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箱の家 PROJECT 青本往来記
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コンパクト箱の家

2018年04月21日(土)

7時起床。快晴で夏のような暑い一日だが、朝夕は涼しい。8時半出社。10時半にクライアント候補のF夫妻が来所。新居の相談だが、これまでに建築家に依頼して東京と名古屋に2軒の住宅を建てたことがあるそうだ。僕もよく知っている建築家なので、なぜ今回は僕に頼みたいのか聴いたところ、いろいろ調べた結果、ネットで〈コンパクト箱の家〉に辿り着いたとのこと。3軒目は性能優先の家にしたいからだそうだが、僕の本はほとんど読んだことがないというので『箱の家---エコハウスをめざして』(2006)と『進化する箱』(2015)を贈呈する。工事予算について説明した後に2階の自宅を簡単に案内し12時前に終了。ハテサテ今後どう進展するだろうか。難波研OBで現在は京都大学の助教をしている小見山陽介さんから『CLTの12断面』(小見山陽介:著 新建築社 2018)が届く。昨年の『新建築』誌に連載した記事の抜刷である。早速お礼のメールを送り、まもなく出る縦ログ構法本の情報も伝える。最近のCLT構造の世界的な動向を総覧した記事なので、縦ログ構法と比較しながらじっくり読んでみよう。三鷹の工務店から「128濱本邸」改修工事の着工を早めたい旨のメールが届く。来週火曜日に現場調査の予定だが、その後直ちに着工したいという。濱本さんと不動産会社にメール連絡し承諾を得る。事務所内外を掃除して14時に解散。はりゅうウッドスタジオの芳賀沼さんから電話。縦ログ構法本に関する最後の打ち合わせと木造仮設住宅の移築に関する打ち合わせをしたいというので来週の日時を組める。その後は雑用。夕食後ベッドで読書をしていると「158石邸」「159吉村邸」熊本〈箱の家〉について立て続けにメールが届く。来週は忙しくなりそうだ。『偶然の科学』を読みながら夜半就寝。


2018年04月20日(金)

7時起床。晴れで暑い一日。8時半出社。盛岡の平井さんからメールが届き「160平井邸」のクライアント+事務所検査と引渡の日が5月上旬に決定。直ちにTH-1に連絡する。午前中に「159吉村邸」の現場監理から戻った木村の報告を受ける。外壁の鋼板庇が取り付けられているが、細部が施工図と異なっている点があるのを指摘。大きな問題ではないが何かとトレードオフできないか考える。現場写真を添えて吉村さんに管理報告メールを送る。戸田がまとめた熊本の〈箱の家〉の基本設計段階における減額案を詳細に見直す。設計監理契約を締結する前の段階ではここまでが限度なので、当初の工事予算を再検討してもらうように、減額項目の図面を添えてYさんに送信。『アメリカ大都市の死と生』で町づくりの原点を提案したジェイン・ジェイコブスを再発見する映画『ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命』が今月末に公開されるそうだ。是非とも観に行こう。
http://janejacobs-movie.com/index.php
夜は読書。21時半帰宅。『偶然の科学』を読みながら夜半就寝。


2018年04月19日(木)

7時起床。晴れで過ごし易い一日。8時半出社。9時過ぎに事務所を出て高井戸の「160平井邸」現場へ10時前着。TH-1の渡邊監督と戸田が待機している。1階床の石張工事はまだ完了していない。石材を選びながら張っているため材料が足りなくなったので新たに追加発注したという。目地なしで張るのはなかなか大変なようだ。2階は壁天井の化粧合板張りが進んでいる。来週には家具の取付も行うとのこと。石張りに手間取り工期がかなり遅れたため、引渡日を延期する要請を受ける。来週の現場監理日を決めて10時半に現場を発ち11時過ぎに帰社。前田財団の山田一宇賞選評を再度読み直し、加筆校正して事務局に送信。2015年に作成した〈箱の家〉のアクソメリストに、その後に完成した〈箱の家〉を追加したリストを作成するように戸田に指示。合わせて〈箱の家153〉以降の四層構造スライドも作成する。明後日に来所予定のクライアント候補から送られてきた敷地候補の資料を検討。〈コンパクト箱の家〉を希望しているとのことなので、とりあえず配置のシミュレーションをしてみる。何とかうまくいきそうだが、問題は建設費である。〈コンパクト箱の家〉は2011年3.11直後に計画したので、HPに掲載している概算見積は当時の〈箱の家〉の建設コストを反映している。しかしながら3.11以降に建設コストは少なくとも3割以上急騰しているので、当時の単価は現在ではまったく通用しない。スタッフと相談しHPに掲載の概算見積の早急な変更を検討する。夜は読書。21時半帰宅。

『偶然の科学』を読み続ける。〈常識〉の効用に関する議論から発して〈常識〉に基づく社会・歴史現象の〈予測〉や〈説明〉が陥りがちな錯誤に関する議論へと展開する。本書の原題にもあるように「Everything is Obvious---Once you know the Answer」「答(結果)が分かってしまえば、すべては明白である」。確かに歴史の事後説明がそうだし、社会現象の事後分析もそうであり、時には工学的な説明さえも同じような錯誤に陥る。要するに、事後的には〈偶然〉を〈必然〉のように見てしまう錯誤という意味では『偶然の科学』という本書の日本語タイトルは、当たらずとも遠からずのようにも思えるが、やはり的外れというしかない。


2018年04月18日(水)

7時起床。朝から小雨で涼しい一日。8時半出社。ニチハから「NICHIHA SIDING AWARD 2018」の審査委員長の要請メールが届く。例年のことなので快諾の返事を送り、担当者との打ち合わせ日時を決める。番組制作に2年以上かかったが「Four Facets of Contemporary Japanese Architecture」の第2相「Technology」の配信がようやく開始される。すでに4月16(月)から安藤忠雄さんの回が放映されており、僕の出演は4月23日(月)からの予定。
https://www.edx.org/course/four-facets-contemporary-japanese-utokyox-utokyo005x
昨日に続き、前田記念財団の山田一宇賞の選評原稿を続行する。紆余曲折しながらようやく結論が見えてきた。大学での審査評とは異なる視点で評価したいので角度を変えて読み込む。集中して取り組み夕方までに何とか5枚弱をまとめる。いつもながら建築史・都市史の評価は難しい。明日、再度読み直して事務局に送ることにしよう。戸田が熊本の〈箱の家〉の基本設計段階での減額案をまとめたので内容をチェック。色々な可能性を検討してみたが、結局のところ、概算ではこれ以上踏み込んだ見積は難しいように思われるので、図面化して熊本のYさんに送ることにしよう。夜は読書。21時半帰宅。『偶然の科学』を読みながら夜半就寝。


