体現した住み手である。


2020年09月01日(火)

曇り後雨のやや涼しい一日。8時半出社。熊本の保田さんから「163保田邸」の8月分の温湿度データが届く。最近のデータを見ると8月中は空調機の設定温度を26度のままで過ごしているようだ。ベランダの外気温度は大体30度以上で暑い日は40度を越えることもあるが、室内気温は27度あたりに保たれている。床下の還流ファンは上向の常時稼働、天井扇も常時下向の稼働で、床下空間の気温は21度前後だが、アクアレイヤー水温が23度のまま一定に保たれているのは驚きである。思い立って籠原のU夫妻にメールを送り、空調の稼働温度とアクアレーヤー水温について質問し、併せて引渡時に頼んでいた「164U邸」のオープンハウスについて再度打診する。戸田が「167 N邸」の確認申請と長期優良住宅申請の書類をネットで審査機関に送る。審査期間は約2週間とのこと。午後までには契約用図面一式がまとまったので、圧縮データ通信でN夫妻と(株)藤忠に送信する。これで工事契約のための界工作舎としての作業は一区切り着いた。僕と戸田がそれぞれ「168坂本邸」のスケッチをまとめたのでdropboxに入れて交換する。見比べると両者とも一長一短である。じっくり比較検討してみよう。17時から『建築雑誌』の第16回編集委員会のTV会議が始まる。デスクトップのマイクの調子が悪いので一方的に傍聴するだけになってしまう。『建築雑誌』2021年2月号特集「建築の豊かさを問い直す」のプログラムのうち、石山修武さんのインタビューだけが未定なので、担当の岩元真明さんに電話番号を伝えて直接電話するように進言する。まもなく石山さんから承諾の返事をもらったという連絡が入る。夜は〈KENCHIKU〉の連載原稿を再開する。今日が締切なのだが書き進めない。21時半帰宅。久しぶりにウィスキーを煽り『世界の根源』を読みながら夜半就寝。


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