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箱の家 PROJECT 青本往来記
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コンパクト箱の家

2015年02月28日（土）

5時半起床。晴れで比較的暖かい。大急ぎで朝食を済ませ6時過ぎに出社。荷物を揃えて直ちに事務所を出て新宿へ。早朝の地下街は閑散としているが高速バスターミナルは人混みでごった返している。飯塚と待ち合わせ7時発の飯田駅バスの乗車。車内は満員である。土曜日だが大きな渋滞はなく伊賀良に11時前に到着。大蔵建設の鈴木さんにピックアップしてもらい「150河合邸」へ。今日は建物引渡しとオープンハウスである。大蔵建設社長以下協力業者が集まり機器説明から始める。床暖房が効いているので室内は殊の外暖かい。工事もきれいに仕上がっている。大蔵建設は本当に頑張ってくれた。後々のフォローもしっかり頼みたい。書類説明が一通り終ったのが昼過ぎ。昼食の弁当を食べているうちに第一陣が到着。以後、続々と人が訪れてくる。河合夫妻の知り合いや大蔵建設の案内によるのだろうか幼い子連れの夫婦が多いのが印象的である。建築関係の人も多い。三重県から車でやってきた夫婦がいたのには驚く。高速道路で2時間余ならばそれほど遠くないようだ。旧家のリノベーションに箱の家を適用できるだろうかと聞かれたのでちょうど考え始めた所ですと答える。5時まで訪れる人が絶えずすっかり疲れてしまう。最後に建物の前で河合一家と大蔵建設で記念写真を撮りすべての行事が終了。鍵を締め河合一家にお礼を言って車で伊賀良まで送ってもらう。6時19分発の高速バスに乗り定刻よりも少し遅れて10時半過ぎに西新宿ターミナルの到着。飯塚と別れて11時に帰宅。ウィスキーを煽り『アーツ・アンド・クラフツ運動』を読みながら夜半就寝。


2015年02月27日（金）

7時前起床。昨日とは打って変わって快晴で暖かいが昼過ぎから曇り夜はかなり寒くなる。７時半過ぎに出社。8時前に事務所を出て明治神宮前から副都心線東横線を乗り継ぎ横浜で京急線に乗り換え上大岡駅に9時15分着。タクシーで「箱の家152」へ。今日は建物引渡である。すでにクライアントの四宮一家が到着している。飯塚はカメラマンの上田さんと撮影中である。ピーカンの天気なので電柱や電線の影に気をつけねばならない。まず協力業者に電気給排水設備の機器説明をしてもらうことから始め工務店から鍵を渡し書類を交換して11時過ぎに終了。細かな補修と清掃は3月7日(土）のオープンハウスまでに済ませるように指示する。しばらく撮影に立ち会った後に歩いて上大岡駅まで戻る。横浜駅ビルで昼食を摂ってから1時過ぎに帰社。昨日栃内が埼玉県の役所を回って調べた情報をまとめてDさんにメール報告する。畑地への住宅建設は開発行為になるので複雑な許可手続が必要である。Dさんからの返信メールで敷地の地盤調査の結果報告が届く。残念ながら予想通りの軟弱地盤で砂質土壌であるため液状化の可能性もある。地盤改良が必要だが鋼管杭と柱状改良のどちらを採用すべきかの判断が難しい。とりあえず地盤調査会社と相談することにする。夜6時半に妻と家を出て久しぶりに原宿の行きつけのイタ飯屋で夕食。いつもと同じコースだが明日が早いのでワインは控えめに抑える。8時に帰社。9時半に帰宅。『アーツ・アンド・クラフツ運動』(ジリアン・ネイラー:著 川端康雄＋菅靖子:訳 みすず書房 2013)の再読を始める。


2015年02月26日（木）

7時起床。曇りのち小雨で寒い一日。８時過ぎ出社。直ちに事務所を出て青山歯科医院へ。8時半から虫歯の治療。麻酔をして左犬歯の根元周りを固める本格的な治療で9時半までかかる。麻酔が強かったせいで左頬と眼の下が昼過ぎまで感覚がなかった。飯塚と「150河合邸」と「152四宮邸」の引渡しのための資料を整理する。追加工事や交通費や申請料の立替金などを整理する。施工図の整理と製本は少し先になりそうだ。夕方まで原稿と読書を繰り返す。

『すべては1979年から始まった---21世紀を方向付けた反逆者たち』（クリスチャン・カリル：著　北川知子：訳　草思社　2015）を一気に読み通す。第22章「ジハード」ではアフガン戦線がパキスタンを巻き込み1980年代に「ジハード（聖戦）」となってイスラム圏に拡大しその中からアイマン・ザワヒーリーやウサーマ・ビン・ラーディが率いるイスラム原理主義集団のタリバンが生まれた経緯が説明されている。第23章「女性は後戻りしないものです」では1980年代以降にサッチャリズムが平板化され世界中に浸透していった経緯が紹介される。第24章「有中国特色的社会主義」では��小平による改革開放政策の1980年代以降の急激な展開の経緯が綴られている。エピローグ「進歩がもたらす問題」は本書のまとめだが学ぶ点がきわめて多い。例えば「進歩」に対する次のような警告はいまだに説得力をもっていると思う。
「進歩という考え方には、傲慢さのタネが包含されている。社会的・物質的進歩の推進者は、自分たちの計画が科学的で、不可避で、争う余地がなく、進歩は、それ自体が目的だと考えがちだ。しかし、これが当てはまるのは、特定の社会の圧倒的多数がこのビジョンを受け入れようとするときだけだ。1979年の物語は、これを拒絶した人々の物語として見ることができる。（中略）1979年の教訓は、社会、階級、個人の技術的・経済的課題への反応は、技術や経済だけには還元できないことを、私たちに警告する。」
ホメイニーの政治がイスラム教に根ざしていることはあまりにも明らかである。しかしマーガレット・サッチャーの新自由主義経済政策が個人の自由を拘束しないという宗教的信念に根ざしていることも忘れてはならない。��小平の改革開放政策も個人の自由という人間性に根ざしている。しかしそれは経済的な自由であって政治的自由ではない。ヨハネス・パウロ�鏡い�ポーランド国民に説いたのは個人の自由だがそれは精神的な自由であって政治的な自由ではない。にもかかわらず現代では政治と宗教を分離することはできないし近代啓蒙主義が主張した政教分離という思想は通用しない。柄谷行人的に言えば政治と宗教は様式はことなるがいずれも交換の一種だからである。
著者の結論はこうである。
「1979年の出来事を見ることで、私たちは反革命が担える無数の形を理解できる。��小平は中国の道筋をひそかに、微妙に変えた。ホメイニーとアフガン人は、暴力的な反乱、抑圧された侵略を突如変形させる解放を選んだ。唯一確かなことは、政治と経済の趨勢は一直線には進まないということだ。79年の経験が一つの結論を示唆するとしたら、それは、私たちは反動の力を決して過小評価すべきではないということである。」
5時半起床。晴れで比較的暖かい。大急ぎで朝食を済ませ6時過ぎに出社。荷物を揃えて直ちに事務所を出て新宿へ。早朝の地下街は閑散としているが高速バスターミナルは人混みでごった返している。飯塚と待ち合わせ7時発の飯田駅バスの乗車。車内は満員である。土曜日だが大きな渋滞はなく伊賀良に11時前に到着。大蔵建設の鈴木さんにピックアップしてもらい「150河合邸」へ。今日は建物引渡しとオープンハウスである。大蔵建設社長以下協力業者が集まり機器説明から始める。床暖房が効いているので室内は殊の外暖かい。工事もきれいに仕上がっている。大蔵建設は本当に頑張ってくれた。後々のフォローもしっかり頼みたい。書類説明が一通り終ったのが昼過ぎ。昼食の弁当を食べているうちに第一陣が到着。以後、続々と人が訪れてくる。河合夫妻の知り合いや大蔵建設の案内によるのだろうか幼い子連れの夫婦が多いのが印象的である。建築関係の人も多い。三重県から車でやってきた夫婦がいたのには驚く。高速道路で2時間余ならばそれほど遠くないようだ。旧家のリノベーションに箱の家を適用できるだろうかと聞かれたのでちょうど考え始めた所ですと答える。5時まで訪れる人が絶えずすっかり疲れてしまう。最後に建物の前で河合一家と大蔵建設で記念写真を撮りすべての行事が終了。鍵を締め河合一家にお礼を言って車で伊賀良まで送ってもらう。6時19分発の高速バスに乗り定刻よりも少し遅れて10時半過ぎに西新宿ターミナルの到着。飯塚と別れて11時に帰宅。ウィスキーを煽り『アーツ・アンド・クラフツ運動』を読みながら夜半就寝。