2018年04月17日(火)

7時起床。昨夜は少し呑みすぎたので二日酔いの軽い頭痛。曇りで肌寒い一日。8時半出社。新しいクライアント候補からメールが届く。大田区か世田谷区に〈コンパクト箱の家〉を建てたいという。早速、その相談に今週末に事務所に来てもらうことになる。昨日の日本建築士会連合会連合会作品賞について考える。審査委員が入れ替わらず持続している点が、他の賞にはない特異な賞だが、一方でマンネリ化の恐れも否定できない。女性の審査委員を加えるという僕の提案はマンネリ化を防ぐためだけでなく、最近増加している女性建築家による応募作品への対応でもある。木村と「159吉村邸」の詳細打ち合わせ。TH-1と追加工事に関するメールのやりとり。佐々木事務所から「161齋藤邸」の杭工事の仕様再度の変更メールが届いたので建設会社に転送し、見積書提出日を来週まで延期することにする。合わせて齋藤さんに報告。スーパーポテトから4月5日に杉本貴志さんが亡くなったというメールが届く。葬儀はすでに近親と内輪の関係者だけで済ませ、近いうちに偲ぶ会を開催するとのこと。杉本貴志さんにはこれまで色々と世話になった。僕を無印住宅MUJIHOUSEの開発者に選定し、ニチハサイディングの新製品の協力開発者やニチハアワードの審査員に指名してくれたのは杉本さんである。デザインについて突っ込んだ議論を交わしたことはないが、建築デザインとインテリアデザインの基本的な相違を教えてくれたのは杉本さんである。杉本さんのデザインは僕の目には徹底してphenomenalに見えた。もちろん建築にもphenomenalな面はあるが、その基礎はconstructionに支えられている。そのことを杉本さんは気づかせてくれたのである。前田記念財団の山田一宇賞の選評原稿を書き始める。論文要旨と審査評を読み込み評点を整理する。しかしいつもながらなかなか発火しない。今週中には何とかまとめなければならない。夜は読書。21時半帰宅。

『日本再興計画』(落合陽一:著 幻冬社 2018)を読み終わる。日本の現況を社会、文化、経済、政治、教育、テクノロジーといった諸側面から幅広く捉え、その変革と再興の戦略を提案している。鍵となっているのは、ITテクノロジーのブロックチェーン(分散型の台帳技術)と仮想通貨に代表されるトークンエコノミーである。それによって非中央集権的な分散型社会が構築されるという落合のヴィジョンにはある程度の共感を抱く。しかし積極的に担う気にならないのは、僕の年齢のせいもあるが、それ以上に、本書には新しい所見は数えきれないほどあっても、僕自身の無意識を明るみに出するような新しい発見がないことが大きな要因である。引き続き『偶然の科学 Everything is Obvious---Once you know the Answer』(ダンカン・ワッツ:著 青木創:訳 早川書房 2014)を読み始める。テーマは複雑系ネットワーク理論に基づく社会心理学である。


2018年04月16日(月)

7時起床。晴れ後曇りの涼しい一日。8時半出社。佐々木構造計画から「161齋藤邸」杭工事の最終的な仕様が届いたので、直ちに見積を依頼している工務店に送る。熊本のYさんからのメールで構造に関する質問が届いたので、接合金物メーカーに問い合わせた結果をYさんに転送する。12時半に事務所を出て千代田線、都営三田線を乗り継ぎみた駅にて下車。歩いて5分で建築会館へ。5階の日本建築士会連合会連合会で13時半から今年度の作品賞の第一次審査会。村松映一委員長を初めとして、松川淳子、石山修武、竹原義二、岸和郎、櫻井潔、僕の7人が出席。中谷礼仁はスケジュールが合わず、今日の午前中に書類審査を済ませている。今年は北海道から沖縄まで90点余の応募作品がある。約2時間かけて提出書類を精査し、気になる作品を各人が15点選び事務局に渡す。今年は例年よりも住宅作品が多いので審査にも熱が入る。15時半に中谷さんを含めた8人の審査員の票を合計した結果リストを各委員に配布。満票の作品が1点ある。3票以上を獲得した21作品について意見交換し、3票作品のうち2点を外し、2票作品のうち2点を加えて21点を現地審査の対象作品とする。引き続き各作品の担当委員と審査日時の調整。地理的に近い作品をまとめてスケジュールを決め17時過ぎにすべての作業を終了。その後いつもの居酒屋で打ち上げ。僕からは女性の審査委員をもう1人加えるべきではないかと提案し全員の了承を受ける。その後は建築談義で盛り上がり19時前に解散。20時半に帰社。日本建築士会連合会から届いた今日の結果を確認しチェックバック。審査は6月初めから開始し7月上旬で終わる予定。現地審査は1作品につき2人以上の担当を原則とし、僕は12作品を担当することになった。21時半帰宅。『日本再興計画』を読みながら夜半就寝。


2018年04月15日(日)

8時起床。曇り後晴れでやや暑い一日。今日は一日休みを決め込んだが、とりあえず10時半に出社。『サピエンス全史』上下巻にザッと目を通し読後評をまとめる。壮大な歴史書で人類史全体を見直す視点には何点か感心させられる部分もあったけれど、それ以上に冗長な部分が多いので、読後感はそれほど良くない。特に近未来に関する最終章で扱っているAIの特異点や遺伝子科学によるサピエンスの変異の問題は、通り一遍の議論に終わっていて肩透かしである。したがって2016年に初版が出て、昨年末までに45刷を重ねている理由がイマイチ理解できない。実際に上巻は45刷、下巻は30刷だから、上下巻を読み通した人は少ないのだろう。とはいえ30刷でも凄いが。午後は帰宅し風呂に入った後、『日本再興計画』(落合陽一:著 幻冬社 2018)を読み始める。これからしばらくの間は、『サピエンス全史』のような長期的な歴史と本書のような短期的なヴィジョン、あるいはマクロな歴史とミクロストリア(ギンズブルグ)の往還を試みてみよう。著者の落合陽一は1987年生まれの超秀才として話題の人である。夜までに半分まで読み進むが、どこかで聞いたような話の連続でまだ新しい発見はない。


2018年04月14日(土)

