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箱の家 PROJECT 青本往来記
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コンパクト箱の家

2023年02月03日(金)

曇りで寒い一日。今日は初孫の9歳の誕生日であり、鈴木博之さんの10回忌である。思い起こせば、2014年2月3日(月)の朝に鈴木夫人から鈴木さんが息を引き取ったという電話が入ったので、直ちに築地の国立がん研究センター中央病院に駆けつけた。病院に着くとまもなくして、妻から初孫が無事生まれたという電話が入った。約2時間の時間差なので、何か運命のようなものを感じたことを記憶している。鈴木さん自身から、病気のことや入院していることは一切日記に書かないでくれと頼まれていたので、がんセンターに入院した前年の12月末以降の日記には、病院に見舞いに行く度に、安藤忠雄さん、石山修武さんを交えて築地近くでミーティングを持っていると架空の出来事を書き続けている。亡くなった当日の日記を読み返してみると、鈴木さん、安藤忠雄さん、石山修武さんと東京ステーションホテルでミーティングを持っていると書かれている。実は、病状が悪化したので、死の前日に3人は病院に集まっていたのである。そんな経緯があったので、毎年、鈴木さんの命日には、早朝に東長寺にお参りに行くことにしているのだが、今年はNHKテキスト原稿の執筆に集中したいので行くのをとりやめることにした。10回忌の区切りである。しかしながらパソコンに向かって書きかけの原稿を開いても、なかなか初めの言葉が出てこない。昨日までのスケッチでトピックスはほぼ出揃っているが、どこから手をつけていいかが見えない。書き出せば自動的に言葉が続くことは分かっているが、第一歩を踏み出せないのである。なぜなのか、理由は何となく思い至る。午前中は悶々として時間が過ぎる。昼過ぎにAmazonから『じゅうぶん豊かで、貧しい社会―理念なき資本主義の末路』(ロバート・スキデルスキー+エドワード・スキデルスキー:著 村井章子:訳 ちくま学芸文庫 2022)が届いたので、気分転換に読み始める。スキデルスキーはJ・M・ケインズの膨大な伝記を書いたことで有名な経済学者である。新自由主義思想によって加速した資本主義に対する批判と反省の書とあるので読んでみようと考えた。エマニュエル・トッドのいう〈意識〉レベルの時代認識である。今日の全国のコロナ感染者数は39,924人。


2023年02月02日(木)

晴れのち曇りで昼間は北風が強い寒い一日。9時出社。今日は一日中、NHKラジテキストの執筆に取り組むが、なかなか論理展開が見えないために書き進むことができない。なのでエマニュエル・トッドの著者を本棚から引き出して再度散読し、いくつかのヒントをもらう。日本政府は終戦後からサンフランシスコ平和条約が締結される1952年まで日本に駐留していたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)のアドバイスによって住宅金融公庫を制定し、アメリカの生活様式に倣い、核家族を基本とする戸建持家政策を導入したこと。その延長上で、建築の潮流としては1970年代のポストモダン運動と、その背景にあったポップアートやヴァナキュラー建築の再発見もハウスメーカーのデザインに影響を与えていたことに注目する。クリストファー・アレグザンダーのパタンランゲージが日本に入ってきたのも、建築記号論が流行したのも1970年代である。思い返せば、多木浩二によるキッチュ論や日常性の問題が注目されたのも同時代であり、当時の若い建築家たちに大きな影響を与えた『生きられた家』の初版が出たのは1976年である。多木浩二が提出した問題は第6回「住まいのはたらき」で集中的に取り上げる予定なので、今回は軽く触れるにとどめよう。夕方までにとり挙げるトピックスはほぼ列挙することができたが、それをどのようにストーリーとして結びつけるかについて頭を絞るが、なかなかアイデアが湧かず四苦八苦する。少し視野を広げるために『日本近現代建築の歴史』(日埜直彦:著 講談社 2021)と『現代建築』(山崎泰寛他:著 フィルムアート社 2022)を本棚から引き出して散読する。しかし話を建築デザインの問題だけに絞ることは避けたいので、再度ストーリーについて練り直さねばならない。今日の全国のコロナ感染者数は45,299人。


2023年02月01日(水)

晴れで強い南風が吹く暖かい一日。8時半出社。相変わらず勉強の読書が続く。『人口大逆転―高齢化、インフレの再来、非平等の縮小』(チャールズ・グッドハート&マノジ・プラダン:著 澁谷浩:訳 日本経済新聞社 2022)の第14章「主流派の味方に抗して」、追記「新型コロナウィルス後に加速してやってくる理想的ではない未来」、「訳者あとがき」を読んで読了。1990年のバブル崩壊以降の30年間、日本経済は低空飛行を続けてきたが、その理由について本書で初めて納得できる説明に出会った感じである。これまでの説明は、アベノミクスの失敗やイノベーションの欠落に関係づけられてきたが、そうではなく経済のグローバリゼーションと円高のために、中国の膨大な労働人口と安価な賃金を求めて、日本企業が生産拠点を賃金の安い中国や東南アジアに移したことの結果なのである。要するに、日本のGDPが中国に追い抜かれたことと〈失われた30年〉とはコインの表裏なのだ。さらに本書では、最近のインフレーションが世界的な高齢化によって生産と消費のバランスが崩れたためであること、つまり高齢者の消費が増加したためだといわれているが、ここでいう消費とは、モノの消費ではなく、膨大な医療費や介護費といったサービスの消費であることに注意しなければならない。そのことは日本の国家予算の3割以上が社会保障によって占められている現状を考えれば納得できるだろう。それが1970年代のインフレーションとは根本的に異なる点である。『消費社会の神話と構造』(ジャン・ボードリアール:著 今村仁司+塚原史:訳 紀伊国屋書店 1979)の結論「現代の疎外、または悪魔との契約の終わり」を読んでみたが、当時のインフレーションは団塊世代の労働力がもたらす膨大なモノの生産の過剰消費であり、現代のインフレーションとは中味が根本的に異なり、どことなく表層的でアンリアルである。NHKラジオのテキスト第4回「消費社会の住まい」で1970年代の住まいの〈記号化〉について書く予定だが、あくまで〈モノの記号化〉であり、そもそも最初から記号化されている現代のサービスの消費とは、まったく意味が異なる点に十分に注意する必要がある。ネットでDezeenのレポートを見ると、建設が始まったサウジアラビアの〈The Line Megacity Project〉には、Adjaye Associates、UNStudio、Morphosis、Studio Fuksas、Coop Himmelblau が参画しているようだ。この巨大なプロジェクトを、一体どうやってまとめあげたのだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=hBnVJjbP-ms
今日の全国のコロナ感染者数は55,537人。


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