2015年02月25日（水）

7時起床。曇りときどき晴れで肌寒い一日。8時半に出社。今日も飯塚は飯田の「150河合邸」の撮影に立ち会っている。昼前に連絡が入り天気があまり良くないので早めに切り上げることになったという。早速ウェブで帰りの高速バスの便を一便早める変更を予約する。午後に台湾台中逢甲大学の加藤義夫さんから難波研OBのMatyas Gutaiくんが就任したというメールが届く。同じ研究室のようなので対応をよろしくという返事を送る。加藤さんは早稲田大出身の同世代だが1970年代半ばに当時の吉阪隆正が主宰していた「たての会」で安藤忠雄と石井和紘の対談レクチャーを企画したことがあるという。その際のスライドを保管しているというので是非見せて欲しいと頼む。今日は1日原稿と読書に集中する。『進化する箱』は池辺陽に関する記述のところで頓挫しているが何とか突破できそうになってきた。読書と交互に進めてようやく10枚まで書く。第１章はあと10毎余である。『すべては1979年から始まった』は第21章「ホメイニーの子供たち」まで進む。本書の目的の一つが最近のイスラム諸国の動向の歴史的背景について論じることであることが段々分かってきた。


2015年02月24日（火）

6時半起床。晴れのち曇りで暖かい。7時時過ぎに出社。直ちに事務所を出て副都心線の明治神宮前駅から通勤特急で横浜駅にて下車。京急線に乗り換え8時半過ぎに上大岡駅で下車。改札口で飯塚と待ち合わせタクシーで「152四宮邸」へ。瀬戸建設社長も立ち会ってくれる。現場は外構工事の真最中である。9時から施主と事務所の検査。まだ電気やガスが繋がっていないため設備機器類の試運転はできない。四宮さんには建築工事の仕上がり状態だけを見てもらい幾つか修正や改良を指示される。室内空間の出来上がりについては満足してもらえたようだ。外装工事についても説明し10時過ぎに終了。瀬戸社長と一緒にタクシーで上大岡駅に戻る。京急線の急行で品川まで行き山手線に乗り換えて原宿で飯塚と別れる。飯塚は西新宿12時発の高速バスでカメラマンの上田宏さんと飯田の「150河合邸」の撮影に向かう。12時前に帰社。午後は来年度の放送大学の単位取得問題の作成に取り組む。番組が始まってここ2年間はこれからの住宅の課題について「建築の４層構造」にもとづいて説明する問題が主だったが来年度からは趣向を変えてサステイナブル・デザインと番組に対する感想に問題を変える事にする。模範回答を公開するので番組のシラバスやシナリオやテキストを読みながら長い回答をまとめる。夜は原稿と読書。９時半帰宅。『すべては1979年から始まった』を読みながら夜半就寝。


2015年02月23日（月）

7時起床。曇りで生暖かい。8時半出社。11時過ぎに事務所を出て青山の銀行にて雑用を済ませた後に表参道駅から地下鉄銀座線と丸ノ内線を乗り継ぎ東京駅で下車。歩いて丸の内オアゾビル7階の丸の内ホテルのロビーへ。12時20分に安藤忠雄さんと待ち合わせ8階レストランで昼食を食べながら近況報告と今日の有識者会議の準備の打ち合わせ。前回会議の概要を報告し今日の議題について考え方を確認する。１時半にホテルを出てタクシーで湯島の国立近現代建築資料館へ2時前着。2時から有識者会議開始。安藤忠雄さんと田中真紀子さんと僕の他に４人のメンバーと館長が参加。資料収集の現状と今後の方針について意見交換。館長に対して資料館としての今後の計画を3月中にまとめることを依頼しそれをもとにして４月以降に次回の会議を開くことを確認して3時半過ぎに終了。４時半に帰社。『進化する箱』の原稿と読書の繰り返し。「箱の家150」と「箱の家152」の最終検査、引渡、オープンハウスに竣工写真撮影が入ったためスケジュールが詰まっている。今週は天気予報との調整も必要なので忙しくなりそうだ。９時半帰宅。『すべては1979年から始まった』を読みながら夜半就寝。


2015年02月22日（日）

8時過ぎ起床。ゆっくりと朝食を摂り10時過ぎ出社。昨日メディアデザイン研究所の齋藤歩さんから先月のLIXIL銀座「藤村龍至出版記念トークセッション」の最終ゲラが届く。「10+1 WEB magazine」のフォーマットで写真や資料を掲載した原稿である。改めて通しで読んでみると最初の平板な印象が消えて少し奥行きが出てきた。それでもディスカッションのすれ違いが気になるので少し加筆して返信する。総体的に見て藤村さんや井庭さんは無意識のうちに建築や都市のように「目に見える」フィジカルな存在よりもそこで展開している「目に見えない」人間の社会活動の方が重要であるという通説を前提にしながら議論を進めている。その結果パタン・ランゲージのような物理的な建築のデザインの研究よりも教育活動のようなソフトなプロセスのデザインの研究の方が進化しているという主張が出てくる。僕はその点を批判するために山本理顕の『思想』の連載論文や『iichiko』最新号の山本論文を紹介したのだが最初の原稿では完全に削除されていた。今回の最終ゲラでは僕の発言が復活しているのでようやく溜飲が下りた感じである。要するに僕が言いたいのは物理的な存在を伴わないかぎりソフトな活動や思想は説得力を持ち得ないということである。両者の関係は身体と意識の関係と同型である。これこそがエコロジカルな思考というべきだろう。しかしこのような考え方は人間の個体レベルでは受け入れられても社会的なレベルではなかなか理解されないようである。意識には言語があり物言う存在だが身体には言語がなく物言わぬ存在だからである。そのことを痛感したトークセッションだった。午後はツタヤから届いたインド映画『きっと、うまくいく』（ラージクマール・ヒラニ：監督 2009）のDVDを観る。ツタヤでは四つ星の高評価を得ている。インドではエンジニアになることが社会的な成功への近道であるという学歴偏重社会を皮肉った３時間弱の映画である。ミュージカル仕立てのところにはついていけないが1960年代の日本を見ているようで身につまされる。夕方早めに帰宅。夜NHKTVの特集で「腸内細菌」の特集を見る。「腸内フローラ（花畑）」と呼ばれる10兆もの細菌の活動が癌や肥満だけでなく性格にも影響しているという。消化器系が神経系を左右することは医学会においては一種の下克上的革命というべきだろう。