7時起床。曇りで涼しい一日。夕方から小雨。8時半出社。10時半から戸田と熊本の〈箱の家〉のコストダウン案の打ち合わせ。細かく材料を拾って見積もろうとしているので、基本設計段階ではそのような積み上げ方式ではあまり意味がないことを指導する。というのもトータルな予算自体が工事別の積み上げ方式ではなく、これまでの〈箱の家〉の単価に基づく概算なので、個々の仕様もこれまでの事例から概算すべきなのである。とりあえず5万円単位で計算するように指示する。TH-1から「159吉村邸」のキッチンと設備システムの施工図が届いたのでチェックバック。合わせて今週の現場監理結果を吉村さんにメール報告。15時解散。18時に事務所を出て副都心線で新宿三丁目駅にて下車。歩いて5分で新宿武蔵野館へ。ネットで予約していた入場券をQコードで受け取り18時40分からドイツ映画『女は二度決断する Aus dem Nichts』(ファティ・アキン:監督 2017)を見る。原題のタイトルは「虚無から」とでもいうような意味なので、日本語タイトルはあまりにもダサいのに呆れる。アキン監督はトルコ系のドイツ人である。ハンブルクの外国人街に店を構えるトルコ系の夫と子供がネオナチによる爆破テロの犠牲となったドイツ人女性が裁判の結果に絶望し、自らが犯人に対して復讐するというストーリーである。しかしながらネタバレになるが、単純な復讐劇ではなく逃走する真犯人に対して、彼らが用いた同じ爆薬によって自爆テロを実行するというねじれた結果に複雑な感想を抱く。最後のシーンからジャン・リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』を想い出した。要するに結論は「Nichts aus dem Nichts」である。20時半終了。副都心線で戻りコンビニで夕食を購入して21時過ぎ帰宅。ウィスキーを呑みながら映画について考える。夜半就寝。

『サピエンス全史---文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ:著 柴田裕介:訳 河出書房新社 2016)の上下2巻を読み終わる。ホモ・サピエンスの誕生から現在まで、さらに近未来を見据えた壮大な人類史である。事件史でも政治史でもなく、固有名詞はほとんど出てこない歴史的な潮流だけについて論じている点がユニークである。まず歴史全体は、「認知革命、農業革命、科学革命」という3つの大きな革命によって区分される。認知革命は脳の増大による種としてのホモ・サピエンスの誕生、農業革命は狩猟移動生活から農耕定住生活への転換、科学革命は15世紀以降の科学とテクノロジーによる転換である。あちこちで新しい所見に出会うが、まず第6章「神話による社会の拡大」では、農業革命による家庭生活と住居の誕生、それに伴う集合化による社会の誕生と〈神話〉の発生が興味深い。数百万年も続いた小さな生活集団での人間関係は進化によって本能化されているが、農業革命以後の急速な集団化は本能では対処できず、人工的な本能として〈文化=想像上の秩序〉が生み出されたというフロイト的な所見を提唱している。それが具体的な形になったのが建築であり住居であるという指摘には目を開かれる。その上で世界を統合するグローバルなヴィジョンとして、近代以前には「貨幣、政治、宗教」が、科学革命以後の近代史は、その進化系として「資本主義、帝国、科学」という普遍的な秩序が生み出される。第12章「宗教という超人間的秩序」では、いわゆる宗教だけでなく、政治的なイデオロギーも一種の宗教と見做され、神よりも人間を重視した人間至上主義として、自由主義の人間至上主義、社会主義的な人間至上主義、進化論的な人間至上主義について論じている。第4部「科学革命」以降の科学革命以降の近代史では、「資本主義、帝国、科学」という三位一体がヨーロッパで生まれた歴史的要因について延々と論じているが、特に新しい所見には出会わない。人工知能がもたらす〈特異点=シンギュラリティ〉に関する議論も通り一遍で、尻切れトンボに終わっているのが残念である。


2018年04月13日(金)

7時起床。晴れだが昨日とは打って変わり涼しい一日。8時半出社。9時過ぎに事務所を出て高井戸の「160平井邸」現場へ10時前着。1階床の石張りが今日で完了予定と聞いたので訪れたが、予想以上に手間取ったため、サイズの加工が必要な外周部分が未工事なので、凡そ70%程度の進行状況。外周は細かな調整が必要なので工事の完了は来週の予定だそうだ。2階は天井と壁のシナ合板張りが進行中。電気器具の取付位置を再確認する。次回の現場監理日を決めて11時過ぎに帰社。直ちに平井さんに現場写真と報告メールを送る。佐々木構造計画から「161齋藤邸」のボーリング調査の結果を踏まえて新しい杭の設計仕様が届いたので工務店に転送し、齋藤さんにも報告する。午後、杭の長さについて工務店から質問が届いたので、佐々木構造計画へ再検討を依頼する。14時過ぎに事務所を出て、目黒線武蔵小山駅にて下車。15時過ぎに「159吉村邸」の現場に到着。外壁の下地工事の真最中である。外壁耐火用のセンチュリーボードはかなり重いので手間取っているようだ。屋根のシート防水と鉄骨の耐火塗装はほぼ完了している。後半の庇の取り付けは今日の予定だが、外壁下地工事に手間取り、工程が若干遅れている。来週の外装工事で取り戻すようにTH-1に依頼して15時半過ぎに現場を発つ。武蔵小山駅への道を少し遠回りし約15分歩いて仲俊治さん設計の「食堂付きアパート」へ。先頃読んだ山本理顕の『脱住宅』で紹介されていたので一度見たいと思っていた建築である。商店街と住宅街の境目付近に位置している。外壁の鋼板サイディングが周囲の町並みに馴染んでいて、第一印象ではそれほどインパクトはないが、3階建ての各階ヴォリュームをズラして、螺旋状の外部通路を確保しているのは考え抜かれたデザインである。カフェの窓際に座り談笑している女性二人が、額縁に入った絵のように見える。風が強く入口は開放されていないので、室内には入らず外観だけを見てその場を去る。16時半帰社。夜は読書。21時半帰宅。『サピエンス全史』は残すところ2章なので明日には読み終わるだろう。


2018年04月12日(木)

