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建築は4つの層の重なり:互いに結びつき統合へ導く

サステイナブル・デザインをできるだけ広いコンテクストでとらえ直すための枠組みを提案したい。
これは「建築の4層構造」と呼ばれ、建築を4つの層の重なりとしてとらえるマトリクスである(表)。

「建築の4層構造」に込められているのは、以下のような建築観である。
・すべての建築は、物質性、エネルギー性、社会的機能性、記号性という4つの層を備えている
・4つの層は建築をとらえる視点に対応し、すべての建築は4つの層によってとらえることができる
・4つの層はそれぞれ独立したサブシステムであるが、何らかの関係で互いに結びついている
・4つの層のいずれかを変化させると他の層も必ず変化する。しかしその変化は一義的ではない
・それぞれの層は、デザインを成立させるプログラムと、それを解決する技術を備えている
・デザインはどの層からスタートしても構わないが、必ずすべての層を通過しなければならない
・4つの層を調整し、一定の関係をつくり出すことが、建築のデザイン行為である。

なぜ4層であり、なぜ各層が独立したサブシステムなのか。この問いに対しては、さまざまな根拠を挙げることができるが、ここでは詳しく説明する余裕がない。ひとつだけはっきりいえるのは、マトリックスの左端列に示したように、「建築の4層構造」は建築学を構成する専門ジャンルに対応しており、実際的にも有効だということである。
「建築の4層構造」の背景にあるのは、以下のような主張である。
・近代建築における機能主義とは、機能性(第3層)を優先するデザイン思想である
・近代建築における技術主義とは、物質性(第1層)を優先するデザイン思想である
・モダニズムは機能主義と技術主義が結びついたデザイン思想であった。
・ これに対しポストモダニズムは、モダニズムが拒否した記号性を優先しようとした。
・ 昨今のサステイナブル・デザインは、エネルギー性(第2層)に注目したデザイン思想だと見なされている。
・ しかしながら本来のサステイナブル・デザインは4層すべてにかかわり、それらを統合することによって成立する。

このように「建築の4層構造」は、20世紀初頭のモダニズムのデザイン思想を21世紀初頭サステイナブル・デザインヘと展開させ、統合するための基礎理論的なマトリクスだといってよい。
「建築の4層構造」によれば、サステイナブル・デザインのテーマは建物の長寿命化や省エネルギーだけに限定されない。マトリクスの右端列に示しているように、サステイナブル・デザインには、それぞれの層に対応した固有のテーマが存在している。それぞれのテーマは独自に追求することができるが、最終的に、それらはひとつのデザインに統合されねばならない。サステイナブル・デザインとは「建築の4層構造」に示されたテーマを総合的に追求することなのである。


                                  

 

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