2015年02月21日（土）

7時起床。晴れでやや暖かい。8時半出社。9時過ぎに事務所を出て新副都心線と東横線で横浜駅で下車。京急線に乗り換えて10時過ぎに上大岡駅着。改札口で『新建築住宅特集』編集部の内藤麻美さんと待ち合わせタクシーで「152四宮邸」の現場へ。飯塚と現場監督が迎えてくれる。現場は清掃が終わり片付けの最中。室内外にダンボール箱が残っている。外装工事と設備工事は途中で工程よりやや遅れ気味のようだ。室内を案内し設計の趣旨について説明する。その後外に出て敷地と建物の関係についても説明。掲載の検討を依頼する。内藤さんと11時半過ぎのバスに乗り上大岡駅まで戻り駅構内で別れる。京急線で横浜まで戻り駅ビルの地下街で昼食を摂った後にみなとみらい線で馬車道駅にて下車。「リッチライフ・コンペ」の表彰式まで少し時間があるので馬車道通りに面したカフェで一服する。入賞作品のコピーに一通り目を通して講評について問題点を整理する。2時半過ぎにカフェを出て馬車道を南下しリッチライフ本社の5階会議室へ。まもなく玉田敦士さんと河内一泰さんも到着し3時過ぎからコンペ表彰式の開始。まず石田専務が挨拶した後に入選作品のスライドを映しながら各入選者がコメントし僕と河内さんが講評するという手順で進む。「マンションの進化形」という課題だったが集合住宅の住戸の組み替えや共用部分への提案が多い中で最優秀案は高齢者社会における住宅と公共空間を一体化させた未来都市のような集合住宅を提案しており頭一つ突出していた。入選者に表彰状と賞金を渡し4時過ぎに終了。その後同じ会場で入選者とビールと軽食の懇親会。来年もコンペを開催するそうだが実施コンペになるかもしれないという専務の発言に皆が色めき立つ。5時に終了。一休みした後に河内、玉田両氏と馬車道裏に向かい居酒屋で打ち上げ。魚料理と日本酒で四方山話。8時に解散し河内さんと一緒にみなとみらい線で渋谷方向に戻る。９時半帰宅。ベッドの中で読書続行。

『すべては1979年から始まった』を読み続ける。ちょうど半分の第13章「三度の追放と三度の復権」まで来たが予想通りトピックを螺旋状に辿りながら3周目に入るところである。第10章「事実に基づき真実を求める」では毛沢東が逝き四人組が粛清されて文化大革命が収束しいよいよ��小平の時代に転換する。しかしまだ本格的な改革開放政策は始まらない。手始めはアメリカとの国交正常化である。第12章「レディ、サッチャー」では第二次大戦直後の1947年にスイスで開かれたフリードリッヒ・ハイエク主催のモンペルラン・ソサイエティ会議が紹介されている。出席者はミルトン・フリードマン、ルードウィッヒ・フォン・ミューゼス、カール・ポパーといった筋金入りの自由主義者たちである。ここでサッチャー内閣の政策の核となるいわゆるサッチャリズムの起源となる思想が宣言される。


2015年02月20日（金）

7時起床。快晴で暖かさが続く。8時半出社。10時に博多から村岡徳子さんが来所。いつものように手作りのパンをいただく。今年初めにパリに旅行しルーブル・ランスにも行ったという。ちょうどテロの直後だったようだが大過はなかったらしい。今日は飯塚が飯田の「150河合邸」の最終検査に行くことになっているが電車の遅れで予定の高速バスに乗り遅れたようだ。１時間遅れで伊賀良についたという知らせが届く。駐車場の見積も予算をかなりオーバーし現場の床仕上げにムラが残るなど課題は多い。天気予報では撮影予定日が悪天候なので予定を変更し高速バスの予約も変更する。界工作舎OBの中川純さんから「153D邸」床暖房のシミュレーション結果が届く。内容について栃内と精査する。やはり温度分布に課題が残りそうなので床下空調機の配置や方向を再検討する必要がありそうだ。幾つかの代替案を提案し再検討を依頼する。「152四宮邸」の現場監理のために僕は明朝のDさんとの打合せに出席できないので今後のスケジュールと工務店やメーカーへの連絡について栃内に指示する。使用予定のアルミサッシについてLIXILにメール連絡。夜は『進化する箱』の原稿に取り組むが池辺陽について書き始めたところで休止。池辺については『池辺陽試論---戦後モダニズムの極北』（彰国社 1999）で考えをまとめたので新しいコンテクストを思いつかず発火しない。


2015年02月19日（木）

7時起床。快晴でやや暖かい。7時半過ぎに妻から成田に到着しこれからリムジンに乗るというメールが届く。8時半出社。9時半に妻が帰宅し事務所スタッフへのお土産を受け取る。昨日に引き続き貴志雅樹論を書き続ける。貴志との出会いから同世代としての時代状況の説明と安藤忠雄との出会いへと進み修士論文の紹介とデザイン方法論の模索を辿った後に貴志作品の展開の検討を行い最後にウィトゲンシュタインを参照した形式論ノートの引用で締めるというストーリーでまとめる。結局10枚を越えてしまったので論理展開が途切れないように思い切って縮減し午後一杯かけて7枚半にまで縮める。それでも依頼された文字数の1.5倍だがこれ以上の削減は難しいのでとりあえず富山大の横山天心さんに原稿を送信する。予想以上に苦労したが幾つか発見もあった。表面的な印象を越えた他者理解がいかに難しいかを痛感した。何よりも貴志雅樹を通して安藤忠雄や竹原義二への理解が深まったのが大きな収穫である。先日の津島市のコンペの一次審査結果がHPにアップされたので界工作舎とfacebookにもアップする。二次審査は公開で3月22日（日）に開催される。リッチライフコンペの事務局から今週末に開かれる表彰式の次第が届く。総評を話すために入賞作品に目を通す。コンペHPの作品評も書かねばならないようだ。栃内と「153D邸」の設備図と構造図の打ち合わせ。アクアレイヤーと床下空調を組み合わせた新しい試みの建築的な詳細について検討する。通風用高窓の構造システムについても検討する。これまで屋根構造に対して屋根窓の構造は付加的だったが統合する方法についてスタディし方針を決める。夜までにまとめてコメントを添えてD夫妻に送信する。9時半帰宅。インド旅行に同行したメンバーや案内人やホテルについていろいろ興味深い話を聞く。短いが充実した旅だったようだ。『すべては1979年から始まった』を読みながら夜半過ぎに就寝。


2015年02月18日（水）

7時起床。小雨で寒い一日である。8時半出社。インド旅行中の妻とLINEのやりとり。最終日に念願のタージマハールに辿り着いたようだがiPhoneの電源コードをホテルに忘れたために電池切で途中で連絡が途絶える。今日は一日、貴志雅樹論に集中する。書き始めるとダラダラと続けてしまうので指定の文字数内に納めるのが難しそうだ。夕方までに書いた文章を思い切り縮約したが書きたいことの7割まで書いたところで字数を越えてしまう。読み直すとスピード感はあるが細切感も強いので何とかしたい。あれこれ思案するうちに時間切れ。いやはやこんなに時間がかかるとは思わなかった。明日に仕切り直そう。９時半帰宅。風呂に入った後にベッドの中で『すべては1979年から始まった』を読み続ける。第7章「イマーム」から再びイランに戻ってホメイニーの話題が続き第8章「銃を片手に」ではアフガニスタンの革命へと話が展開する。このパタンで螺旋状に話が進んで行くようだ。

気分直しに『アーツ・アンド・クラフツ運動』（ジリアン・ネイラー：著　川端康雄＋菅靖子：訳　みすず書房 2013）を読み始める。元本の初版出版は1972年である。まえがきを読むとペヴスナーの『モダンデザインの展開---モリスからグロピウスへ』については批判的な論調でこう書かれている。
「本書で、また他のいくつかの本で言外にほのめかされているペヴスナー流の歴史決定論とはちがう方向に議論を導くこともできるかもしれない。というのも、アーツ・アンド・クラフツ世代を〈モダンデザインの先駆者たち〉とする解釈、あるいは少なくともモダニズムを先取りするとみなす解釈は還元主義的だし、また誤解を招きやすいからだ。」
著者の興味は19世紀の産業における工業化・分業化の思想的・経済的な問題にあるようだ。この問題がポスト産業社会におけるクラフツマンシップのあり方とも関係してくるだろう。興味深いテーマである。