7時起床。晴れで夏のような暑い一日。8時半出社。一昨日LIXILギャラリーで開催中の伊東豊雄展で撮影した大三島の模型写真をfacebookにアップした。それを見たのかもしれないが、伊東さんから展覧会のオープニングへの出席に対するお礼のメールが届いたので、十数年前にドイツのアーヘン工科大学で開催された「Blurring Architecture展」の実物大のWhite-Uからの変転に関して抱いた感慨をまとめて返信する。前田工学賞の博士論文選評スケッチ再開。そろそろ本格的にまとめねばならない。岡啓輔さんから『自力でビルを建てる男』(岡啓輔:著 筑摩書房 2018)が届く。20年ほど前に石山修武さんが早稲田大学で開いたA3ワークショップに参加していた建築家である。現在、港区三田の聖坂でRC造の住宅を自力建設しており、竹橋の近代美術館で昨年に開催された「日本の家」展でも紹介されていた。現在も建設中のようだが、その途中経過をまとめた本である。大手ディベロッパーによる再開発地域内にある敷地なので奮闘しているらしいが、頑張って完成させてもらいたい。戸田と熊本の〈箱の家〉の基本設計段階におけるコストダウン案の打ち合わせ。細かな仕様は検討できないので、構造、シェルター、家具と設備の必要最小限の要素を残し思い切った減額案を検討しよう。コストダウンにかなり苦労した〈箱の家155〉と〈箱の家158〉の見積を参考にするように指示。来週中にはYさんに報告の予定。21時半帰宅。『サピエンス全史』を読みながら夜半就寝。


2018年04月11日(水)

7時起床。曇りでやや涼しい一日。8時半出社。昨日の日記に古市公威について書いたが、彼のことをどういう経緯で知ったのかを日記で検索したら『近代都市パリの誕生---鉄道・メトロ時代の熱狂』(北河大次郎:著 河出ブックス 2010)であることが判明する。記憶では確か何かの建築賞の審査のために三井所清典さんと一緒に移動していた時に新幹線の中で勧められた本だった。著者の北河大次郎さんは東大土木学科(現:社会基盤学科)の出身で、パリの鉄道と地下鉄について研究する中で、東大工学部の創立者である古市公威の経歴について調べたようだ。北河さんもフランスに留学している。みすず書房編集部の遠藤敏之さんから『建築家の読書塾』(難波和彦:編著 みすず書房 2015)の中国語翻訳版の出版契約書が届く。清華大学からの留学生で難波研究室OGの崔軒さんに昨年相談を受けた件だが、いよいよ本格的に動き始めたらしい。本書はかなりマニアックな書評本なので中国版に需要があるのか心配だったが、崔軒さんが強く勧めてくれたので承諾した。1年以上も放映が延期されていた海外向けの日本建築紹介のインタビュー番組「Four Facets of Contemporary Japanese Architecture」の第2相「Technology」の配信がようやく開始された。この相には僕も出演している。何度も打合せをして資料も提供したが、最終版は僕も観ていないので気になるところである。
https://www.edx.org/course/four-facets-contemporary-japanese-utokyox-utokyo005x
三重大学の浅野聡さんから8月に三重県立美術館で開催する講演会のポスターが届く。まだ先のイベントなのでHPやfacebookには7月になってから掲載しよう。思い立って講演用のスライドの編集を開始する。『進化する箱』(TPTO出版 2015)をまとめて以降〈箱の家〉シリーズについてはしばらく整理していないのでいい機会である。戸田にアクソメリストと最近の〈箱の家〉の四層構造を作成するように指示する。木村と「159吉村邸」の木工事について打合せ。吉村さんと家具についてメールのやり取り。夜は読書。21時半帰宅、風呂に入った後『サピエンス全史』を読みながら夜半就寝。


2018年04月10日(火)

7時起床。晴れでやや涼しい一日。8時半出社。9時に事務所を出て、銀座線、井の頭線を乗り継ぎ高井戸駅にて下車。「160平井邸」の改修工事監理へ。今日から1階床の石張工事が始まるのでTH-1と職人との打ち合わせ。眠り目地について念を押す。2階では窓台がつきサッシ工事の準備が整う。天井と壁の合板張は明日からだそうだ。石張工事が終わる今週金曜日の現場監理を伝えて11時過ぎに帰社。熊本のYさんに何点かのコメントを添えて概要書の修正版と第3案のデータを送信。玄関土間の採光と換気については審査機関との相談が必要だろう。縦ログ構法本の対談原稿を校正加筆し、説明用の図面と写真を添付してフリックスタジオへ送信。木村がまとめた「159吉村邸」の家具図を吉村さんに送信。「161齋藤邸」のボーリング調査が終了したので杭の仕様について佐々木構造計画に検討を依頼し、齋藤さんに報告メールを送る。『建築雑誌』2018年4月号が届いたのでザッと目を通す。留学の特集では、海外留学の歴史について藤森照信さんと土居義岳さんがインタビューに応えている。藤森さんは辰野金吾以降の海外留学史について概観し、土居さんは日本の大学における建築教育は工学系に偏っており、ボザール的な建築家教育が欠けている点を指摘している。しかしながら僕が疑問に思うもっとも肝心な問題、つまり世界中の大学の建築学科は(中国、韓国、東南アジアを含めて)Art & Architectureであるのに対して、日本の大学の建築学科だけが(東京芸大などの美術大学を除き)工学部に置かれていることの歴史的経緯についてはまったく言及されていない。おそらくその歴史的要因は、1886年(明治19年)に設立された帝国大学工科大学(東京大学工学部の前身)の初代学長である古市公威のフランスへの留学先が、建築系のエコール・デ・ボザールでもエコール・ポリテクニクでもなく、土木系のエコール・サントラル(中央工業大学)であったことにあると僕は考えている。では、なぜそうなったのかという問題から議論を始めないと、土居さんの問題提起は明確にならないと思う。18時過ぎに事務所を出て銀座線で京橋駅にて下車しLIXILギャラリーへ。18時半から伊東豊雄による「聖地・大三島を護る=創る」展のオープニング開始。伊東豊雄さんをはじめ、山本理顕、佐々木睦朗、陣内秀信、千葉学、赤松佳珠子、木下庸子といった人たちと会う。会場には大三島の海岸に建設予定の伊東さんの〈White-U〉を巨大にして開いた形の建築模型が展示されている。山本さんとは先日読み終わった『脱住宅』について短い意見交換。19時半に佐々木さんと会場を出て近くの京橋美美卯で筍うどんと凍結酒の夕食。20時半に店を出て21時過ぎに帰社。21時半に帰宅。『サピエンス全史』の上巻を読み終わり下巻に進む。グローバル化の初源にある〈貨幣〉〈帝国〉〈宗教〉に関する議論が続く。


2018年04月09日(月)

