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建築雑誌2004年9月号 特集「建築評論の行方」
記憶に残る批評:『隠喩としての建築』柄谷行人:著 岩波書店 2004

「思考がうみ出す空間を、経験と思考がとらえるエコロジカルな連鎖の構造」

難波和彦

クリストファー・アレグザンダーは「都市はツリーではない」において、人工都市と自然都市の違いをツリーとセミラチスというシステムの構造の違いとしてとらえ、近代的な人工都市がツリーシステムとなるのは、デザイナーの思考がツリーシステムであることに起因することを明らかにした。その後、アレグザンダーは自然都市のようなセミラチスな都市をうみ出す方法としてパターン・ランゲージを提唱する。アレグザンダーの視点の特異性は空間の構造を、それをうみ出す思考の構造に遡って検証した点にある。
これに対し柄谷行人は、アレグザンダー自身の意図とはまったく逆に、人工都市=ツリーから自然都市=セミラチスへの転換を、人工的な秩序の精緻化として読み取り、近代以降のデザイナーが逃れることのできない宿命的な思考の構造、すなわち「隠喩としての建築」を明らかにした。かくして、思考がうみ出す空間が、経験され思考によってとらえ直されるというエコロジカルな連鎖によって、ツリーがセミラチスへと変換される構造が暴き出されたのである。ここにモノとしての建築に関する視点のコペルニクス的転換がある。


 

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