2015年02月17日（火）

7時起床。曇り後小雨。8時半出社。10時半に国立近現代建築資料館のスタッフ3人が来所。来週初めに開催される有識者会議の下打ち合わせ。よく言えば会議を円滑に進めるために前もって資料館の現状と会議の議題について説明しておくため作業なのだが深読みすれば資料館の枠を外れた議論にならないようにあらかじめ僕に釘を刺しておく作業だともいえる。要するに資料館の仕事を予算内でできる範囲に抑えそこからはみ出した仕事には手を出さないようにしたいという思惑が垣間見える。外部の有識者会議は余計な課題を持ち出す恐れがあるという訳だ。資料館の運営を円滑に進めたい気持ちは分かるがそれでは何も新しいことはできない。会議の前に安藤さんと会うことになっているので重要な議題を二点に絞り込むように相談してみよう。貴志雅樹論のスケッチ続行。大筋は固まったので後は書き始めるだけである。短い論なので集中すれば短時間でまとめられそうである。『進化する箱』は少しずつ書き続けているが断片的にしか進めない。こちらは一冊の本なのでかなり息の長い持続性が必要であることは分かっているが締め切りがないせいかなかなかスイッチが入らない。

『すべては1979年から始まった』は一気に第6章「旅する教皇ヨハネ・パウロ二世」まで進む。プロローグ「激しい反動」では1979年にイラン、アフガニスタン、ポーランド、イギリス、中国で生じた事件が概観され第1章「不安の高まり」では一連の事件の背景となった世界各地の第二次大戦後の政治経済状況が概観される。第2章以降は各国の状況の詳細な説明である。第2章「辰年」は孫文による辛亥革命から毛沢東による中華人民共和国の建国や1960年代の文化大革命を経て1970年代末に��小平が権力を得るまでの紆余曲折した経緯が説明される。第3章「粗野だが、歓迎すべき無秩序状態」ではスンニー派イスラム教徒を中心とするアフガニスタンの米ソに挟まれた戦後政治の錯綜した状況が概観される。第4章「革命家の帝王」ではイギリスとアメリカにバックアップされたイラン国王の独裁政治による近代化（白色革命＝欧化）と経済成長に対するシーア派イスラム教徒の抵抗の中からホメイニーが浮かび上がる経緯が描かれる。第5章「トーリー党の暴徒」では労働党による戦後のケインズ主義的な福祉国家建設政策の行き詰まりの中から保守党のマーガレット・サッチャーが頭角を表すまでの経緯が描かれる。ここまでの大筋は僕の興味の範囲内にあったが第6章「旅する教皇ヨハネ・パウロ二世」は知らないことだらけで新鮮な驚きを感じる。1978年の秋にカトリックの教皇に選出されたヨハネ・パウロ二世はポーランド人で本名はカロル・ユゼフ・ヴォイティワという。ポーランドに生まれナチスドイツとスターリンソ連の二つの政治を体験しマックス・シェーラー研究によって哲学博士の称号を持つ本物の知識人である。ポーランドが共産主義圏内にありながら国民の70%がカトリック教徒である点にも驚かされる。1990年の社会主義諸国解体の要因の一つにヨハネ・パウロ二世の存在があったことは間違いない。僕は1979年9月にローマを訪れたがバチカン美術館に入館できない理由はコンクラーベ（教皇選挙）のせいだと思ったが実は前年の11月だったのである。家早南友。無知は怖い。


2015年02月16日（月）

7時起床。晴れのち曇り。8時過ぎ出社。直ちに事務所を出て青山の歯科医院へ。8時半から月例の歯の診療。奥歯に虫歯が見つかったので再来週に治療することになった。治療日と次回の再診日の予約をして9時過ぎに終了。歩いて9時半に事務所に戻る。昨日のコンペ審査の経過を日記に書き込む。10時半にムジネットの田鎖郁男さんと川内浩司さんが来所。昨年末に提案した「縮小版MUJIHOUSE」を本格的に売り出すための打ち合わせである。田鎖さんは縮小版が色々な面で高性能になることは分かっているが機能面での検討が十分でないということに思い至ったという。先月末のOZONEでのシンポジウムで僕が話したことの確認から始まり縮小版MUJIHOUSEの機能の特性について意見交換するうちにテリトリーというキーワードが浮かび上がる。小規模な住宅では家族メンバー相互の距離が小さくなるので個人のテリトリーをどう確保するかが大きな課題になる。そのための問題点を整理して再度打ち合わせることを約して正午過ぎ終了。午後は原稿と読書。夜は妻とLINEでのやり取り。毎日のホテル移動でかなりバテ気味のようだ。気休めに猫の写真を撮って送信する。

『atプラス---思想と行動』23の柄谷論文を読み終わる。宗教と社会主義の関係についての議論はまだまだ続きそうだ。『世界史の構造』は交換の4様式と空間の関係について考えながら読み続けた。簡単に整理してみると交換様式A(互酬性)は小さな渦が疎らに分散した空間、交換様式B（支配と再分配）は複数の求心的モニュメントが散在する空間、交換様式C（貨幣）は揺らぎを孕んだ均質空間、交換様式D（互酬の高度な回帰）は小さな渦が高密度に集合した空間といった感じである。ややストレートすぎるイメージかもしれないがまずはこれを出発点として考えていこう。

『すべては1979年から始まった---21世紀を方向付けた反逆者たち』（クリスチャン・カリル：著　北川知子：訳　草思社　2015）を読み始める。21世紀に表面化した世界的潮流は1979年に生じた様々な出来事にその契機を読み取ることができることを分析した歴史書である。この年にはホメイニーによるイラン革命とアメリカ大使館占拠事件、ソビエトのアフガニスタン侵攻、ポーランド出身のヨハネ・パウロ二世のローマ教皇就任と東欧訪問、1973年に続く第2次オイルショック、マーガレット・サッチャーの英国首相就任と新自由主義経済政策への転換と民営化、��小平による改革開放政策の開始といった一連の出来事が生じた。これらは冷戦終結、社会主義国の解体、グローバリゼーションと中国経済の台頭、イスラム諸国の宗教的回帰、テロの世界化といった潮流へと展開した。僕にとっても1979年はすべてが始まった記憶すべき年である。というよりもそれまでの建築家としての活動がすべて仕切り直しになった年といった方が正確だろうか。年始に師匠の池辺陽が逝去したので設計事務所を閉じて妻と一緒に世界旅行に出かけた。１ドルが250円前後の時代である。アメリカ西海岸からメキシコを経てボリビアまで行った。アメリカはポストモダン建築一色だったが同時にベトナム戦争のトラウマが残っていた。メキシコ湾の油田開発でメキシコは潤っていた。アメリカ東海岸を北上してボストンで暑い夏の日にリドリー・スコットの『エイリアン』とアレグザンダーの『タイムレス』に出会った。ヨーロッパに渡りブリュッセルのYMCAホテルで怪しい日本人に付き纏われた。ヨーロッパで何組かのカップルが北朝鮮に誘致されていた頃である。ロンドンは不景気のどん底で街全体が暗かった。12月末に帰国する寸前にパリでイラン革命の勃発を知った。僕にとっても忘れられない1979年の旅を思い出しながら読んでみよう。