7時起床。晴れで風が強いが暑くも寒くもない快適な気候。8時半出社。9時過ぎに事務所を出て歩いて外苑前の診療所へ。9時半から3ヶ月定期検診。血圧が高めである以外は特に大きな問題はない。医師に耳鳴りへの対処法について尋ねてみたがよく分からないという返事。耳鼻咽喉科でも対処法が示せないのだから当然かもしれない。3ヶ月後の人間ドックを予約して10時過ぎ終了。青山通りを歩いて表参道の薬局で処方箋の薬を購入。表参道の欅並木の新緑が目に優しい。10時半帰社。ボーリング調査会社から「161齋藤邸」のボーリング調査途中報告。まだ所定の深さにまでは進んでいない。熊本のYさんとメールのやりとり。戸田がまとめた概要書と参考資料として「155桃井邸」平断詳細図を送ったが何点か要求条件との相違を指摘される。クライアントに指摘されるとは家早南友である。13時半に事務所を出て千代田線と都営三田線を乗り継ぎ三田駅にて下車。田町の建築会館ロビーで開催中の「〈地球の声〉デザイン小委員会」展を見学。小委員会メンバーによる様々なプロジェクトや研究が展示されている。報告書類は雑誌掲載のコピーなので読むのは無理。木造関係は集成材とCLTのプロジェクト、環境系は日射制御や通風制御などのプロジェクトに興味を持つ。狭い会場にテンコ盛りの充実した展示である。15時半帰社。フリックスタジオから『縦ログ構法本』の対談のゲラ原稿が届く。本来ならば、日本の林業にとってはロウテックな縦ログ構法は普及しやすいはずである。にもかかわらずあまり注目されることがなく他方でハイテックな集成材やCLTばかりにスポットライトが当てられているのは、日本の林業に対する建築家たちの認識不足と、それに加担しているジャーナリズムの責任が大きいと思う。僕としては集成材やCLTによるハイテックな構法に対しても大いに興味はあるのだが、それ以上に地場の材木屋が最も対応しやすい〈縦ログ構法〉に可能性を感じているのである。その点を建設業界に知らしめるための本なので、何とか早急に出版して林業関係者の自覚を促すとともに、建築家やジャーナリズムにも周知したい。「158石邸」の残工事に関して、石崎さん、工務店とメールのやりとり。風の強い日の風切り音対策について頭をひねる。夜は読書。21時半帰宅。『サピエンス全史』を読みながら夜半就寝。


2018年04月08日(日)

昨夜は興奮したせいか夢で何度も目が覚める。5時以降は眠れないのでぼんやりと読書。8時半過ぎに起床。流石に寝不足で身体が怠い。10時半に出社し日記を書き込んだ後は一旦帰宅。風呂に入って疲れをほぐす。その後はベッドの中で読書と仮眠の繰り返し。昼食を抜いたので18時に早めの夕食。たっぷりと日本酒を呑んだらようやく疲れが抜ける。1時間ばかり仮眠。21時にNHK特集「人類誕生」を観る。まさに現在読書中の『サピエンス全史』のテーマである。〈文化〉の誕生以前の人類史だが、進化は単なる偶然の積み重ねであり、必ずしも良い方向に進んでいるわけではないことを痛感する。例えばホモ・サピエンスは4万5千年前にオーストラリア大陸に初めて侵入し、それまで進化していた大型動物を絶滅させた。現在オーストラリアに残っているのは小型動物だけである。狩猟移動生活から農耕定住生活への転換も、必ずしもいい方向とは言い切れないという。人口が増え人口密度が上がってコミュニケーションが難しくなったからである。まだ〈社会脳仮説〉(ロビン・ダンバー)の紹介にまでは至っていないが、考えさせられることが多い。『サピエンス全史』を読みながら夜半就寝。


2018年04月07日(土)

7時起床。晴れのち曇りで肌寒い一日。8時出社。大急ぎで日記をまとめてHPに書き込み。8時半過ぎに事務所を出て、銀座線で新橋駅にて山手線に乗り換え浜松町駅へ。モノレールで羽田空港第1ターミナル駅に9時半着。手荷物検査場で模型のアクリケースに止めたドライバーを没収される。小さな十字ドライバーなのだが金属部分が6儖幣紊狼‘盪込禁止だそうだ。係員と少し口論したが無駄。そのまま置いて行くことにする。10時過ぎ発の熊本行に搭乗。定刻通り12時前に熊本空港着。ひどく寒くて時折雨が降る生憎の天気。空港前の道路でYさんの車にピックアップして貰い20分ほど走ってドライブインの魚料理屋へ。美味しい海鮮丼をご馳走になる。その後Y邸の敷地がある大津町へ向かう途中に、一昨年の熊本地震で大きな被害を受けた益城町を通る。既に崩れた建物はほとんど片付けられているが空き家も多く、道路や川端のあちこちに崩れた痕跡がある。大津町は益城町の数キロ北に位置する熊本市郊外の町で、市内から東方向の阿蘇山に向かう微かに緩やかな斜面の一角にある。大津町の人口は3万人余りだが、ここ数年人口が徐々に増えているそうだ。熊本県の全人口は増えても減ってもいないが、熊本市内から大津町に移住する若い家族が多いので、アパートやマンションの新築が多く、100戸単位の住宅地開発もいくつか進んでいるという。Yさんの敷地もそのような宅地開発地域の一画にある。既に写真で確認してはいたが、実際にその場所に立ってみると写真のイメージとは大きく異なる。まず北側の周辺隣地には新しい戸建住宅が建て込んでおり、敷地が市街地と南方に広がる畑地との境目に位置していることが分かる。畑地の遥か南方には阿蘇山から有明海に流れる白川が東西に走っている。南側の前面道路を挟んだ向かいの敷地では、既に地鎮祭と縄張を済ませているので、まもなく建築が始まるようだ。30分余り敷地周辺を歩き回る。雨が降ってきたので車で町内のYさんの借家へ向かう。Yさん宅は2戸が隣接したホンダの社宅である。奥さんに挨拶した後に住まいの中を見学。Yさんの趣味である自転車の作業部屋や同居している2匹のペルシャ猫の面倒などについて聞く。その後、居間で模型と図面のプレゼンテーション。時間をかけて細かな質問を受け、持参した第3案の承認を受ける。引き続き設計監理契約の関係書類について説明する。残った最大の課題は工事予算である。敷地購入の手続きなど、まだ残っている問題があるので、今月末の設計監理契約を目標に作業を進めることで合意し17時にプレゼンテーションは終了。その後は四方山話。18時半にお暇してYさんの車で熊本空港まで送ってもらう。大津町から空港までは約15分という近さである。出発まで少し時間があるので空港内のレストランで軽い夕食。定刻より30分遅れて20時過ぎに出発し22時前に羽田空港着。今朝の経路を逆に辿って22時前に帰宅。ウィスキーを呑みながら今日1日を反芻した後、『サピエンス全史』を読みながら夜半過ぎに就寝。


