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新建築2003年1月号のアンケートに対する回答

新建築2003年1月号 シリーズ:環境とデザイン―01
『設計から考える  設計者への10つの質問』

>01 どういうときに環境について強く意識しますか?

最近では、何をするにも環境について考えますが、僕が問題にしたいのは環境そのものではなく、むしろ環境が問題にされるコンテクストです。
ここで問われている環境とは、おそらく地球環境や、それに関連したエネルギー問題だと思われますが、その問題だけに焦点を当て、そこから出発して建築や都市を論じる視点に、大いなる疑問を感じます。

>02 環境問題は現在の設計行為の中にどのように入り込んできていると感じていますか?

再度念を押しますが、環境問題をエネルギー的・技術的な視点だけに限定してとらえるべきではありません。社会的、経済的、文化的視点と関係づけて総合的にとらえなければ片手落ちです。そのような総合的な意味においてなら、現代では環境問題ヘの取り組みと設計行為とは、ほとんど同一の問題であり、区別することはできません。

>03 建築と環境のもっとも望ましい関係とはどういうものと考えますか?

それを探り出すのが現代の建築・都市設計の最大の課題です。まだ答えはありません。

>04 それが実現されていると思われるもの(建築・景観・デザイン、ドローイング、何でも可)を、ビジュアルにご提示下さい。

一つの試みとして、既存建築のコンバージョンによる都市再生を紹介します。
これは都心に多数存在している空きオフィスビルを集合住宅にコンバート(転用)することによって、新しいスタイルの都心居住の可能性を提案し、都心の街並みを活性化させようとする研究プロジェクトです。最小限のコストで、既存のストックを再利用することも、環境問題に対する一つの寄与であると考えています。

>05 環境とデザインという観点から、今、最も注目している素材・材料は何ですか?

アルミニウムといいたいところですが、そこまで言い切ることはできません。しかし、アルミニウムの精錬に必要なエネルギーの大きさだけによって、それを否定するのも問題だと思います。アルミニウムについては、さらに多様な可能性の追求が必要です。集成材やLVLを初めとするエンジニアリング・ウッドの可能性にも興味があります。さらに高度な材料として、カーボンファイバーやプラスチックの複合材料にも注目しています。いずれにせよ、これからの素材は、素材それ自体としてよりも、素材の特性を生かした他材料との複合材料として、あるいは工業化された構法として、デザインの中に組み込まれていくでしょう。

>06 環境とデザインという観点から、今、最も注目している設備機器・システムは何ですか?

素材と同様に、設備機器そのものは、いくら性能が優れていてもデザインの一部品にすぎません。重要なのは、設備が組み込まれた構法としても可能性です。
その意味で、現在注目しているのは、水の蓄熱性と対流性を利用した水蓄熱式床暖房(アクアレイヤー)システム、ソーラーバッテリーや風力発電システム、燃料電池、既存建物の給排水の自由度を増加させる強制給排水システムなどです。

>07 環境とデザインという観点から、今、最も注目している構法は何ですか?

複合断熱パネルを使った外断熱構法、ガラスによるダブルスキン構法、緑化技術、既存建物の耐震性を改良するレトロ・フィット技術などに興味を持っています。

>08 環境とデザインという観点から、今、最も改めるべきだと思うこと(デザイン、構法、システムいずれでも可)は何ですか?

ライフスタイルや居住環境に関する主張から遊離した、表現としての(この前提条件がきわめて重要ですが)「コンクリート打ち放し仕上げ」や「ガラスを多用した透明建築」です。

>09 将来、どのような技術あるいはシステムの開発・発展にもっとも可能性を感じますか?

既存建物の性能を改良し長寿命化させるような複合的なシステムの開発などに可能性を感じます。設備技術としては、手軽な燃料電池の開発に期待しています。

>10 それは、人間・建築・環境の関係をどのように変えていくものと想像しますか?

MORE WITH LESS(フラー)とLESS IS MORE(ミース)の融合です。

 

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