2015年02月15日（日）

7時半起床。快晴で寒い。９時前に出社。直ちに事務所を出て山手線で品川駅まで行き９時半過ぎの新幹線に乗車。11時13分に名古屋駅着。改札口前の銀の鈴で審査員3人と津島市役所の山川さんと待ち合わせマイクロバスで津島市役所へ12時半過ぎに到着。会議室で名刺交換の後に昼食の弁当をいただきながら互いの自己紹介。まもなく日比一昭市長が到着。１時前にコンペの審査会場に移動し１時から「防災・減災のための津島型住宅モデルコンペ」の一次審査会の開始。審査委員のメンバーは審査員長を仰せつかった僕以外に日比一昭（市長）清水裕之（名古屋大教授）、朝丘市郎（愛知県建築事務所協会会長）生田京子（名城大学建築学科准教授）川崎浩司（名城大学自然災害リスク軽減研究センター特任教授）の5人。事務局の山川博幹さんが審査手順を説明した後に審査開始。まずは1時間半をかけて各人が推薦作品10点を選ぶ。会場には10人程度の協力メンバーが待機している。審査中は何人かのメディアが審査状況を撮影する。１時間あまりで全員が審査を完了。投票を集計しスライドで画面に映写する。5票が１点だけで3票までで10点となる。１票と２票が大きく分散しているのでまず１票の作品を正面のボードに張り出し１点ずつ投票者が選定理由について説明した後に短い議論を行う。審査員が特に推薦する作品だけを選び最終的に3作品をピックアップする。引き続き２票の作品についても審査員の選定理由の説明と議論によって1点だけを残す。この段階で14点が残る。次に3票の作品を張り出しピックアップした4作品と比較検証しながら議論する。2次審査のためにはできるだけ多様でティピカルな作品を残すためである。その結果３票の作品はすべて残り１票の作品が１点だけが残る。４票と５票の作品についても同じような作業を行った結果ピックアップした作品が落ちて結局3票以上獲得した10作品が残ることになった。2次審査に向けて10作品それぞれに対しプレゼンテーションまでのチューンアップに向けて審査会からの要望を出し審査の作業を終了。入選者の名前を聞くと学生はおらずほとんどが社会人か大学の研究室で愛知県以外からの応募者も何人かいる。3月22日（日）に開催する一般公開の2次審査会について説明を受け4時半に解散。車で来た清水さん以外の審査委員4人と一緒にマイクロバスで名古屋駅へ。小田原と横浜間の火災のため新幹線は定刻よりも約45分遅れて5時半に出発。7時過ぎに品川着。往復の車内で『世界史の構造』を読み終わったので引き続き『atプラス---思想と行動』23に所収の巻頭論文「Dの研究」（柄谷行人：著）の連載第１回「宗教と社会主義」を読み始める。8時前に事務所に戻る。インドの妻とLINEでやり取り。昼間は暑く夜はかなり寒いらしい。早めにベッドの入り読書。夜半就寝。


2015年02月14日（土）

7時起床。快晴で風が強く寒い。8時半出社。久しぶりに石山修武さんから電話が入る。互いの近況報告と来週から始まる大谷美術館での石山修武銅版画展の案内をいただく。28日（土）には坂田明さんのライブもあるようだが残念ながら「150河合邸」のオープハウスとバッティングしている。何とか別の日に訪ねたい。飯塚と「150河合邸」駐車場の詳細図の打ち合わせ。紆余曲折があったがようやく収斂し午後に飯田夫妻と工務店に送信する。大阪の竹原義二さんへ電話し貴志雅樹さんとの出会いについて訊く。関西の三奇人、安藤忠雄、毛綱毅曠。渡辺豊和とは長年の付き合いがあったことや同世代の仲間の中で貴志さんは突出した論客であったことなどを確認する。安藤さんは貴志さんのことを高く評価していたらしい。修士論文の参考文献リストを見ると僕の興味とかなり重なり合っているので議論する機会がなかったことが悔やまれる。竹原さんのおかげでかなり原稿のイメージが固まってきた。『進化する箱』の原稿に少々取り組むが遅々として進まない。この調子では６月の校了は難しいかもしれない。5時から事務所内外の掃除。6時解散。7時に事務所を出てマイセンで夕食。8時前に帰宅し明日のコンペ審査の資料に目を通す。9時半帰宅。LINEでインドの妻とやりとり。初めての団体ツアーでかなり戸惑っているようだ。同行の人たちと積極的に話すように激励する。『世界史の構造』は第4部「現在と未来」に差し掛かる。資本主義の世界史的諸段階の構造に関する多面的な分析が展開されている。


2015年02月13日（金）

6時起床。晴れで風が強い。6時半に妻が家を出るのを見送る。今日から１週間のインド旅行である。ゆっくりと朝食をとり8時過ぎに出社。メディアデザイン研究所から１月末のLIXIL銀座でのトークセッションの記録が届く。一読して自分の発言が平板化されていることに驚く。議論の論旨を明快にするためだとはいえアレグザンダーや藤村さんや井庭さんに対する僕の両義的な評価が完全に換骨奪胎されている。しばらく考え込んでしまったがこのままではどうにもならないので思い切って手を加えることにする。午前中いっぱいをかけてあれこれ試行錯誤し何とかまとめて編集部に返信する。夕方には僕の校正を踏まえた校正が藤村さんから届く。さすがに反応が早いが相変わらず議論はややすれ違っている感じがする。これも今後の宿題としよう。午後は再び貴志雅樹さんの資料を読む。「形式論ノート」と題した2013年の一連のブログが興味深い。貴志さんはウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を参照して持論を展開しているが僕の読みとは大きく異なっている。しかし貴志さんの建築を理解する上で有力な手がかりになりそうである。飯塚と「150河合邸」の駐車場の打ち合わせ。昨日の現場での打ち合わせを元に変更図をまとめるように指示。僕にとっては当たり前のことが新人にとっては新しい知識なのでそれを言語化するのが難しい。しかしそれによって自分の無意識の知識が意識化されることには意味がありそうだ。カメラマンの上田宏さんとの打ち合わせで「150河合邸」の竣工写真の撮影が2月23日（月）に決まったので二人分の高速バスを予約する。天気がいいことを祈ろう。夕食はスタッフと一緒にコンビニ弁当とビール。何となく身体が怠く頭痛もするので9時半に帰宅し体温と血圧を測るとどちらも異常に高いので早々に就寝する。昨日の飯田の寒さにやられたのかもしれない。夜中過ぎにデリーのホテルに着いた妻からLINE報告が届く。日本との時差は3時間半である。


2015年02月12日（木）

7時起床。晴れで少し暖かい。8時半出社。直ちに事務所を出て新宿へ。高速バスターミナルで飯塚と待ち合わせ9時発の飯田行に乗車。スムースに流れて定刻通り１時過ぎに伊賀良着。大蔵建設の鈴木さんの車にピックアップしてもらい阿智村の「150河合邸」の現場へ。今年は例年よりも寒いそうで所々に雪が残っている。建物は外部の工事はほぼ完了し残りは玄関周りの床仕上げと外構工事である。畑地は雪で泥濘んでいるので何とかしなければならない。内部は大工工事や塗装工事が一通り終わり台所や浴室トイレ周りの家具と設備工事が残っている。塗装工事は念入りな仕上げで問題ないが設備工事については飯塚と現場監督に最後の詰めをしっかりするように注文を出す。設備工事は直接生活に関わるので要注意である。河合夫妻と父君を交えて駐車場の配置と高さについて打ち合わせ。既存建物との取り合いを考慮し設計よりも高さを少し下げることにする。間もなく大蔵建設の社長が来たので外構の高さ関係について相談。河合夫妻を建物内部を案内し何点か相談を受ける。薄曇りの空が3時を過ぎる頃には晴れてきたが気温はズンと下がり手足が凍える。アクアレイヤー床暖房の効果が楽しみである。念入りな試運転を依頼する。河合夫妻に河合家特製の干柿をい頂く。去年の歳暮で頂きあまりの美味しさに妻共々驚いたのでその旨を話したら冷凍分を頂いた。明日海外に行く妻にぜひ持たせよう。４時半に現場を発ち5時過ぎに伊賀良に到着。5時19分発の高速バスに乗車。往復のバスの中では『世界史の構造』を読み続ける。あちこちで山本理顕の所論と重なる主張に出会う。とくにロバート・オーウェンやハンナ・アレントの読みに共通性を感じる。しかし初期モダニズムやマルクスの読みは異なっている。山本の主張はやや単純化され過ぎている気がするが間違いなく柄谷を参照している。果たして山本が提唱する地域社会圏主義は柄谷が提唱するアソシエーショニズムと重なり合っているのだろうか。バスはスムースに流れたが定刻よりも少し遅れて9時半過ぎに西新宿に到着。地下街で飯塚と簡単な夕食を摂った後に別れて10時半帰社。栃内が居残って仕事を続けている。そのまま帰宅し河合さんから貰った干柿を肴にウィスキーを煽りながら今日1日を振り返る。