2018年04月06日(金)

7時起床。曇り後晴れで昨日よりもやや暖かいが夜は曇りに変わる。8時半出社。戸田が製作した熊本の〈箱の家〉のプレゼンテーション模型をチェック。ほとんど問題点は見られないがミニチュアの人の立位置を変更する。Yさんの要望を反映した第3案の図面一式をチェックバックし午後までにまとまる。今までで最もシンプルな案に収斂した。設計契約のための重要事項説明書を整理し、設計監理業務委託契約書(案)と合わせて3部をプリントアウトする。三重大学の浅野聡さんから僕の履歴書が届いたので捺印して返送。合わせて僕のプロフィル写真、パンフレットのための〈箱の家〉のアクソメ図リスト、〈箱の家001〉と〈箱の家022〉のファサード写真のデータを送信する。講演のタイトルを求められたので、とりあえず「進化する箱の家 1995-2018」とする。前田財団事務局から前田工学賞の表彰式の案内が届く。今年の前田工学賞は土木の受賞者がいないので、建築の川島範久さん一人である。山田一宇賞は石槫督和さんと藤下和浩さんの二人である。最近は歴史計画系の論文の入賞が多いので、エンジニア系の審査員は少々抵抗を示している感じを受けるが、応募数が少ないのでやむを得ない。川島さんの論文のテーマは環境系だが、デザインとの関係を総合的に論じた試みとして評価された。工務店から届いた「163齋藤邸」の質問リストについて木村と打ち合わせ。夜までに回答をまとめて各工務店に送信する。今日、木村が「159吉村邸」の現場監理を行なったので。その報告と現場写真を吉村夫妻に送信。東京芸大の中山英之さんから『中村英之|1/1000000000』(LIXIL出版 2017)が届く。スケールについて論じながら、中山さんらしい可愛いスケッチに溢れた物語のような絵本である。実作が紹介されていないのが残念だが、当然ながら意図的な目論見だろう。夜は読書。熊本の〈箱の家〉の模型写真を撮影。21時半帰宅。風呂に入り汗を流した後『サピエンス全史』を読みながら夜半就寝。明日は熊本に飛ぶ。


2018年04月05日(木)

7時起床。曇り時々晴れで昨日よりずっと涼しい。8時半出社。熊本のYさんから〈箱の家〉についてメールが届く。回答は明後日に直接会ってしよう。基本設計が収斂したので設計監理契約書の叩き台を作成する。契約条件が確定していない点もあるので、そこは赤字とする。10時半に谷繁玲央さんが来所。今年3月に東京大学建築学科を卒業し4月から大学院に進学する学生である。1970年前後に開発されたハウスメーカーの工業化住宅のエレメントを解体し再構築するというテーマで卒業設計をまとめ、学内では奨励賞を、三大学卒計展ではグランプリを、仙台の卒計日本一展では第3位を獲得したそうだ。工業化構法に関するテーマなので、僕の意見を聴きたいと訪ねてきた。プレゼンテーションを聴きながら、工業化住宅のクローズドシステムを批評的に〈開く〉というテーマに共感するとともに、工業化住宅が現代建築史に組み込まれたことに感慨を覚える。しかしながら僕の視点からは、構法と平面計画の関係に関する提案が盛り込まれていない点が最大の限界に見える。これまでに開発されたすべての工業化住宅の構法システムは、自由な平面計画、つまり生活様式を規定しないことを目的としている。ハウスメーカーは住宅の作り方を提案するだけであり、ユーザーの生活の仕方(平面計画)には口を出さないというスタンスなのである。建築家が新しい構法を開発する場合にも、必ず同じような前提を共有している。しかし僕としては、そのような前提は幻想に過ぎないといいたい。アメリカの工業化住宅のパイオニアであるジョージ・ネルソンも、1960年代にアルミニウムの住宅構法システムを開発したが、最終的に僕と同じ結論に達している。谷繁さんの卒業設計も同じ罠に囚われているように思われる。構法は何らかの形で必ず生活を規定する。だからその点を明確に意識化して、構法と平面計画の関係をデザインすべきなのだ。つまり構法の批評的コラージュは、平面計画の批評的コラージュを伴わないと説得力を持たないのだ。その点を明確に指摘するために、僕は「建築の4層構造」を提案したのである。以上の主張は『メタル建築史』の補論「システム化と工業化の目的---構法と機能」で詳しく論じたので読んでほしいと伝える。12時終了。三鷹の工務店から「128濱本邸」改修工事の現調のスケジュールについて問い合わせ。借家人が退出する今月下旬に現場説明に立ち会うことを約束する。TH-1から「160平井邸」の石張工事のスケジュール連絡があったので立ち会うこととする。三重大学の浅野聡さんから8月の講演に関する連絡メールが届く、ポスター作成のために早急に講演タイトルを決めて資料を送らねばならない。夜は読書。昨夜『私たちは今でも進化しているのか』を読み始めたが、アマゾンから『サピエンス全史---文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ:著 柴田裕介:訳 河出書房新社 2016)が届いたので、視界を広げる意味で、急遽こちら読書に切り替える。


2018年04月04日(水)

7時起床。晴れで暑いくらいの一日。8時半出社。9時に事務所を出て銀座線、井の頭線で明大前駅傾向線に乗り換え仙川駅にて下車。歩いて15分で「155桃井邸」に10時前着。今日が竣工後1年の検査である。TH-1の御厨さんと小松さん、界工作舎からは担当の木村が参加。南側の武者小路実篤公園の桜がわずかに残っている。竣工時には収納がほとんどなく伽藍堂の空間だったので、1年後にどのような生活空間に変わっているか興味を持った。まず外部を見て回る。ガルバリウム波板はまったく変化なし。基礎部分のフレキシブルボードが一部浮き上がっているので止めつけを依頼。内部空間はすっきりと整頓されている。1年検査のために片付けたのだろうが、食卓とソファがあるだけでそれ以外の家具はない。2階もダブルベッドがあるだけで、西側壁一面に収納が並べられカーテンで仕切られているため清々しい空間で、予想以上にコンパクトな住みこなしに嬉しくなる。TH-1にチェック項目の整理を指示して10時半過ぎに現場を発ち11時半に帰社。熊本のYさんと〈箱の家〉についてのやりとりが続く。徐々に細かな仕様に関する条件になりほとんど実施設計に近くなる。僕たちが出した概算見積はこれまでの〈箱の家〉からの外挿なので、多分Yさんの細かな要望までは実現できない可能性がある。熊本の工事単価がどの程度なのか分からないので何とも言えないが、今週末の熊本行きでは、その点についても話し合う必要があるだろう。木村と「159吉村邸」の家具について打ち合わせて、結果をTH-1に送信。戸田と模型製作について簡単な打ち合わせ。前田財団の論文選評のスケッチを少々。まだ締切までには少し時間があるので、じっくり考えよう。夜は読書。

『これからの教養---激変する世界を生き抜くための知の11講』(菅付雅信:編著 Discover 2017)を読み終わる。インタビュー集なので突っ込んだ論理展開はなく、読みやすいけれども表面を撫でる程度の知見しか得られない。東浩紀は郵便誤配論にもとづくコミュニケーションの〈偶然性〉の重要性を強調している。伊東豊雄は〈みんなの家〉の社会的背景に関するいつも通りのモダニズム批判である。経済学者の水野和夫の資本主義終焉論はなぜか歯切れが悪い。原研哉と深澤直人のデザイン論はかなり近いことをあらためて確認する。小説家の平野啓一郎による〈個人=individual〉と〈分人=dividual〉に関する議論は新鮮で興味深い。美術評論家の松井みどりは唯一の女性だが、社会性をテーマにした〈リレーショナル・アート〉や〈フェミニズム・アート〉の紹介は本書の中ではもっとも濃い内容である。霊長類学者の山極寿一の主張は先ごろ読んだロビン・ダンバーの〈社会脳仮説〉と重なり合っている。「はじめに」では12人の連続インタビューとあるが、掲載されているのは11人なのでもう一人は誰なのか調べてみると、メディアアーティストの落合陽一である。僕としてはもっとも話を聞いてみたい人なのだが、何か問題でもあったのだろうか。代官山蔦屋のイベントでは僕もちょっと気分のよくない経験を味わったことがあるので、何となく推測できる。そもそもインタビュー記録だけで、解説も付けずに本を作るという手法が安易だとも思う。引き続き『私たちは今でも進化しているのか』(マーリーン・ズック:著 渡会圭子:訳 文藝春秋 2015)を読み始める。原題は『What Evolution Really Tells Us about Sex,Diet and How We Live』である。


2018年04月03日(火)

7時起床。晴れで昨日と同じように暑い一日。8時半出社。9時に事務所を出て井の頭線の高井戸駅に9時45分着。歩いて「160平井邸」のマンションへ。平井さんのご両親と待ち合わせて改修現場へ。1階の床に大理石の見本を並べて眠り目地の状況を確認する。製品に僅かな寸法誤差があるので、目地を完全に消すことは難しいかもしれないが、できるだけ目地なしで仕上げるようにTH-1に頼み込む。2階に上がりフローリングの床を点検。最後にガス湯沸器を見てもらい10時半に終了。11時半過ぎに帰社。熊本のYさんと〈箱の家〉についてメールのやりとり。実施設計に近い質問だが、ほとんどコストに関わる内容なので、基本設計の段階でははっきりしたことは応えられない。戸田が模型製作の続行。木村「161齋藤邸」の2回目の質疑に関して打ち合わせ。夕方までにまとめて各建設会社に送信する。2回の質問はどちらも1社からなので、他社には質問はないのか、こちらから打診してみる。というのも質疑がないということは、設計内容を十分に理解していないか、あるいはどんぶり勘定の見積をしているか、どちらかの可能性が高いからである。熊本の〈箱の家〉は猫と同居する住宅なので、猫数匹と一種に住んでいる〈箱の家097〉のクライアント向山夫妻にfacebookのメッセージでアドバイスを頼む。直ちに回答が届き〈箱の家〉は猫にとっても住みやすいそうだが、壁仕上げについては猫の爪研ぎがあるので、シナ合板よりもアスペン(OSB研磨合板)の方がいいかもしれないとのこと。要検討である。夜は読書。『これからの教養---激変する世界を生き抜くための知の11講』はインタビュー本なので読みやすいが、とくに新しい発見はなく、ほとんど既知の知見の確認である。明日には読み終わりそうである。


2018年04月02日(月)

7時起床。晴れで暑いくらいの一日。8時半出社。9時過ぎに盛岡の平井さんから電話が入る。「160平井邸」の1階床の石張について「どうしても目地なしで張ってほしい」という要請なので、明朝に両親と現場に赴き、工務店と話し合いをすることにする。確かに目地の有無で石の表情はガラリと変わるから平井さんの拘りは理解できる。熊本のYさんと何度かメールをやり取りし〈箱の家〉の第2案の修正案をまとめる。基本設計がほぼ収斂したので戸田が模型製作を開始。今週土曜日に熊本にプレゼンテーションに行くことを決めて、インターネットで往復航空券を購入する。富山の酒井さんから電話が入る。一旦休止している「162酒井邸」の打ち合わせを、さらに4月末まで待ってほしいとのこと。今年度から子供達が学校に入るので、家族内でじっくり話し合う時間が取れないからなのでやむを得ない。とはいえスケジュールが少し心配だが。13時過ぎに事務所を出て千代田線の湯島駅にて下車。歩いて10分で近現代建築資料館へ、14時から企画小委員会の第11回。太田泰人、柏木博、鰺坂徹と僕の4人の委員が出席。資料館からは川向正人、遠藤信行、桐原武志の調査官と4月に就任したばかりの副館長以下4人が出席。今年6月に開催予定の「建築からまちへ1945-1970 戦後の都市へのまなざし」展に関する報告から始めて、秋季「明治150年、開館5周年特別展『明治の学校建築---高等教育施設を主眼に』」展、平成31年春季「吉田鉄郎」企画展、秋季「前川國男」展までの計画と準備状況の報告。引き続き昨年の秋季展「紙の上の建築---日本の建築ドローイング1970s―1990s」の報告。最後に各人が感想を述べて16時過ぎ終了。17時前に帰社。夜は読書。