2015年02月11日（水）

8時半起床。今日も晴れで寒い。建国記念日で休日。10時に出社。昨日に引き続き貴志雅樹さんの資料に目を通す。一連の建築作品を詳細に見ると1980年代に始まる初期の建築には僅かだが図像性が紛れ込んでいることや初期のRCフレーム造から後期には鉄骨造や木造に移行していくことしかし基本的なモチーフであるフレームの表現は消えていないことなどを発見し徐々に原稿の構想が固まってくる。トマ・ピケティの東大講義「21世紀の資本」のビデオを見る。１時間余の講義に著書『21世紀の資本』をコンパクトにまとめた内容で経済成長が緩慢な時代には資本の蓄積が自動的に格差の拡大を生み出すという一種の経済法則が詳細なデータを駆使して証明される。そして経済成長が富の再分配をもたらし中間層の所得を引き上げたのは第一次大戦から第二次大戦後までの短期的な例外状況であったことが明らかにされる。したがって1970年代末にミルトン・フリードマンが唱えた新自由主義はその主張とは裏腹に明らかに別の意味での経済への政府の介入だった訳である。引き続き『atプラス---思想と行動』23の特集「日本の「21世紀の資本」論---資本主義と民主主義のたたかい」（水野和夫：著）を読んでみる。ピケティ理論を日本経済に適用した論文である。著者は『21世紀の資本』のもっと重要な点は「20世紀に過去を帳消しにし、白紙状態からの社会的再始動を可能にしたのは、調和のとれた民主的合理性や経済的合理性ではなく、戦争だった」ことの指摘にあることしたがって「所得と資本の歴史の書である以上に、西欧史、近代史の死亡宣告書である」と主張している。なかなか興味深い捉え方である。著者の結論はこうである。「現在の政策は身分固定化を強めている。資本主義も富の集中を通じてそれに加担している。だから資本主義を終わらせなければいけないのである。それができるのは民主主義だけである。民主主義にはできないというのであれば、市場が暴力を振るうことになる」。家早何友。昨日飯田の工務店に送った駐車場の構造の間違いを発見し大急ぎで修正メールを送る。夜は今週末に海外旅行に出かける妻とマイセン通りのイタ飯屋で夕食。9時過ぎ帰宅。風呂に入った後『世界史の構造』をピケティとの関連について考えながら読み続ける。


2015年02月10日（火）

7時起床。快晴でますます寒くなる。8時半出社。10時に建報社の宮園さんが来所。LIXILのインタビュー記事についての相談。LIXILの広報から最初の原稿が地方のビルダーにはやや難しすぎるというクレームがついたので易しく書き直したとのこと。直ちに目を通し最小限の校正を加えてメール返信する。昨日の「箱の家150」に引き続き上大岡の「箱の家152」のオープンハウス案内を界工作舎HPと僕のfacebookにアップする。引き続き『進化する箱』の原稿を続行。なかなか集中して書くことができない。飯塚がまとめた「150河合邸」の駐車場の詳細図を河合夫妻と工務店に送信する。栃内が先週末のDさんとの打ち合わせをまとめた図面をD夫妻に送信する。『世界史の構造』は第3部「近代世界システム」第3章「ネーション」に差し掛かる。カントのトリロジーを踏まえた「感性・悟性・想像力」を「資本・国家・ネーション」に重ね合わせる論理は柄谷の真骨頂である。

貴志雅樹さんの息子である貴志泰正さんから貴志雅樹さんの修士論文と雑誌原稿のコピーが届く。1975年に神戸大学でまとめられた修士論文は建築記号論をテーマにした論文で「建築の意味伝達構造」と題されている。1970年代に勃興したポストモダンの建築潮流を色濃く反映しているがロバート・ヴェンチューリやチャールズ・ジェンクスの一連の著作を参照しながらもマイケル・グレイブスのような歴史主義的な図像性には向かわずピーター・アイゼンマンのような統辞論的な形式主義に向かっている点が注目される。おそらくそのあたりに貴志さんの建築家としてのアイデンティティがあったのではないかと推測する。建築に対する形式主義的なアプローチは安藤忠雄事務所に入所する前から富山大学の建築学科に在任中まで終生変わることがなかったようだ。図像性を排した形式主義的な表現は初期の建築作品から晩年の作品まで一貫している。2013年のブログでは「形式論ノート」と題して一連の短文を書いている。この点についてもう少し突っ込んで考えてみることにしよう。


2015年02月09日（月）

7時起床。曇り後晴れでこの冬一番の寒さである。8時半出社。９時過ぎに事務所を出て外苑前の診療所へ。9時半から3ヶ月毎の定期検診。ここ3ヶ月間の血圧記録を見せ問診だけで終了。3ヶ月分の降圧剤を処方してもらい3ヶ月後の再診日時を予約して10時前に終了。青山の薬局で薬を受け取り10時過ぎに帰社。飯塚と「150河合邸」の駐車場の鉄骨詳細図打ち合わせ。これでようやく収斂しそうである。今週末に一次審査を行う愛知県津島市の「防災・減災のための津島型住宅モデルコンペ」の資料に目を通す。44案の応募があったらしい。ネットニュースで栄久庵憲司さんが昨日亡くなったことを知る。間もなくGK デザインの南和正さんから訃報メールが届く。６時に事務所を出て千代田線で代々木公園にて下車。歩いて佐々木構造計画事務所へ。6時半から佐々木睦朗さんの退職記念行事の打ち合わせ。佐々木構造計画のOBOGも参加。法政大学での先日の打ち合わせ報告に続き浜田英明さんが連続対談と退職講義のプログラム案について説明した後皆で意見交換。その結果を踏まえてパネラーへの依頼とメディアや出版社への周知のためのプログラムを早急に作成すること浜田さんに依頼する。引き続き佐々木構造計画とOBOG（SSC+SAP）の展覧会について意見交換。佐々木事務所での担当作品と自立後の仕事を各人一作ずつリストアップする。時期は法政大学の連続対談が終了する来年１月から3月までの間とし展示会場について問い合わせるための企画案の作成を小西泰孝さんと永井佑希さんに依頼する。8時半から近くの蕎麦屋に移動し会食。つまみと蕎麦焼酎で四方山話。10時解散。10時半に帰社。

今日のYaHooニュースで「政策裏目 増え続ける新築住宅」と題し「空き家そのまま…増え続ける新築住宅　人口減少局面で裏目に」というニュースが配信されている。記事の内容は以下の通りである。

空き家の増加を尻目に日本の住宅数は毎年増え続けている。1998年以降の着工戸数（建て替えも含む）は毎年100万〜120万戸。2013年度は消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあり98万戸が着工された。全住宅取引の８割以上は新築で、中古住宅の比率は10％半ばに留まっている。欧米で７〜９割を中古が占めるのとは対照的だ。なぜ日本は新築比率が高いのか。富士通総研の米山秀隆上席主任研究員は「第二次世界大戦後の住宅政策の影響が大きい」と指摘する。
敗戦後の日本は市街地が焼け野原になったうえ、外地からの復員者も増えて住宅が圧倒的に不足していた。政府は住宅建設を行うため、あいまいな線引きのまま農地も宅地に転用して、無秩序に市街地を広げていった。1950年代には高度成長による建設ラッシュが起きた。都市部を中心に人口が急増し、東京や大阪の近郊にニュータウンが建設された。政府は持ち家制度を奨励し、住宅金融公庫（現・住宅金融支援機構）が低利融資を行い、住宅ローン減税のしくみも作った。
量の確保が最優先で、質の良い建材を用いて手入れをしながら長く使うという戦前の住宅建設の概念は後回しだ。地価は右肩上がりに上昇し、建物に価値はなくても土地の価値は残るため、早期に住宅を取得することが有利とされた。住宅総数は６０年代後半に総世帯数を越えた。やがてバブルが崩壊し、世の中が不動産価格は必ず値上がりするという「土地神話」の夢から覚めても、政府は一貫して住宅建設の後押しを続けた。
住宅はてっとり早い公共投資だ。道路やダムなどのインフラ整備には膨大な時間やお金がかかるが、住宅は建ぺい率や容積率の制限を緩和すればいい。住宅着工は建築関係の仕事を生むし、家電や家具など消費も刺激するから、効率の良い景気対策になる。昨年末の緊急経済対策には、住宅エコポイント制度の2年半ぶりの再開が盛り込まれた。太陽光発電や節水型トイレなど省エネ機能を備えた住宅の新築やリフォームに対して、東日本大震災の被災地で生産された商品などと交換できるポイントを発行する制度で、国会で2014年度の補正予算が成立次第、実施される。90年代以降も住宅建設は景気対策の柱であり続けている。
問題は少子高齢化を背景に日本の人口が減少局面を迎えていることだ。2013年の日本の人口は約1億2000万人。政府は総務省の国勢調査や厚労省の人口動態統計などをもとに2060年には総人口が9000万人を割り込むと推計している。これは戦後直後の日本の人口とほぼ同じ規模だ。核家族化の進展で子どもは空き家を引き継がなくなった。戦後に建てられた住宅は質が低いため、中古住宅としての価値が評価されず、売却や賃貸化が難しい。実際、高度成長期に郊外に建てられたサラリーマンのマイホームは立地条件の不便なところから、次々に空き家になっている。
国交省は2006年に住生活基本法を制定し、それまで策定していた住宅建設５カ年計画の数値目標を廃止、新築住宅の質の確保や中古の利活用を打ち出した。同省の担当者は「耐震性の強化や省エネ機能の向上など住宅政策はすでに量から質へと舵が切られている」と強調する。その割に中古住宅の質を上げていく取り組みが足りないのではないか。

この記事はコンパクトな戦後住宅政策史になっているがもっとも肝心な点は述べられていないように思う。住宅の担保評価制度や住宅ローンの証券化や投資としての住宅などもっと重要な要因があるはずである。こうした状況に僕たちはどう対応すべきか考えるべき時期になっているのだろう。そろそろ「リノベーション箱の家」を考えるべきかもしれない。


2015年02月08日（日）

8時半起床。曇り。ゆっくりと朝食を摂り10時過ぎに出社。日記を書き込んだ後に昼まで『進化する箱』の原稿を少々。当初の予定では今日までに第１章を終えるはずだが当然計画倒れである。すでに目次の要約や「はじめに」をまとめているので書くべきテーマははっきりしている。そういうときに限ってなかなか発火しないのは原稿を書くことによって新しい発見がないような気がするからである。しかし実際に書いてみると第１章の途中まででもさまざまな発見がある。この日記でさえ毎日続けることが未だに義務のような気がしている。とくに読み終わった本の感想を書くときはかなり辛いのだが備忘録としてはかなり有用なので思い切って取り組むようにしている。自分で言うのも妙だが『進化する箱』もそのような気持ちになれば進むだろうにまだそこまではテンパっていないようである。これも一種の自己嫌悪かもれない。家早南友。午後はDVDで映画と『世界史の構造』の読書を少々。夕方に娘一家が来宅。孫の１歳の誕生会で早めの会食。シャンパンをたっぷり飲んでいい気分になる。9時からNHK特集「未来の社会」の最終回を観る。東京湾にKPFが計画している「ニュー東京計画」を見てノケゾル。1960年代のSF的東京計画の想像力が完全に欠落した反復でしかない。


2015年02月07日（土）

7時起床。曇り。8時半出社。富山大学の横山天心さんからの先日亡くなった貴志雅樹さんの作品集を出版するという知らせが届く。短文の寄稿を依頼されたので書きたいと思ったがあまりに情報が少ないので戸惑う。取り急ぎ締切の延長を依頼する。10時にDさんが来所。「153D邸」の実施設計打ち合わせ。内外展開図や天井伏図などについて打ち合わせ。地盤調査のスケジュールが確定した時点で現場説明の日を決めることとし次回の打ち合わせ日時を決めて11時半終了。午後1時半にスタッフと事務所を出て目黒雅叙園近くに建った谷内田章夫設計の「目黒の集合住宅」のオープンハウスに行く。谷内田さんが確立した1.5層住戸を組み込んだ地上13階32戸のスリムな集合住宅である。最上階で偶然に谷内田さんに会ったので設計の方針について説明を受けながら見学する。最近は集合住宅に関する法規の適用がかなり緩和されたようでその条件を最大限に活用した平面計画に感心する。3時半に帰社。5時に事務所内外の掃除。進行中の「箱の家」の現場監理報告とオープンハウス案内状の叩き台をクライアントに送信し6時解散。

日本デザイン振興会グッドデザイン賞事務局の青木史郎さんから『インダストリアルデザイン講義』（青木史郎：著　東京大学出版会　2015）が届く。東京大学工学部の機械工学科において長年開講してきた講義録をまとめた本である。はしがきを読むと「設計とデザイン」というキーワードによって工業製品に対する「設計的なアプローチ」と「デザイン的なアプローチ」を対比させ前者を工学と技術に基づくアプローチ後者を生活や社会に基づくアプローチと定義している。この分類に従えば建築は当然ながら後者になるのだが工学部的な定義なので建築学科の立場からはやや違和感がある。その理由は建築のアート的な側面が欠落している点とインダストリアルデザインはあくまで近代のものだから近代以前を含めた歴史的な視点が欠落しているからである。膨大な参考文献がリストアップされているのだが残念ながら池辺陽の『デザインの鍵』は参照されていない。とはいえかなり広範な視点で書かれた本であることは間違いない。とりわけ本書の半分を占めている「インダストリアルノート---事例・解説・思想」はデザインに関するさまざまなトピックスが見開き2ページ毎にまとめられており密度のある情報が満載なので読んでいて楽しい。


2015年02月06日（金）

7時起床。今日も快晴である。8時半に出社。四宮さんの海外出張が急に決まったので引渡しとオープンハウスを１週間延期することになり3月14日(土)になった。それでも2月中に工事を完了するスケジュールは変えないように工務店に依頼する。昨日の現場監理で見た２階間仕切上の梁間の幕板が一枚の板のように見えるのが気になって仕方がないのであれこれ悩んだ挙句屋根梁の間の幕板を黒く塗ることを思いつく。その部分を撮った写真の幕板を黒く塗って見るとそれなりの効果がありそうなので四宮さんに提案し了承をもらう。小手先の操作で「箱の家」のコンセプトからズレているかもしれないが一室空間性の観点からはやむを得ない対応だろう。『新建築住宅特集』編集部に連絡し「152四宮邸」の見学日時を決定する。3時過ぎに事務所を出て本郷11号館8階の松村研究室へ。４時に開催の「和室研究会」第１回に出席する。放送大学の本間博文さんの呼びかけで始まった会だそうで本間さんに加えて服部岑生、松村秀一、片山和俊、道江伸一、泉幸甫、内田青蔵、稲葉信子、平井ゆかといったメンバーが参加している。初対面の人が多いので最初のうちは沈黙を守る。話が進む中で和室に関して僕が考える二つのテーマ住宅の工業生産化との関係と尺間モデュールについて話す。前者は共有されたが後者に対する反応は今一。メンバーの話題は畳や床の間から内外が連続する日本的な空間の質へと展開する。初回なのでお互いの考えを探り合うような会である。次回は2ヶ月後に内田青蔵さんに近代和室の話をしてもらうことを決めて6時過ぎに終了。久しぶりに正門前の居酒屋宮本で夕食。和食と焼酎で四方山話。次々と話題が展開し収拾がつかないまま9時過ぎ解散。10時前に事務所に踊る。