「文化への不満」を再読。フロイトは〈自我〉に関する精神分析的な考察から始める。幼児の自我は当初は外界との境界を持たないが、徐々に自我は外界から分離独立して行く。しかし大人になっても自我と外界が明解に分離されることはない。フロイトは自我と外界との関係を『快感原則の彼岸』(1920)で初めて提唱した〈快感原則〉と〈現実原則〉によって分析する。外界との境界を持たない自我は〈快感原則〉に依存しているが、外界から切り離されるにつれて〈快感原則〉は〈現実原則〉によって規制されるようになる。〈現実原則〉が自我に与える規制には、1)自分の身体の脆さ、2)外界=自然の威力、3)他者=共同体、の三種類がある。ここでフロイトは改めて文化の定義を再確認している。「文化とは、人間の生活と、人間となる以前の動物的な祖先の生活の違いを作りだしたものであること、これは自然の脅威から人間を保護し、人間の相互的な関係を規制するという二つの目的に役立つすべての機能と制度の総称である」。ここからフロイトは精神分析的な視点に基づき文化の特徴をリストアップしていく。火の支配と道具の利用、秩序と美、法と正義、欲動(攻撃)の規制と放棄、共同体の形成、愛と性(の抑圧)、などである。〈文化〉に関するこうした検証から、フロイトは〈欲動〉の制御が〈文化〉の根本的な役割であるという結論に至る。『快感原則の彼岸』を引用しながらフロイトはこう述べている。「生命の起源について考察し、生物学的な並行現象に注目しながら、生物を保存し、さらに大きな統一にもたらそうとする欲動の他に、それとは正反対の欲動、こうした統一を解消し、原初の無機的な状態に戻ろうとする欲動があるに違いないという結論を下したのである。つまりエロス(愛)の他に、死(タナトス)の欲動が存在することを認め、すべての生命現象を、これら二つの欲動の協力関係と対立関係から説明しようとしたのである」。かくしてフロイトはこう結論づける「文化とは、人類という種において演じられたエロスと死との闘い、性の欲動と破壊欲動の闘いなのである。この闘いこそが人生そのものの本質的な内容なのであり、だからこそ文化の発展とは、人間という種の生存を賭けた闘いと呼べるのである」。〈破壊欲動〉を自我が抑圧し自己に差し向け内面化することによって〈超自我〉が生まれ〈良心〉が生まれる。共同体においても〈破壊欲動〉に対して同じような抑圧がはたらき、そこから〈倫理〉と〈道徳〉が生まれる。このようなプロセスについてフロイトはこういっている。「文化的なプロセスの目的は、多数の個人を一つの集団にまとめ上げることであり、個人の発達のプロセスの目的は、一人の個人を多数の人間で構成される集団に組み込もうとすることである」。そして文化が個人に対して共同体の権威として働き、両者の間に対立をもたらした場合に〈文化への不満〉が生まれる。このようなフロイトの文化論は、ロビン・ダンバーの『人類進化の謎を解き明かす』やアレックス・メスーディの『文化進化論』に接木することができるだろう。さらに、建築空間も一種の文化だとするならば、山本理顕のコミュニティ空間論にも展開できるはずである。僕としては文化論を空間論にまでの展開する可能性を探りたいと考えてフロイトまで遡ってみたのである。というか山本やアレントがいうように、逆に空間論によって文化論を再編成することができるのではないかと考えるのである。なので、このテーマは今後もずっと追求していくつもりである。引き続き、頭の体操として『これからの教養---激変する世界を生き抜くための知の11講』(菅付雅信:編著 Discover 2017)を読んでみる。


2018年04月01日(日)

8時起床。晴れで暖かい一日。時たまクシャミが続くが花粉症は治ったようだ。10時半出社。熊本のYさんから第2案に対するコメントが届く。いくつかの点について修正要求を受けたが、概ね収斂の方向に向かっている。細かな質問に答えて早急に修正案をまとめる旨の返信メールを送る。池辺陽原稿の英訳文に目を通し、部分的に校正して近現代建築資料館へ返送する。その後はひたすら熊本の〈箱の家〉の修正スケッチ。昼までにまとまる、平井さんから「160平井邸」1階床の石張りに関するメールが届く。二日前に送った現場監理報告の写真で目地に僅かな隙間があるのが気になるとのこと。石の製品誤差なので止むを得ないのだが、どうしても我慢できないらしい。直ちにTH-1にメール連絡し、平井さんに石張工事に立ち会ってもらうためスケジュールを確認する。15時に帰宅し風呂に入った後、ベッドの中で読書。

『幻想の未来/文化への不満』(ジグムント・フロイト:著 中山元:訳 光文社古典新訳文庫 2007)所収の「幻想の未来(1927)」と「文化への不満(1930)」を読み終わる。「人間モーゼと一神教」も収められているが、とりあえずの僕の興味は前2論文である。両者とも人間の〈文化〉に関する精神分析的な考察である。フロイトは文化についてこう定義している。「文化とは、人間の生を動物的な的な条件抜け出させるすべてのものであり、動物の生との違いを作りだすもののことである。だから私は文化を文明とは区別しないつもりである。ところで、文化を観察するものからすると、文化には二つの重要な側面がある。まず人間が自然の力を制御し、人間の欲求を充足するべく自然のさまざまな財を獲得するために手にしてきたすべての知識と能力がある。また人間どうしの関係と、獲得できた財の配分を規制するための制度というものが存在する」。〈動物の生〉を駆動しているのは〈欲動〉である。欲動には生の欲動である〈エロス〉と破壊(死)の欲動である〈タナトス〉があるという仮説は『快感原則の彼岸』(1920)で提唱されている。「幻想の未来」は文化の代表的な幻想である〈宗教〉に関する論考である。フロイトはこういっている。「人間の魂の発展の歴史は、(欲動に対する)外的な強制が次第に内面化されてきた歴史である。魂の特別な審級であるである〈超自我〉は、外的な強制を自らの命令に転換し、引き受けるようになったのである」。共同体における超自我的な存在が文化であり〈倫理〉であり〈宗教〉である。フロイトはこういっている。「人間が共同生活をすることでたがいにもたらす苦悩に配慮し、人間が苦痛に感じる文化的な規範が遵守されるように監視することが、神々の役割となるのである。こうして文化的な規範は神々が作りだしたものとされ、人間社会を超越したものとして自然界と宇宙の諸現象にまで拡張して適用されるようになるのである」。本論文でフロイトはこのような〈宗教〉が幻想に過ぎないことを精神分析的な視点から論証し、文化と宗教の関係を根本的に変革すべきだと提案している。「宗教とは、人類一般に見られる強迫神経症のようなものなのだ。(中略)文化的な規範を理性的に動機づける際に、宗教の教義に含まれた歴史的な真理を利用するのをやめる必要がる」。フロイトは宗教に代えて、科学と理性を持ち出しているが、この論文が書かれてから90年以上経過した現在でも、フロイトの提案は実現されていない。「文化への不満」については、明日読み直してみよう。


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