2015年02月05日（木）

7時起床。小雨から粉雪に変わるが天気予報ほど激しくはない。8時半出社。飯田の河合夫妻から「150河合邸」の駐車場に関するコメントが届く。再度の変更要請である。9時前に事務所を出て明治神宮前駅から副都心線東横線経由で横浜駅にて下車。京急線に乗り換えて上大岡駅に10時過ぎ着。バスターミナルで飯塚と待ち合わせて東三ノ辻で下車。「箱の家152」の現場に10時半着。屋根・外壁工事ともまだ途中である。雨に濡れたままの下地が気になる。ちゃんと養生をしてほしい。室内は内装工事の進行中である。敷地に余裕がないのですべての準備作業を室内で行っている。このため室内が雑然として足の踏み場がない。空気も良くないので咽せてしまう。吹き抜けに足場が組まれているために空間のスケールも狭く感じる。これまでの「箱の家」よりも間仕切りが多いでいで余計にそう感じるのかもしれない。五叉路に面した変形敷地に建っているので吹き抜けから軒庇へと抜ける視線が気になるのだが外装の養生があるためこれも確認できない。何点か細かな指示を行ってから後は飯塚に任せて11時過ぎのバスで上大岡駅に戻り12時半に帰社。午後は『進化する箱』の原稿に取り組むがなかなかスムースに進まない。同じ場所をグルグル回っている感じである。栃内と「153D邸」の詳細図打ち合わせ。建築の詳細図は一通り揃った。残す所は構造システム図である。コメントを添えてD夫妻に送信する。『世界史の構造』は第2部「世界＝帝国」の第4章「普遍宗教」を読み終わり第3部「近代世界システム」の序論「世界＝帝国と世界＝経済」に進む。ようやく半分まで来た。通し読みはせず章を読み終わる毎に空間との関係についてあれこれ考えるので読書も遅々として進まない。今日はイライラが募る1日だった。


2015年02月04日（水）

7時起床。快晴。8時半出社。先日法政大学で佐々木さんの退職記念行事の議事録が届いたので少し手を入れて関係メンバーに送る。来週月曜日に佐々木事務所関係メンバーの打ち合わせを行うので法政大学の浜田さんに法政大学の後期授業「建築フォーラム」の一環として開催することになった連続対談のプログラムの叩き台作成を依頼する。当面の締切がある仕事を一通りやり終えたので今日はペースを下げて『進化する箱』の第１章「箱の家の起源」の原稿に取り組む。第１節は「住まいの原体験」である。自分の住体験について書くのは無意識を明るみに出すような作業である。高校までを過ごした山口県の町屋について書き始めると様々な出来事を思い出して焦点がボケてしまう。とりあえず記憶を辿りながら書き連ねてみた後で縮減することにする。僕はそこで４歳から18歳までの約１４年を過ごしおまけに後にリノベーションまで行ったので住体験の変化も大きい。それほど懐かしさは抱いていないとはいえ今でも断片的に夢に出てくるくらいだからこの町屋での住体験は僕の無意識に染み込んでいるのだろう。９時半帰宅。風呂に入り『世界史の構造』を読みながら夜半就寝。


2015年02月03日（火）

7時起床。快晴で寒い日が続く。今日は鈴木博之さんの一周忌であり僕の初孫の一歳の誕生日でもある。これからも毎年2月3日は特別な日であり続けることだろう。8時半出社。LIXILサッシ部門の堤隆士さんから電話が入り実施設計中の「153D邸」に新製品の高性能サッシを使用する件について相談に乗ってもらう。建物の概要と今後のスケジュールについて説明し前向きの検討を依頼する。昨日に続き放送大学答案の採点に集中。正午までにすべての採点を終え採点結果を放送大学ウェブの成績登録に書き込む。一昨日追加で届いた答案も一緒にダンボール箱に詰め込み放送大学事務局に返送する。飯塚と「150河合邸」の駐車場の打ち合わせ。河合夫妻から届いた第１案に関するコメントにしたがってブレース案とラーメン案の2案をまとめることとする。夕方に再度打ち合わせし接合部の詳細をスケッチする。前田記念財団の博士論文の読み込みを再開。四苦八苦しながら夜までに5編を一気に再読し総合評価と新規性評価の2通りのコメントを書き込む。夜にコメントを再確認してから論文5編をパックに詰め次の担当者である東大生研の加藤信介教授に転送する。建報社の宮園さんが先日のLIXIL取材のゲラ原稿を届けてくれたので大急ぎで校正しメールで返送する。『歩くこどもの感性空間』（千代章一郎：著　鹿島出版会 2015）のお礼を送った広島大の千代章一郎さんから返事が届いたので改めて第5章「おわりに---再びフィールドへ」を読んでみる。一種独特の文体で読み進むうちに『ラインズ』（ティム・インゴルド：著　工藤晋：訳　左右社 2014）を想い出す。インゴルドはこう書いている。「歩くこと、織ること、観察すること、歌うこと、物語ること、描くこと、書くこと。これらに共通しているのは何か？　それは、こうしたすべてが何らかのラインに沿って進行するということである。（中略）あらゆる場所にラインは存在するということに気づくのはわけもないことだろう。歩き、話し、身ぶりでものを伝える生物である人間は、あらゆる場所でラインを生み出す。ラインの制作line-makingは、声や手足の使用――発話や身ぶり、移動の際の――と同じように至るところで見られるばかりでなく、人間の日常的活動のあらゆる場面を包括している。したがって、さまざまなラインはひとつの研究領域をなしているのだ」。千代さんの研究に通じる文章である。しかし残念ながら巻末の膨大な参考文献にはインゴルドもワルター・ベンヤミンもジェームズ・ギブソンもアンディ・クラークも含まれていない。


2015年02月02日（月）

7時起床。快晴で風が強く寒い。8時半に出社。10時過ぎに愛知県から津島市役所の建設部参事山川博幹氏と地域安全課長の鈴木伸一氏が来所する。津島市が主催し１月末に締め切られた「防災・減災のための津島型住宅モデルコンペ」の審査会の打ち合わせのためである。審査は2段階で2月中旬に一次審査を行って入賞候補作品を選びその後3月下旬に候補者のプレゼンテーションによる最終審査会を開催する。市としては初めてのコンペなので細かな手順や会場構成などについて相談に来た。持参された市の案に従って手順や時間配分について意見交換し何点か僕なりの提案を行う。最終審査の形式についても相談を受けたがプレゼンテーションを含めて完全な公開審査にすることを提案する。審査員の一人である名古屋大の清水裕之さんも同意見だそうだ。審査会当日のスケジュールと待ち合わせの場所を決めて昼前に終了。午後は放送大学答案の採点に集中する。45分の作業と15分の休憩という受験勉強のペースを数回反復し夜までに一気に350人の採点を行う。昨日と合わせて500人を終えて残すところ100人なので明日には完了することができるだろう。7時のNHKニュースの直後の特集でトマ・ピケティのインタビュー番組を観る。30分の短いインタビューだが『21世紀の資本』で論じられている格差問題についてコンパクトにまとめている。ピケティの立場から観るとアベノミクスは結果的に大企業と富裕層寄りの経済政策になっている。一方TV朝日の10時のニュース特集ではホリエモン（堀江貴文）が富裕層の立場からピケティの説を「中間層のルサンチマンに過ぎない」とニーチェ的な批評を披瀝していた。いずれにしても最近のイスラム国の問題は経済格差の問題と密接に関係しており単なるヒューマニズム的行動によって解決できる問題でないことは明らかである。


2015年02月01日（日）

8時半起床。快晴で寒い日が続く。TVはどの局も日本人の人質が殺されたというニュースで一色である。10時過ぎに出社。昨日のシンポジウムについてノートを見ながらまとめて日記にアップする。結局のところ議論の中で僕にとって新しい発見がなかったことが虚しさの要因であることに気づく。パネラーの発表が予定時間を大幅に越えたために会場からの意見を聴く機会を取れなかったことが悔やまれる。昼過ぎから放送大学答案の採点を再開。集中して夕方までに150人近くを採点する。論文形式だが番組とテキストを十分に読み込んだ回答が多いので気分良く採点ができる。ペースが掴めたので明日から集中しよう。夜はNHK特集で1964年オリンピックと建築家の特集番組を観る予定だったがイスラム国の特集に急遽変更された。イスラム国の歴史が1991年の湾岸戦争や2001年のイラク侵攻さらには第2次大戦前の植民地時代にまで遡ることを確認する。シリア東部の油田がイスラム国の資金源になっているようだがイスラム国が現地の部族の首長たちを説得する様子を見ると油田を所有しているのは現地の部族のようなので『世界史の構造』における交換様式を想起する。現地の部族が関係しているとすると商品交換的な交換様式Cだけではないのかもしれない。


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